【第7回】note募集文章:ファーストデートの思い出(600字)
さまざまなジャンルの文章に、自分なりの赤ペンを入れていく企画です。マガジンの詳細については【はじめに】をお読みください。
第7回目のテーマは、初の試みになりますが、noteの募集に挑戦してみることにしました。
お題:ファーストデートの思い出(600字)
実際の募集要項に文字数制限はありませんが、ここでは敢えて600文字に定めてみました。
前回の平成の思い出に比べると書きやすいはずだ!と思って挑んだテーマでしたが、まず、ファーストデートが思い出せない(笑)。
さらに、ファーストデートの基準ってなんだ? と悩む。人生初なのか、特定の人との初デートのことなのか。そもそもデートって何だろう。食事だけでもいいのか。あまりに生々しい内容は書けないし……といろんなカベがありましたが、さまざまな解釈があってよし! と自由に書くことにしました。
書いてくれたのは、第5回の「この春、卒業したいこと」で紹介した、元書籍編集のKさんです。
美しい初デート物語が届きました。
煙草、アルコール、ディストーションギターの歪(ひず)んだ音色。
思い出す灼熱の小豆島。視界いっぱいの青い空と穏やかな瀬戸内の波の音、鼻腔をくすぐる潮の香り。その全てが両手を広げて待っていてくれるような気がした、十八の夏。
八つもの音楽スタジオを併設する安宿はそう多くない。小豆島の古びたペンションは、当時所属していた軽音サークルの定宿だった。
その夏、私がボーカルを務めたバンドで彼はギターを弾いていた。彼のギターで、私が歌う。まるで自分が凄腕の歌姫にでもなれたような多幸感。目配せすると彼は笑った。滑らかにフレットを動く左手。スラリと手足の長い、いかにもギタリストらしい線の細い華奢な体躯。フェンダージャパンの白いストラトギターが眩しくて、私は目を細めた。睡眠不足も二日酔いも平気だった。私はその時、すべてを手にした気でいたのだ。
「あの時、お前のこと好きだったのに」
そんなシンプルな過去形の言葉で終わった恋。あの夏の日、知らず恋は実っていて、確かめずにいたらいつの間にか夏が終わっていた。スタジオで、浜辺で、満点の星空の下で、伝えてさえいれば叶ったはずの恋。今更惜しんでも仕方ない、小豆島に消えた夏の幻。
この文章に赤ペンを入れてみましょう。
ここから先は
¥ 100
ノンフィクションを書きたいです!取材費に使わせていただき、必ず書籍化します。