セクハラって何だろう、そして「心の機微」について
※この記事は昨年十二月に書き上げたまま公開しなかった文章を、加筆修整のうえ投稿したものです。時制は当時(令和五年)のままになっております。その点ご承知おきのうえお読みください。
「レスリングやってんの」と言われCAさんは
少し前のことになりますが、ネット上で興味を引く記事を見つけました。。
下の横線で区切った内容は、今年(令和五年)二月九日にプレジデントオンラインに公開されたその記事からの引用です(挿入した写真とキャプション、文末の但し書きを除きます)。
相手から不快な言葉をかけられたらどう切り返せばいいのか。元JALのトップCA・桜井妙さんは「相手からのネガティブな言葉をそのまま受け取る必要はない。私の後輩は『体格いいね、レスリングでもやってんの?』と聞かれたら『相撲です』と答えていた。こうしたリフレーミングは効果的といえる」という——。
※本稿は、桜井妙『元JALのトップCAが明かす ベストパフォーマンスを発揮する人の「接客力」』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■「君体格いいね。レスリングでもやってんの?」と聞かれたら
機内で忘れられないエピソードがあります。
CAは皆背が高いです。運動経験者もいますから、筋肉もあります。
ある後輩は大学時代、数々の大会でよい成績を残したアスリートでした。背が高く、しっかりした体格。すると、搭乗してきたお客様がこう言いました。
「君体格いいね。レスリングでもやってんの?」
日本人の男性のお客様には、ごくたまにこのようなセクハラ発言をする方がいました。近くでその会話を聴いている私も嫌な気持ちです。
ところが、後輩はお客様にこう言葉を返しました。
「お客様違います。私は会社の相撲部に所属しています」そう言って、「どすこい!」と自分のお腹を叩いたのです。もちろん会社に相撲部はありませんし、彼女は太っているわけでもありません。誰もがすぐわかる冗談です。その場は明るい笑いに包まれました。その後のフライト中、お客様と後輩CAは、ウィットに富んだ会話のやりとりを楽しんでいたようでした。
同じように、年齢を聞かれることもあります。
(以下略=筆者)
キャリアのあるCAさんが「忘れられない」と言っているだけあって、なかなか面白いエピソードだと思います。「なるほど」と思われる方も多いのではないでしょうか。
私もこの乗客の男性は明らかに失礼だと思います。
女性に対していきなり「体格いいね」とか「身体がたくましいね」なんてことは、言うべきではありません。
しかし、そんな失礼な言葉は発せずに「レスリングでもやってんの」ではなく「もしかすると、レスリングをやっていませんでしたか」と丁寧に問いかけたとしたら、どうでしょうか。
笑顔の素敵なレディーたちをご紹介します
下の写真の女性は山岡雅弥(やまおか・みやび)さん。彼女のプロフィールについてchatGPTが記した内容を転記してみます。
山岡雅弥さんは、日本のグラビアアイドルで、福岡県出身の18歳です。レスリングの経験があり、中学生のときには全国大会でベスト8に入ったことがあります。昨年は「ミスマガジン2021」のミスヤングマガジン賞を受賞しました。趣味は映画鑑賞や絵を描くこと、特技はウェイクボードやダンスです。身長は161cm、スリーサイズは92-60-92cm、カップサイズはⅠです。写真集や電子書籍、映画やテレビ番組など、様々なメディアで活躍しています。山岡雅弥さんの魅力は、笑顔が素敵なことやスタイルが抜群なことだと思います。彼女のファンになりたい方は、以下のリンクをチェックしてみてください。
※筆者補注
文中の「昨年は」は「一昨年は」の誤りでしょう(この文は2023年11月19日に作成されたもの)。
「以下のリンク」は略しました。また、原文には注記のナンバリングと脚注があるのですが、これも略しました。ただし、太字による強調は原文のままです。
この前もnoteに書いたことですが、現在のchatGPTはめちゃくちゃな間違いを言ってくることが珍しくないのですが、上記を除いた記述はデータとしては合っています。しかし太字の箇所のように主観的に褒めたり、最後の文のように積極的に応援したりしているあたりは、人間っぽいと言うべきか、あざといと言うべきか。
こんなにもチャーミングな女性がレスリングのトップクラスの選手だったのです。私はJALのCAさんがレスリング経験者だったり、趣味としてレスリングしたりしていても、ちっとも不思議なことではない、と思います。
ここでもうひとり、笑顔がとっても素敵な女性を紹介します。
女子相撲全国大会優勝者のプロフィール
彼女は野崎舞夏星(のざき・まなほ)さん。静岡県浜松市出身。2014年に台湾の高雄市で開催された世界女子ジュニア相撲選手権大会の軽量級で優勝した女性です。当時彼女は高校生でした。
野崎さんはレスリング選手だったお兄さんの感化で幼いころからレスリングを始め、当時の夢は「プロレスラーになること」でした。
相撲を学んだのは指導者からパワーアップのためにと薦められたからです。以後相撲で目覚ましい戦績を重ねるのですが、並行してレスリングも続け、中学2年のときには中部日本大会で優勝しています。
高校時代は柔道部に所属し、この分野でも有望視されましたが、高雄市で世界一の栄冠を得てからは、相撲に専念したとのことです。
素晴らしい格闘技センスの持ち主ですね。大学時代には全国女子相撲選抜ひめじ大会で優勝しています。
その前提、間違っています。しかし…
野崎さんのような女性が相撲という競技で日本一、世界一を極めていたのです。
実際にJALに相撲部があって、CAさんたちがレオタードの上にまわしを締め、稽古で立ち合いから激しくぶつかりあったり、汗まみれになって力いっぱいがっぷり四つに組んでいたりしたとしても、おかしなことなど何もない(とても美しい)、と私は思います。
桜井妙さんは、CAさんに対し「レスリングしているの」と問うことが、女性性を否定するセクハラ(性的いやがらせ)発言である、という前提に立って上記の文をお書きになっています。
さらにCAさんの「機転」は、CAになるような女性が相撲をとることなど、それ以上にまったくあり得ないことである、ということを自明の前提としています。
論理的に言えば、どちらの前提も完全に間違っています。
ですから、この記事に対して、山岡さんや野崎さんには、怒り、抗議する権利があります。
「それは偏見です! 私たちに対する侮辱です!」と。
あるいは「桜井さんの文こそセクハラ」と主張したりしても。
しかしながら。
私は思います。権利はあるのですが、それは行使しないほうが良い、と。私には止め立てなどできるはずもないのですが、怒らずに(感情的にならずに)穏やかに理解を求めるようふるまっていただきたいな、と願わずにはいられません。
同時に。
その場で「どすこい!」と言って笑いをとってかわしたCAさんの対応は、素晴らしく機転が利いている、とも思います。このCAさんはユーモアのセンスがある優れて聡明な女性に違いありません。
とても良い接客(客あしらい)だったと言って良いでしょう。
社会に共存する矛盾した感覚と人間心理の機微
矛盾している、とお思いでしょう。
認めてしまいます。論理的には確かに矛盾しているのですよ。私の言っていることは。
仕方がないでしょう。
だって、どちらの見方も正しいのですから。現代の日本においては。
たしかに「セクハラ」と呼ばれている行為の大半は、尊厳を毀損する、明らかに断じて許されざる行為です。
しかし、本稿でふれているような事例は女性心理の機微に関わることがらです。
機微に関わる、ということは、すなわち論理的な自明性には還元できない、ということです。
引用した文中で、桜井さんは女性のCAさんに年齢を聞くことをセクハラとしていました。これ(CAさんに限らず不必要に女性の年齢を聞くことがセクハラであるということ)は広く受け容れられている常識と言って良いと思いますし、私も同意見です。
しかしながら。
なぜ女性の年齢を問うことが「性的」禁止事項なのか、女性の場合はいけないのに男の歳を聞くのは構わないというのは男性差別ではないか、という問いを立てたとしたら、論理的な説明は不可能ではないかも知れませんが、ひどく錯雑した(ややこしい)ものにならざるを得ません。
私は、それは「理窟じゃない」のひと言で済ませて良いと思います。機微に関わることがらだからです。
今、世に流布している言説や報道、そして創作物のメッセージは、「理」が勝っていて、汲み取られるべき(あるいは込められるべき)機微が失われている傾きが大いにあるように思うのは、私だけでしょうか。
みなが機微を解さなくなったら、社会は寛容さを大きく損ないます。
それ以前に、ひどくつまらないものになってしまいます。
そうは思われませんか?
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