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ここ数年で劇的に変化したタトゥーの世界

この10年ほどで、ニューヨークのタトゥーシーンは随分進化を遂げた。

ほんの数年前までは、タトゥーショップといえばほとんどがトラディショナルデザインがメインで(ここでいうトラディショナルとは、navyが入れていたような、太い線でカラフルな、いわゆるアメリカントラッドタトゥー)、タトゥー アーティストもほんとんどが白人男性だった。

ショップに入るのには勇気がいったし、タトゥーを入れている人もまだそんなに多くはなかった。2000年~2008年ごろまで現代アーティストのペインティングスタジオで働いていたけど、100人近くいたスタジオメイトの中でも、タトゥーを入れている人は数人程度だった。
つまり、自由な職業であるアーティストたちの世界でも、タトゥーを入れることにはまだ抵抗があったし、タトゥー そのものにコンサバでマッチョなイメージがあった時代だったと言える。だからこそ、リベラルなアーティストたちほどそういうものを避ける風潮さえあった。

でも2024年現在、ここではタトゥー アーティストは白人男性だけの文化ではなくなった。
いろんな人種、性のアーティストがいて、タトゥー スタジオもおしゃれで雰囲気のいいところばかりだ。街を歩けば、若い人でタトゥー が入っていない人を探す方が難しいかもしれない。
もはやタトゥー は、マッチョで厳ついものではなくなった。

これには、一連の、多様性に今まで以上に寛容になろうという新しい風潮が大きく関与している。
特にここニューヨークには、昔から様々な人種や性の人が生きやすさを求めて集まってきているわけだから、この流れはさらに大きい。

性の多様性を支えるLGBTQの運動、さらにBlack Lives Matter。
こういった運動がコンサバなものを変えていく大きな流れになっていき、その波はタトゥーの世界にも広がっていった。

タトゥー といえば、年季の入ったアーティストの元に若いうちから弟子入りし、店の掃除から始めて、数年経ってやっと技術を学ばせてもらう、といったような古い世界だった。
それが、この新しい流れに乗って、今まで違う分野のアートで活動していたアーティストたちが、新しい表現の場としてタトゥーの世界に入ってくるようになった。
私もその一人だ。
つまり、今までどこかアウトローでマッチョだったタトゥー というものが、もっと一般にアートの一つとして受け入れられ、身近なもの、ファッショナブルなものに変化したというわけだ。

タトゥーのスタイルも多岐に渡るようになった。
トラッドはもちろん根強いが、水彩画風、アニメ、ファインライン、抽象、イラスト、いろんなスタイルが産まれて行った。

これが簡単なここ数年のタトゥーの世界の変化の流れ。

この10年でここまで流れが変わり、タトゥー産業は一気にバブルに突入した。そして今年は、それが急に落ち着いて来たように思う。たくさん増えたタトゥーアーティスト達も依頼がめっきり減り、辞める人も増えていった。
これからはどんなタトゥーが生き残っていくのだろうか。


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