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「ザ・争続」仁義なき戦い 遺産分割調停のリアル〈発端編~反旗を翻す〉



今回の登場人物

被相続人 (S) N家の三男。独身貴族を謳歌し70歳過ぎて急死。遺言書を残さなかったために争続を引き起こす原因になった人物。

元相続人 (M) N家の長女。同居していた次女に看取られて昨年末に病死。
相続人 (R) 元相続人(M)の次女。50代半ばの独身で非正規職につく。メンタルに問題を抱え、争続に発展させた人物のひとり。

相続人 (T) N家の次女。認知症で弁護士の後見人あり。3人の子がいる。
従兄 (K)  相続人(T)の長男。還暦で独身。同居する母親の介護を担う。被相続人が入院時の手続きと金銭の管理者で遺産分割調停の申立人。

元相続人 (H) N家の次男。子なしで姉である相続人(T)に相続分を譲渡。
相続人 (I) 
N家の末っ子。発達障害の疑いがある筆者の母で独居の老人。
弁護士 (O) 相続人 (I) の調停代理人。筆者と仕事で長い付き合いがある。


従兄に反旗を翻す

相続人(R) が遺産分割協議書の原案を受け取り拒否したと母から聞いた私は、相続人の署名欄が印字になった協議書には絶対に捺印しないことと、代償金の支払いを求めるメールを従兄 (K)に送り、独断で作成された協議書の内容には賛成できないと意思表示しました。

代償金の話を持ち出したのは、伯父である元相続人(H)が従兄からお金を受け取って相続分を譲渡したらしい、という話を母から聞いたからです。

従兄が欲しがっている(正確には自分の親である相続人(T)に相続させたいと考えている)不動産との差額に見合った代償金を得られるならマンションを譲ることも、やぶさかではないと伝えました。

相続人である母自身は不動産には関心がなく、元よりマンションは売却して現金化し、相続人で等分に分けることを希望しており、金銭で相続を受けたいと望んでいたからです。

従姉Rが協議書原案の受け取りを拒否したことで、もはや遺産分割調停を申し立てるしか手段が無くなったので、こちらも争続が裁判所に持ち込まれることを見据え、このあたりで対決姿勢を示すべきだと判断しました。

相続問題を最初から相談していた、私自身が仕事で長い付き合いのあるO弁護士が調停を快く受任して下さると知り、むしろ早めに裁判所に持ち込まれることを望んでいました。

O弁護士は早い段階から遺産分割調停の申し立てを助言していましたし、当初から巻き込まれる形でトラブルの経緯を目の当たりにしてきた私としては、調停以外に解決する術はないと素人ながら考えたのです。


銀行の委任契約を解除

従姉Rが遺産分割協議書の原案を拒否したことで、ようやく銀行側も相続人代表を名乗っていた従兄に対して大義名分ができたのか、遺産整理の委任契約を解除する方向で動き始めました。

天敵である?従姉からの猛攻に従兄が敗けた結果となり、代表者として動いてきた彼としてはメンツが丸潰れで腹の虫が収まらなかったと思いますが、銀行の担当者が従兄と相続人(T) の住む自宅を訪れ、解約の手続きを進めました。

相続人1名につき10万円の手数料(解約料?)を支払うよう銀行から連絡を受けたと私は母から聞いたのですが、銀行は解約手続きの際に名義上の相続人代表者である伯母のTにまとめて請求したようです。

従兄が独断で遺産分割協議書の原案など作成させたせいで手数料が膨らむ結果となった訳ですが、争いのある案件を銀行などに委任しなければ無駄なお金を払わずに済んだのです。

愚行を重ねた従兄に対して憤ると同時に、思慮もなく銀行の委任契約書にサインした私の母を軽蔑しました。連載の初期に書いた通り、相続人の間で銀行に遺産整理を任せるという合意があった訳ではないからです。

そもそも、筆頭相続人の代理でもない従兄(筆頭相続人は当時、伯母のMでした)に代表者として仕切らせること自体、相続人たちは明確に認めていた訳ではありません。


相続は人を狂わせる

最初から話し合うこともせず、身内だからとなぁなぁでスタートしたから道を誤ったのですが、まさか親族中に善人だと評価されていた従兄が (私は以前から彼の人格を疑っていましたが) 詐欺まがいの行為で暴走するとは誰も思っていなかったのです。

母方いとこの中で最年長である従兄の変節ぶりに一番ショックを受けていたのが対立していた従姉Rで、世代が近く、子どもの頃から慕っていた彼が別人のように変わり果てた姿に絶望し、可愛さあまって憎さ百倍の境地に至ったようです。

まだ人生経験の浅い私にとって「相続」の恐ろしさを思い知った出来事で、血の繋がった人物が思いがけず遺した財産やお金を目の当たりにすると、人はいとも簡単に狂うのです。

お金は人を魔物に変えてしまう・・・この連載を読まれているあなたも他人事ではなく、あなた自身が相続の泥沼に落ちるかもしれません。

今後の調停編で詳しく書いていきますが、最初のうちは私と共闘していた従姉Rにせよ、伯父の葬儀の件が原因で彼女と決裂した従姉Nにせよ、母方の親族は母自身も含め、人間性に問題のある人物しかいないと露呈した。

母方いとこの中で一番年少な私は争続そのものよりも、親族が次第に狂っていく様にショックを受け、相続というのは人間の性を暴き出す、恐ろしいシステムだと実感しています。

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