言葉を綴るための体験と、紡いだ言葉が泳ぐ姿を愛でる経験を|2024.立春・魚上氷
倉敷市地域おこし協力隊になって、倉敷とことこで文章を書き始めて、2カ月と半分が過ぎようとしている。
元々地元の人たちから親しまれているウェブメディアに所属させていただけているおかげで「ウチのイベント、取材においでよ」とお声がけしていただけることが多く、みなさんからとても温かく受け入れていただいている。すごくすごくうれしい。
特にわたしは障がいのある当事者であり、元特別支援学校の教員なので
を発信したいと思いながら活動をしていて。
■ 「クリスマス小物づくりワークショップと子育て相談(令和5年12月18日開催)~ 障がいのある子どもの保護者が気軽に集えるあたたかい空間」あとがきのような
・【認定NPO法人ペアレント・サポートすてっぷ】さんとの出会い
倉敷で初めて出会う人たちに自己紹介がてらそんな思いを伝えていたところ、認定NPO法人ペアレント・サポートすてっぷさんを紹介していただいた。
こちらは、障がいのある子の保護者を支援する団体で
などをされている。
聴覚障がいのあるわたしには
のような、これまでの背景があって。
保護者支援の場は、ずっとずっと見てみたいと思っていた景色だった。だから、思いがけず着任早々めぐりあうことができて、本当にラッキーだなぁと思っている。はじめましてのご挨拶をさせていただいたその日にたくさんのスタッフさんたちが集ってくださって、イベントにまで遊びに行かせていただいた。
それが、12月のなかばのこと。
ワークショップを体験させていただいたことで「ひとつのことに没頭」する楽しさや「これならわたしにもできるかも!」という自信がムクムクと湧いてきた。
・あたたかい気持ちをいただいた取材の日
そうそう。記事にもあるように、取材中に親子が一組やってきた。お子さんは障がいのある子の妹ちゃん。この日は、お母さんを独り占めできる大切な時間だったようで、彼女は嬉しそうにお昼ご飯に食べたファーストフードのお話やワークショップで作っていたかごの制作のこだわりをわたしに教えてくれた。
前職を退職して以来、子どもとかかわる機会がぐっと減ってしまったわたしは、身体いっぱいでおしゃべりをする彼女との時間が楽しくて楽しくて。
彼女とのやり取りがひととおり済んだところでふと顔を上げると、彼女のお母さんは目に涙をためながらペアレント・サポートすてっぷのスタッフとお話をしていた。
あとからそのお母さんの対応をされていたスタッフのかたに教えてもらった情報によると、お母さんは上のお子さんの障がい特性やきょうだいとの関係に悩みを抱えていたとのこと。この日は、妹ちゃんとの時間を大切にしつつも悩みも相談できたらいいな……の気持ちで会場を訪れたのだろうと。
わたしは妹ちゃんの口の形を読み取るのに必死だったので、当然お母さんのお話は聴き取れていない。だから、情報の口外禁止どころかそもそも相談内容は全くきこえなかったし、妹ちゃんはお母さんの涙に気づかないくらい夢中になってお話をしてくれて、みんなそれぞれ笑顔で会場を後にできた。
スタッフのかたからは「元保育者の高石さんがお子さんを見てくれていたから安心してお母さんの話をきけたわ」と感謝してもらい、わたしもお子さんとのやり取りを楽しめて、本当に本当にあたたかい時間が流れた。うれしい。
わたしの興味のある景色がそこにあって、必要としてもらうことができて。自分の生い立ちや今までの学びのひとつひとつが、今のわたしを作ってくれているんだなぁと改めて感じることができた日の大切な記事。
・記事を公開して、またあたたかい気持ちをいただけた夜
この記事が公開されて数日後、ふらっと訪問したポップアップショップで、認定NPO法人ペアレント・サポートすてっぷで活動されているかたの一人とお会いした。彼女は、障がいのある子どもを育てつつハンドメイド作家をしているとのこと。
「はじめまして。倉敷市地域おこし協力隊の高石真梨子です。」
と自己紹介をすると
「この前、ウチの記事を書いていましたよね。わたしたちの活動を紹介してくれてとても嬉しかったです。ありがとう。」
とにこやかに教えてくれた。
今までnoteの感想をもらったり記事の感想をもらったりしたことはあったけれども、それはみんなわたしともともと面識がある人たちだったりSNS上でのコメントのため顔の分からないだれかであることが多かった。
もちろん、文章の感想をいただけることはとっても嬉しかったのだけれども、でもやっぱりはじめましての人に直接顔を見て感想をもらえるのって、今までの経験とは比べ物にならないくらい、なんてむず痒くうれしいのだろう。
それが特に、情報を届けたいと思っていた背景のあるかただったので、なおさら嬉しくて。わたしが元特別支援学校の教員であることや障がいのある当事者であることを伝えると、さらに話が盛り上がって楽しいひとときとなった。
それを教えてもらえることが、こんなにもわたしを強くさせてくれるんだなんて。取材をしたときもあたたかい気持ちになったけれども、記事を書いた後もまた温かい気持ちをもらえるということ。
すごくすごくうれしくて、自信をもらえた記事になった。
障がい児として生まれて、当事者の親たちに育ててもらって、大人になっても障がい児の保護者支援をしている人たちに見守っていただける日々。恩返しをしていけるようなアンテナを張っていきたいなの気持ち。
■ 魚上氷(うおこおりをいずる)
立春もいよいよ末侯の魚上氷(うおこおりをいずる)の時期がやってきた。この魚は、飛び跳ねているというよりはご機嫌に泳ぎまわっているようすを指すのだそう。
少しずつ、書いた文章たちが泳ぎだした2月。綴るための取材で心を動かすことはもちろんのこと、紡いだ言葉たちをずっとずっと愛で続けていたいから。わたしの綴った、紡いだ言葉たちがご機嫌に泳いでくれるように、今日も明日も丁寧に大事に言葉を紡いでいきます。