「魔法の文学館」は本がもつ不思議な力を教えてくれる児童文学館
2023年11月3日(金・祝)、「魔法の文学館」(江戸川区角野栄子児童文学館)がオープンしました。角野栄子さん(以下、栄子さん)は、多くの人に愛される「魔女の宅急便」を代表作品にもつ児童文学作家です。
わたしは、大のジブリ映画「魔女の宅急便」好き。大学時代にスウェーデン留学をした際には、「13歳のキキがひとりで修業に行けたのだから、20歳のわたしだってできるはず!」と言い聞かせ、旅立ったものです。泣きたくなるような挫折と失敗をしても最後までやり遂げられたのはわたしの中にキキという人格がいたから。
それほど大きな影響を与えた作品を生み出した栄子さんの世界観にふれるべく、子どもたちを連れて魔法の文学館へ行ってきました。
本記事では、絵本に興味を持ち始めた2歳の男の子と読み聞かせを始めたばかりの10ヶ月の女の子を連れて魔法の文学館で過ごしたレビューをまとめています。
魔法の文学館はなぎさ公園の小高い丘の上に
魔法の文学館は、JR京葉線葛西臨海公園駅から都営バス[葛西21]に乗車すること約10分、「魔法の文学館入口」で下車して向かうことができます。東京メトロ東西線葛西駅からもバスが出ているようなので、そちらからでもアクセス可能。
魔法の文学館入口で降り、案内看板に従って歩くこと5分。なぎさ公園の敷地内に入って丘の上に見えてくるのが魔法の文学館です。この純白な色の建物は、建築家・隈研吾さんによって設計されたもの。
入館すると洗練された外観からは想像もできないいちご色をした内装が広がっています。
事前に入館受付をしておこう
入館は基本的に日時指定の事前予約制になっています。これまでは抽選式と先着順で入館予約を受け付けていたようですが、2024年9月2日(月)以降、先着順のみに変更されたようです。ちなみに予約は2カ月先まで可能とのこと。
この日は平日。出発前に予約状況を確認すると空きがあったので、予約なしでも入館できるよう。しかし、着いたときに満員になっていたという最悪の事態を防ぎたかったので事前予約しておきました。遠くから来館される方や「絶対行きたい」という場合にはおすすめ。
目の前に広がるのはいちご色の世界
予約画面を提示し、受付を済ませたら一面には『魔女の宅急便』の舞台「コリコの町」をイメージしたいちご色の世界が広がっています。館長である栄子さんや絵本に登場するキャラクターたちのプロジェクションマッピングが壁一面に映し出されお出迎え。
中央には2階へと続く階段、奥へ進むとコリコの町の本棚がずらり。いたるところに読書スペースや椅子があり、気になる本の世界を見つけたらすぐに読めるような工夫がされています。
カフェ・キキでは本に登場する特別なメニューも
到着したのが正午前だったので、1階を回った後はエレベーターを使って3階へ。ここには旧江戸川を一望できる見晴らしのよいカフェ・キキがあります。
卵不使用のキキライスがここの定番メニュー。小さな子どもから大人までおしゃれに食事を味わえる空間になっており、そのほかにもパン、パフェ、プリンなどが取り揃えられています。
栄子さんのことがもっと好きになるアトリエ
食事が済んだ後はエレベーターで2階へ移動。ここのフロアには「おうち型」の本棚に囲まれたライブラリー、アトリエ、ギャラリーなどがあります。
アトリエには仕事場を模したコーナーがあり、栄子さんが日頃使っている文房具や愛読書などが並べられています。
3歳から23歳まで江戸川区の北小岩に住んでいたという栄子さん。幼少期を過ごした思い出の地がここなのだそうです。
おばけのアッチとちょっと変わった料理を考えよう
ギャラリーでは企画展「びっくりレストラン」を開催中。栄子さんの作品に登場する食べものをテーマにした原画や立体などが展示されていました。
現在、「おばけのアッチと"ちょっと変わった料理"を考えよう」というコラボイベントが開催されており、自分で描いた絵が映像の中に入り込んで、動き出すという企画がされていました。
絵本のキャラクターとお話ができる黒猫シアター
1階に下りて、大階段の横の秘密の隠れ家のような廊下を進むとそこには4面映像の「黒猫シアター」が。これはキャラクターとの会話が楽しめる、インタラクティブな映像プログラムによる参加型のシアター。
わたしたちが参加した回は「リンゴちゃん」が登場しました。サッカーボールを投げ合いっこしたり、お話したりと子どもたちは大喜び。
「黒猫シアター」は1日数回上映され、回によって登場人物が異なるようなので、何回でも楽しめそう!異次元な空間に大人も笑って驚いて楽しんでいました。
思い出は自分自身であり、誰でも持つことができる魔法
栄子さんのアトリエにわたしの心を動かしたメッセージがありました。それがこちら。
思い出って過去のものだと捉えがちではないでしょうか。栄子さんはこのように述べています。
わたしが10年前にキキの勇姿に背中を押されてスウェーデンで過ごしたあの日々は「過去のこと」ではなく、「これからの人生を生きる力」であり「人生を豊かにしてくれるもの」だったんだ。
あの日々があったから「いまのわたし」がいる。わたしにも、あなたにも不思議な力を備えているんだと気づかされた空間でした。
今回、魔法の文学館を訪れて、子どもたちにはもっと児童文学に親しみを持ってほしい。それらから豊かな想像力を養ってほしい。と感じるようになりました。
誰もが持つ不思議な力に気づかせてくれた魔法の文学館。きっとあなたも心から楽しめるはず。
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