【第2回】エントリーシート:ある対談番組にて(200文字)
さまざまなジャンルの文章に、自分なりの赤ペンを入れていく企画です。マガジンの詳細については【はじめに】をお読みください。
第2回目はエントリーシートです。
今回は某テレビ局(といっても、お題からテレビ朝日系列だと分かってしまいますが苦笑)のインターンのエントリーシートのなかに実際にあった質問です。
お題:あなたは『徹子の部屋』にゲストとして出演しています。黒柳徹子さんから「何か面白い話して」と言われました。あなたの「腹を抱えて笑える面白いエピソード」を教えてください(200字)
テレビ局への入社を希望し、まさに就職活動まっただなかの大学生かよちゃん(仮名)から送られてきた文章は、こちら。
私は京都府出身なのですが、田舎の市で生まれ育ったので方言が少し特殊みたいです。例えば誰かの話をするとき「〇〇さんさ~」と言うところを、私は「〇〇さんや~」と「や」を使うんです。「徹子さんや~いつもおしゃれですよね」という感じです。私は東京に来て友人に「その『や』って何?」と指摘されて初めて気づいたんですよね。同じく地元を出た友人たちも同じように指摘されてるみたいで。方言って面白いですよね。
この文章に、赤ペンを入れてみましょう。
……と思ったのですが、エントリーシートで最も大事なのは、質問の意図を理解し、それに沿った回答を書くこと。かよちゃんの文章は、「腹を抱えて笑える面白いエピソード」ではなく、「興味深いエピソード」だと感じました。
そこで、もう一回考えてみよう!と返しました。
確かに、難しいお題です。私はかよちゃんに、こんなアドバイスをしました。
・方言といった一般的なテーマよりは、日常の一コマのようなエピソードのほうが「かよちゃんらしさ」が出るのではないか
・「面白い」という感覚は人によって違うので、困ったらもう「笑った」と言ってしまうのはどうか
このあと、うんうんと頭をひねり、何パターンか考えていたかよちゃんですが、ついに、文章の神様が降臨しました!
大学1年のとき、大学の宿舎に住んでたんです。私は教室に着いてからゆっくりしたかったのでいつも早めに家を出てたんです。ある日向かいの部屋に住む友人が慌てて授業に来たんです。そして一言、「かよさんの部屋を出る音で起きたわ」。あのときは思わず笑いました。私の早めの行動がまさか友達を助けることになっていたんですね。1年で宿舎を出る予定だったので、私がいなくなったら彼女は起きれるのか不安になりました。
それでは、今度こそ、この文章に赤ペンを入れてみましょう。
ここから先は
2,239字
/
1画像
¥ 100
ノンフィクションを書きたいです!取材費に使わせていただき、必ず書籍化します。