「ザ・争続」仁義なき戦い 遺産分割調停のリアル〈調停編 ~委任契約後の流れ〉
代理人との協力体制
弁護士 (O)を正式に筆者の母の代理人として委任契約を結んだ後、家庭裁判所への回答をはじめ事務手続きが山のようにあり、記憶を呼び起こすために当時O弁護士と交わしたメールを読み返しています。
O先生は委任契約後、直ちに審判 (調停)申立に関する裁判所への回答書を作成し、母の代理として動いている筆者に確認のため、メールで下書きを送ってくれました。
相続トラブル発覚時から、仕事仲間のなかでも世代が近く親しかったO弁護士を頼り、長い付き合いのよしみで有難いことに、ほぼ無料でアドバイスを頂いていました。
正式に委任契約を結んだとなれば改めて協力体制を確立すべく、今後の連絡方法や書類の送付先などを確認するためにコミュニケーションを重ねる必要がありました。
子を持たない会社経営者である私の場合、仕事が夜型で午前中は寝ていることが多く、日中の電話にはなかなか出られません。
ノマドワークが主流で自宅にいないことも多いことから連絡方法はメールとし、緊急時のみ電話というルールにしました。
弁護士という職業の人物は仕事柄、様々な世代や背景を抱える依頼者と接して人を見る目を養っているせいか、委任契約で一度しか会っていない私の母との面談で、O先生のなかで注意信号が灯ったらしく。
前の記事で母のことに言及しましたが、脳の機能に障害があり、コミュニケーションに少し支障のある母に対して不安を抱いたのだと思いますが、仕事で付き合いの長い私が娘としてサポートすることで安堵を覚えたようです。
調停の相手方や裁判所から送付される書類も、判断力に欠ける母の元に送っても意味がないので、すべて代理の私が受け取って確認することにしました。
これは推測ですが、当事者の娘である私との信頼関係がなければ、O弁護士が「しんどい案件」(苦笑) と称する厄介な遺産分割調停を受任して下さったか怪しいと私は考えています。
O先生とは某プロジェクトで4年の付き合いがあるのですが、不肖の母がいずれトラブルに巻き込まれることがあるだろうと予測して、有能で信頼できる弁護士との関係を地道に築いてきた自分を評価したいです。
金融機関への照会手続き
裁判所から通知が届いてから1ヶ月後の初回期日まで余裕がなく、慌ただしく体制を整える必要があったのですが、申し立ての通知が届いた時点でそれまでの経緯をO弁護士に説明済みだったことが幸いしました。
もともと法律畑の出身である私のサポートも功奏したのか、同じ世代であるO先生はスタートダッシュで早速、金融機関への照会手続きを準備すると伝えてきました。
法律用語で特別受益と言いますが、被相続人の生前に金銭を受け取った人物がいないか調べるために、故人の金融口座に照会をかける手続きです。
金融機関への照会は専門職だけではなく相続人であれば誰でも可能ですが、照会手続きをする人物が相続人であることを証明する雑多な事務が多忙な私には面倒で、弁護士に一任して良かったと思います。
手続きに必要な書類がO弁護士から直接相続人である母に郵送され、本人は署名捺印して先生に返送するだけで、戸籍謄本等の証明書はすべて弁護士さんが揃えて手続きを代行してくれました。
法的トラブルはプロに任せる
弁護士を雇わずに手間と時間をかけて自分で手続きをする人もいますが、こと遺産分割調停に関しては必ず相続人が遺産を取得するので、弁護士費用は遺産から賄うことが可能です。
費用についての経済的な問題は個々に事情があり、一般の裁判だと敗訴して利益を得られないこともあるので一概には言えませんが、専門知識の必要な法律絡みのトラブルにはお金を掛けることを惜しまない方がよろしいかと。
専門職に一任することで時間と経費が節約でき、プロのテクニックを駆使して依頼者の損失を防いでもらったり、最終的に私たち依頼者が得られるものも増えると思います。
ちなみに、私個人に関しては時間をお金で買うと申しますか、餅は餅屋という考え方の持ち主なので、実父の相続の時も手続きは経営している会社の顧問税理士に一任しました。
今にして思うと、父はたいした財産を遺した訳ではないし、遺産の分け方で相続人が揉めた訳でもないので税理士に任せるまでもなかったかと考えることがあります。
遺産分割協議書くらいは自分で作成し、実家の登記だけ司法書士に依頼すれば良かったかと思うこともあるのですが、父が亡くなった当時の私は若く、初めて経験した相続でしたしね。
何しろ遺された相続人が、私以外はメンタルを病んだり脳の機能に障害のある者しかいなかったので、私だけが負担を負うことなく迅速に手続きを進めるにはプロに任せて良かったのだと。
しっかり者の私は、税理士の顧問料を自分の会社が支払っていることを理由に、相続手続きに掛かった税理士報酬を母と姉に折半で支払わせましたが、費用は遺産でペイできるのだから問題ないと思っています。