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境界線を越えてゆけ〜空き地で見た映画と、タイムラインと美しさの話。
落ちていた。ひどく頭痛がする。
沈んだままの気持ちは、昼過ぎのベッドの中でずっしりと重みを持ったまま、一向に浮かんでくる気配がない。
こんな日ばかりが続いている。
夏の太陽が忘れ物をとりに来たかと思えば、
突然の木枯らしと、置いてけぼりにされたような気持ちにさせる秋の匂い。
だがどうやら、夏の太陽はまだ忘れ物を残しているらしい。
懲りないやつだ。
万人にわかる正しい言語で、テレビの中の天気予報士がそんな内容を告げている。
こんな気候じゃ調子も狂う、と文句も言いたくなるが
心だっていつも、理由もないのに浮かんだり沈んだり、
この気候となんら変わりはない。
何気なくタイムラインを開く。
この世界はくだらないものばかりだけど
怒涛の勢いで流れていく波の中に、本物の言葉や、作品や、心が埋もれている。
それは、溢れかえる文字の中でキラリと光り、偶然出会うことができる
ここは宝探しのような世界だ。
毛皮のマリーズの「Mary Lou」のビデオが流れてくる
ベッドの上でうずくまる長髪の男。突き刺さる、まっすぐで妖しい視線。
その瞬間、ベッドの上の羽毛と一緒に
私の心もふわりと天井まで舞い上がった。
一向に浮かんでこない心も、本物の音楽にかかれば一瞬で浮き上がる。
音楽は魔法だし、真実だし、現実だ。
*
新しい小料理屋ができるという。
丁寧な仕事、洗練された空間と温かい料理。
学生時代の後輩の、生き方が見える。
自分のやりたいことをまっすぐに進めている人は
言葉にできない美しさがある。
タイムラインを見ながら、生きるということも悪くないなと思う。
*
「本当に何がしたいかって考えたときに、私は自分でお店をやりたいと思ったの」
7年前、正直な心を持つ古くからの親友は
そう言って都会の喧騒の中に飛び込んだ
めくるめく世界をかけ回り、私に見たことのない色の風を吹かせてくれた後
静かにぽきっと折れた。
しなやかで繊細で、まっすぐなその心の枝を
彼女は今ゆっくりと修復している。
彼女はきっと私と同じ血の色をしている。
彼女の真っ直ぐな言葉は、私の心の火に優しく薪をくべる。
さあ、次は何をしようか。
まっすぐ生きることは、難しくて、残酷で、悲しくて、
どうしようもないほどに美しい。
*
父は物書きになりたかった。
父は詩人になりたかった。
彼はビートルズを愛していた。
彼はただ、正直に生きたかった。
彼はただ、素直に生きただけだった。
これは私の推測でしかない。真実は、誰も知らない。
*
夕方、タイムラインでふと目にとまったツイートを見て
部屋着のような格好のまま、肌寒い街に繰り出した。
下北沢の空き地で、スクリーンに映された映画をみる
ライブハウスがひしめいている
劇場がすぐそこに佇んでいる
そこで起きたことが、生身の物語が、今目の前に映っている
映画と舞台
ライブと演技
歌詞とシナリオ
現実とフィクション
画面の向こう側ととこちら側
境界がゆらぐ
物語とリアルが交差する
境目が曖昧になっていく
・
・
・
深夜に思いの丈をしたためて送る
最近やっと分かってきた
自分の本当の心。作りたい世界。
その人は全ての境界線を軽々と飛び越えていた
その手で世界を作っていた
魔法使いのようだった
少しでも触れたいと思った
隣に座るミュージシャンは、下北沢を自分の世界にしていた
長い長い、一瞬のような物語
懐かしい響き
それでも続いていく日々
私も財布の中にはタクシー代を持つようになった
その日、そこにいる誰もが美しかった
私もそろそろ
この中途半端に続けてきた偽りの生活を
ぶっ壊してやろうか、なんて思っている。
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![マリエ映茉(ライリエル Lailiel)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/28586882/profile_31e72ca5b08ce17434a5227239cd3b63.jpg?width=600&crop=1:1,smart)