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旅する料理人(旅好きではない私の旅行記)

はて、私は旅する料理人なんだろうか

早速自分でつけたnoteのタイトルに疑問符をつける。ケータリングやお弁当の仕事も自分の店で提供しておらず都内近郊に出向いているといえば「旅」か。人生振り返ると、旅は比較的している方だと思う。

しかし私は自分のことを「旅好き」とは思っていない。

旅よりも、映画館やカフェなど近場のレジャーを愛するタイプ。居心地の良いパーソナルな空間さえあれば、休日はずっと家の中でも良い。

旅に病んで夢は枯野を駆けめぐる

旅ともに生きた歌人松尾芭蕉が、最期の旅の途中で病に倒れたときに詠んだとさせる一句。本当に旅を愛する人は、松尾芭蕉のこの句に共感できると思うのだ。

「旅に病んで」—— 旅の途中で病気になり動けなくなったが
「夢は枯野をかけめぐる」—— 夢の中では、枯れた野を駆け巡るように自由に旅を続けている

いや!自宅の布団で寝たい!!寝たいんや!!

と私は思う。

そんな私が旅と呼ばれる好意をする理由。それはそこに行かないとわからないことや、ムードや、味や、人がいるから。一緒に行く人が行きたい場所をみたいから。移動は嫌いだし、乗り物も酔うし、準備も面倒だけど、私はまた旅に出た。

北京→ベルリン→ダブリン

大学生の時に父が中国語を勉強するために北京に滞在していた。そこに姉と二人で行った。そして10年ほど前に、友人と二人でベルリンへ旅行した。今回、家族旅行でダブリンへ。あぁ、これは、アジアの純真。リベリア未満。

アイルランドのダブリンへ旅行にいくと決めたのは突然だった。2025年、年が明けてから私はアホウドリの仕事も忙しかったし、イギリスでも個人宅にケータリングをしてみたり、お弁当を納品してみたりバタバタしていた。旅行好きの夫から「ハーフターム(イギリスの半期末)の休みどこへ行こう?」と聞かれて何も答えられず「ウェールズで海苔を食べてみたい」と答えた。

結果、夫の段取りでウェールズの港からフェリーでアイルランドに行くことに。

アイルランドは美味しい

ところでアイルランドは食事が美味しい。旅好きの友人もこぞって「美味しい」という。実際旅行中の食事は、些細な街中のサンドイッチスタンドからホテルの朝食。パブのシチューやカフェのスープ、全て美味しかった。そこからなんだか切ないアイルランドを知る。

アイルランドの食料自給率は130−150%との頃(chat GTP調べ)特に牛肉・羊肉・乳製品は輸出産業としても力を入れている。
カフェで食べたスープ。ポタージュスープの奥に発酵の香り。ome farmで食べた野菜のカレーを思い出した。力のある野菜や素材だけが持つ主張がある。
アイリッシュビーフのタルタル

キルメイナム刑務所

アイルランドで何をするか特に決めてなかったが、刑務所ツアーが人気だという。見ると1ヶ月先まで予約が埋まっているものの、当日9:15にキャンセルが出るので、キャンセル枠で。

ここでは、アイルランドの歴史を犯罪史を通じて学べる。英国による支配。独立運動の中投獄された人の話を聞くと「アイルランドってイギリスだっけ?」なんて、いくら不勉強でも言ってはいけないことだなと思う。

また、アイルランドの飢饉の際には、刑務所の中の方が食べれるということで軽犯罪を犯して収容される人が多かったという。3歳の子供が一人で収容された記録もあるという。なんたるカオス。約5年間に人口の25%以上が死亡・国外流出したつらい歴史が、国を農業へと舵を切らせたのかと想像する。

ところで戦時中に貧しい思いをした日本は減反政策に舵を切っているけれど大丈夫?

政治犯として収容された女性イラストレーターが壁に描いたマリア像
ヴィクトリア調の刑務所では、ここでの正義のように繊細に食事が分けられた。
囚人たちの使っていたスプーン

どこにいても変わらないこともある


旅に出たからこそ見えることがある。というよりも、旅に出るなど強制的に自分の視野を広くしたり高くすることで見えることがある。というのが旅の効果効能だなと思う。一方で、ずっとアホウドリのことを考えている。スタッフに悲しいことがあると、綺麗な景色を見ながらその悲しさを想像する。ラインのやり取りから、この真面目な人たちの素晴らしさを感じる。美味しいものを食べたら、これはアホウドリで作りたいと思うし。食料自給率に感動して、日本の国産材料だけで作るスープ屋さんなんてどうだろうかと妄想する。一緒に働きたいと行ってくれる従業員が帰って来れるように、私もこのイギリス暮らしの旅を終える頃に成長していなければならない。広げた視野を、私の小さなビジネスにどう活かせるのだろうか。

インスタグラムには「かさまし」「節約」が溢れ始めた。日本の食事もどんどん変わっていくのだろう。着物姿で和食を紹介するアカウントでは、作り方への質問で頓珍漢な回答をしていた。無形文化財和食の根本を支えた家庭料理は、静かに形を変えつつある。全て変わっていくことは仕方のないこと。仕方がないけれど。だけれども。

息子は、窓から見える電車に日本の電車を想像していた。調べると東急車輛の車両だった。その夜息子は、保育園の友達のことを思い出して「みんなに会いたい、寂しい」と言った。

旅は小さな子供の胸にも寂しさや望郷を与えるらしい。懐かしい場所や、人に会いたくなるのが、旅なのかもしれないね。

東急車輛は、珍しい。
アイルランドの男性、アイルランドの女性、女性にも訴えかけている文章にグッとくる。日本はGHQが占領するまで女性に選挙権がなかった。世界は、少しずつマシにはなっている。

そんなわけでギネスビールの工場でダブリンの街並みを眺めながら、ぐいっとビールを飲んだ。日本ではドライになってしまったが、しっかり焙煎の苦味があり美味しい。

ダブリンは、美味しかった。

しかし、ついぞウェールズで海苔は食べれなかった。はぁ、また旅する理由ができてしまった。次回、ウェールズの海苔。を書けますように。

実はビールの中で一番好きなギネス。焙煎が昔から上手だから、ダブリンのコーヒーは美味しいのかもしれない。
ダブリン最古のパブで、たらと鮭の入ったチャウダーも美味しかった。


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