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「中国茶コラム」⑪台湾茶について その2

前回、「台湾茶について その1」では、文山包種茶、凍頂烏龍茶、阿里山烏龍茶をご紹介しました。


今回は、さらに3種類、台湾烏龍茶をご紹介致します。

「金萱茶」(きんせんちゃ)


よくお客様に、「ミルキーな甘い香りがするお茶はありませんか?」
と聞かれます。
台湾茶だと、この金萱茶がそれにあたります。

「金萱」とは茶葉の品種の名前であり、「乳香(にゅうこう)」と呼ばれる甘いココナッツやバニラのような香りを持っているのが特徴です。
1980年代に品種改良によって誕生しました。

高温で淹れると、良い香りがうまく抽出できます。

最近、この甘い香りを人工的に着香した金萱茶を良く見かけます。
もちろん、着香された方が良い香りが顕著に表れる為、好きな方も多いはず。
カクテルにする場合、こちらの茶葉を使用した方が、お茶の味わいをドリンクに移すことができます。

自然な香りか、着香された香りかを茶葉で判断するのは簡単です。
お湯を入れる前の、何もしない茶葉の香りを聞いてみてください。
着香されていれば、甘い香りがします。
自然なお茶ならば、少しグリーンな香りがするだけで、甘い香りは一才ありません。

もちろん自然な香りの金萱茶は、茶葉のグリーンな味わいと柔らかい乳香のバランスが良く、何煎でも楽しむことができます。

(ちなみに、中国 福建省で生産される「黄金桂(おうごんけい)」も甘い香りが特徴の烏龍茶です。金萱茶が好きな方は、黄金桂もお気に召していただけるはず!)

「鉄観音」(てっかんのん)

茶葉の品種の名前でもある「鉄観音」
中国の福建省でも生産されており、味わいも中国の鉄観音は爽やかなものが多い為、少し混乱を招いている烏龍茶かと思います。

その始まりは、1890年代後半に福建省から鉄観音種の茶樹が台湾北部の「木柵」(もくさく)に持ち込まれたことにあるようです。
なので、台湾では「木柵鉄観音」として有名です。

台湾に「鉄観音」が伝わった当初、その製法ははしっかりと発酵(酸化)させ、黒っぽくなるまで焙煎した香ばしい味わいの烏龍茶でした。

現在でも、台湾では高発酵・重焙煎で製茶されています。
水色はオレンジ色で、味わいもザ・烏龍茶。
少しコーヒーのようなニュアンスもあります。

しかし「清香」とも呼ばれる爽やかでグリーンな味わいが好まれるようになり、
中国の鉄観音の製法はそちらにシフトしました。
なので、中国福建省の安渓(あんけい)で作られる「安渓鉄観音」には、緑茶のような爽やかなものが多いのです。

もちろん「安渓鉄観音」の中には、伝統製法である高発酵・重焙煎で作られるお茶も存在します。
味わいが全く異なるので、爽やかな緑色の「清香」タイプか、しっかり茶色の「濃香」タイプか、購入される際にはお気を付けください。

台湾の鉄観音はほぼ100%しっかりどっしりタイプなので、お茶屋さんで「どっちだろ?」とはなりませんのでご安心ください。

ちなみに、中国の「鉄観音」は必ず品種「鉄観音」から作らねばなりません。
台湾は、その製法で作られたものを「鉄観音」と呼んでいるため、品種は関係ありません。
もし品種「鉄観音」のお茶を購入したい場合は「正欉鐵観音」(せいそうてっかんのん)と書かれたものをお選びください。



「東方美人」(とうほうびじん)

発酵度(酸化度)が最も高い烏龍茶で、紅茶のような味わいを楽しむことができます。
水色(すいしょく)も、黄金かかったオレンジ色です。

別名、「香檳烏龍茶」=シャンパン・ウーロン。
お茶界のシャンパーニュとも評され、英語では「オリエンタル・ビューティー」と呼ばれています。

新芽を使用する為、茶葉に白い産毛「白毫(はくごう)」が混じっており、この白毫が多いほどお茶の味わいは繊細なものとなります。

「マスカットフレーバー」と呼ばれる、華やかな香りが特徴です。
ちなみに夏摘みのダージリンティーにも生まれるこの香りですが、
どうしてこのような香りが出るのか、皆さんはご存知でしょうか?
もちろん、着香をしているわけではなく、茶葉の自然な香りです。

じつは、「ウンカ」と呼ばれる小さな虫が一役買っているのです。
「チャノミドリヒメヨコバイ」とも呼ばれ、
日本の農家さんにとっては害虫でしかありません。

発芽の時期に、この小さな虫が茶葉に付きます。
噛まれた茶葉は、この虫の天敵である蜘蛛を呼ぶフェロモン(ウンカが嫌う香り、また植物がストレスを受けると作り出す物質とも言われています)を出し、何とかウンカを追い払おうとします。
(「ファイトアレキシン」とよばれる、テルペン香(甘い香り)をもつ「抗体」のような物質です)
このフェロモン(ポリフェノール)が製茶した際に華やかな香りに変化するとの事。


もちろん、ウンカを付ける為には農薬などは使用できません。
なので、自然と全ての東方美人茶は「オーガニック茶」となるのです。

ウンカが噛んだ茶葉を使用するお茶は東方美人だけではなりません。
マスカットフレーバーのある台湾茶は、「蜜香〇〇」という名前が付けられます。

ちなみに東方美人茶は、ワインのように熟成させても楽しむ事もできます。
華やかな香りが茶葉になじみ、飲み疲れしない、熟成感がある上品なお茶となります。

お食事と合わせるには水出しにしてガスを注入したり、
濃い目に入れて炭酸水で割ったりして、「ノンアルコール・シャンパーニュ」としても楽しめるかもしれませんね。

タピオカ・ミルクティーの材料になる事も多いです。



最近では茶葉の品種改良も行われ、美味しい紅茶も開発されています。

皆様のお気に入りの台湾茶を、ぜひ生活の一部として取り入れてみてください。


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