林 茉里子(Mariko Hayashi)

移民、難民、外国人労働者などの人権問題に取り組むNGO代表、コミュニティ・オーナガイジ…

林 茉里子(Mariko Hayashi)

移民、難民、外国人労働者などの人権問題に取り組むNGO代表、コミュニティ・オーナガイジング、アドボカシー、調査、政策提言などの仕事をしています。在ロンドン、仕事は主に英国/日本/東・東南アジア。SEEAC/BEBESEA/Protection Approaches

最近の記事

「不法滞在者」「アムネスティ」という言葉の持つ力、そして在外日本人として:入管法改正案をめぐり考えたこと

在日外国人や、入管問題に関する議論でよく使われる言葉、その言葉について改めて考えてみませんか。「不法滞在者」や「アムネスティ」という言葉を私はなぜ使わないのか、そして海外で暮らす日本人として入管法をめぐる議論や在日外国人の人権問題にどのように向き合ってゆくのか、想い考えたことを書き留めたいと思います。 先月の5月18日、日本政府与党は入管法改正政府案の取り下げ、廃案を決定しました。日本で暮らす移住者や難民、外国にルーツのある若者や子供たち当事者の方々、長年寄り添ってこられた

    • ESSEX39:チャー・ミーさんと私の違いは何だったのか

      10月23日、英国エセックス州でトラックのコンテナから15歳から44歳までのベトナム人39名の遺体が発見された事件から1年になる。 この衝撃的なニュースは世界的に注目を集めた。近年ベトナムからの移住労働者が急増している日本でも大きく報じられ、記憶に残っている人も多いのではと思う。 犠牲者のなかに、亡くなる直前に故郷の家族へ向けて携帯電話からメッセージを送っていた人がいたことも報じられた。彼女の名前はファム・ティ・チャー・ミー(Pham Thi Tra My)ベトナム中部の

      • 7月30日:人身取引反対世界デー

        World Day Against Trafficking in Persons 人身取引(人身売買)とは「現代の奴隷制」と言われる人権侵害です。 「搾取」(売春、強制労働、臓器摘出など)の目的のために、「暴力や脅し、詐欺、金銭の供与」などの手段を使って、人を「採用、移送、隠す、受け渡す」という行為を人身取引と言います。 アメリカの国務省が毎年公表している世界各国の人身取引に関する報告書の2020年版が6月25日に発行され、日本は4段階のうち上から2番目の「ティア2」レベ

        • 非正規移民の訃報が保健大臣に届くまで、そしてこれから

          前回の記事で、新型コロナウイルス感染拡大の中、イギリスの「Hostile Environment Policy(敵対的環境政策)」という移民政策の結果、非正規移民がいかに困難な状況に追い込まれているかについて書きました。その記事を書くきっかけになった非正規移民Elvis(仮名)の訃報は、その後、市民から国会議員を通じてマット・ハンコック保健大臣へ届けられました。この出来事は、イギリス国内の非正規移民やその支援者たちに、前に小さく一歩進む勇気を与えてくれました。このパンデミック

        「不法滞在者」「アムネスティ」という言葉の持つ力、そして在外日本人として:入管法改正案をめぐり考えたこと

          ウイルスに対して私たちは平等ではない:非正規移民に起きていること

          “Yesterday, Elvis died.”  ロンドンのフィリピン人コミュニティーが中心になって結成したCOVID19対応ボランティアとやり取りしているグループチャット上に、新型コロナウイルスに感染したとみられ亡くなった人たちの情報が届く回数が、この数日で急激に増えた。メッセージの着信音が鳴るだびに「今度はどこの誰か」とドキドキするようになった。 このグループチャットに情報が届いている亡くなった人の多くは、「Undocumented(書類を持たない)」と言われる非正

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