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「病院で産まない」って言ってみたら、起きたこと

昨日、妊娠6か月まで通っていた産婦人科病院で、「助産院で産みたい」と切り出した。

高齢出産にあたる38歳で初産。<助産院>という選択肢には、年齢もあってこれまで周囲からいろんな反応を感じてきた。かかりつけの病院に希望を伝えるのは、かなり緊張する瞬間でもあった。

結論からいうと、医師の反発は予想以上だった。

「死ぬかもよ」、一方的に突き付けられた<リスク>

「この年齢でしょ。はっきり言って、かなりのリスクがありますよっ」

いつにない強い口調。(助産院への)紹介状を書きながら、日本での妊婦死亡率の低さ、それに対してアフリカのいくつかの国では死亡率が50倍も高いこと、帝王切開などの緊急対応が遅れかねないこと、などをまくしたてた。

そんな医師の腕に押されて、その日撮った赤ちゃんのエコー写真が、説明されることもなく、床にヒラヒラ落ちていった。

心配してくれていたのだと思う。

まるで学校の先生に、叱られているみたいだなぁ。医師の言葉を聞きながら、ぼんやり思った。

周りに助産師さんたちが集まり、時々医師の強い口調を和らげるようにフォローしてくれたけれど、なんだか「助産院で産むなんて、あんた死ぬかもよ」と脅されたような感じで、頭の中が思考停止になっていた。必死に医師の言葉を理解しようとして、リスク回避できないか質問や説明のお願いもしてみたけど、から回っている感じだった。

感じた患者という立場の弱さ

医療側に対して、患者という立場はずいぶん弱いんだなぁと感じた。自分や赤ちゃんの命という取返しの付かない危険を振りかざされたら、こちらは何も言えなくなってしまう。

私は当然年齢のことも自分でわかっているので、病院側には「相談したい」というスタンスでお願いしたのだけど、目の前で起こったのは、紹介状を書かれながら、「死ぬかもよ」というリスクを突き付けられる、という状況だった。

妊娠当初は里帰り出産を考えていて、同じ医師に、実家近くの総合病院に紹介状を書いてもらった。その時はスムーズだったから、今回「助産院」という選択肢への反発もあったのかもしれない。

この病院にはこれまで、大変お世話になったと思っている。でも、夫婦でこの数か月検討し、一生に何度もない妊娠・出産というプロセスを大切にしたい、体作りや赤ちゃんを迎える準備も含めて、一緒に伴走してくれるのは助産院だろう、という結論に至った。

「助産院」という選択への反応

「助産院」という選択肢に対しては、これまでもいろんな反応があると感じてきた。

同級生の友人たちに「どこで産むの?」と聞かれて、「助産院もいいかなぁと思うんだけど」と言ったら、目を丸くされた。高齢だと危険、という意見が多かったけど、中には、「縄につかまって産みたいの?」と助産院を揶揄するような声もあった。

出産した友人は、だれでも知っているような総合病院や大学病院など、巨大医療機関を選ぶ人がほどんど。中にはセレブ病院みたいな人もいる。

私は普段から、自然派というわけでもないし、医療や手術に疑問を持つというわけでもない。最初は、何も考えず実家近くの総合病院で産めばいいか、と考えていた。

ただ、縁あって、実際に助産院で産んだ女性の話を聞いたり、本を読む機会があって、妊娠は病気ではないし、コミュニケーションが薄い医療機関よりも、助産院で安全に産めるならその方が自分にも赤ちゃんにもいい経験になるのではないか、と思うに至った。

産む側が、自分らしく産む場所を選択できるといいのに

助産院は助産師のみで医療行為(帝王切開、会陰切開など)はできないが、だいたい近くの産科医院と提携している。定期健診は助産院と病院どちらも通うし、事前や分娩中に医療措置が必要となった場合は病院へいくことになる。

もちろん医療機関ではないので、受け入れないといけないリスクは存在する(緊急時の対応の遅れなど)。そして、リスクを軽減する対応はできる限りとられていると思う。一方で、病院での出産には、医療が過度に介入している現実もある。

どちらも良し悪しがあり、産む側が自分にあった出産スタイル、出産方法によって伴うリスクを理解して選択できるようであってほしいな、と思う。

「出産は、赤ちゃんとお母さんの安全が第一なのは疑いようがないが、それがすべてというわけではない」。どこかの産科医師が言っていた。出産や産後がトラウマとなるほどつらい経験をする女性も確かにいるのだ。リスクを回避できさえすればいい、とするのではなく、出産が安全な上に幸せな経験であったらよりいいなぁと思う。

日本で、助産院で出産する女性は1%を下回っているという。医療機関が主導するのではなく、産む本人が主役となって選べる選択肢は、ずっと残ってほしいと思う。


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