④「ウイルスというものの基本的知識」と「ウイルスに関する地球のルーティン」
たくさんの人にちょっとでも内容が届いたらいいなと思い、一部を文字に起こしました。
(ダースレイダーさんと社会学者・宮台真司さんによる、これからの世界と社会の考察トーク『100分de宮台』)
■「ウイルスというものの基本的知識」と「ウイルスに関する地球のルーティン」
コロナ自体は変異しています。
コロナの株(strain)は大きく分けると二つと、二つに入らないランダムなものが一つ。これはインフルエンザと似ている。
インフルエンザにもA型、B型、新型、がある。コロナはL型とS型。このように分かれていて、これからも変異していくと言われている。
これはワクチンの開発にとってはとても大事なこと。例えばインフルエンザでは、前年までの流行を考えてA型B型に対するワクチンをどのようにミックスするかを塩梅してワクチンを作っている。なので、「A型が流行ると思ったらB型が流行ちゃった〜」ということは毎年起こっている。ということで、ワクチンの効き目は絶対ではない。
なのでインフルエンザはちょっと変異の仕方が変わっただけで従来よりも危険なものとなる可能性が毎年ある。10年前の新型インフルエンザの猛威もその例。これはコロナに関しても言えること。
インフルエンザとは何か。家畜から人間にうつるもの。鶏と豚と人間の間のピンポンによってどんどん変異していくということが分かっている。2017年にある人類学者は「これは人間のために閉じ込められて命を差し出している家畜からの復讐である」と言った。
ウイルス進化学という学問の分野がある。そこでは常識の話だが、生態系にとってはこのコロナの件も全くのルーティーン。普通のことである。日本では福岡伸一さんが既に新聞などで書いているデフォルトの知識。我々人間がある程度高等化して以降は、そのさらなる高等化を支えたのは「ウイルス感染」である。
例えば、われわれのDNA(ゲノム)のうち、実際のLivingのために使われているものというのは、諸説あるが8割から95%。残りは使われていないと見えるけれど、そこを見ると色々な植物の遺伝子や動物の遺伝子が入っている。我々動物は目を持つ。目は植物の遺伝子がウイルスによって転移されて動物に生じるようになったというだけのこと。
要するに、読まれていないゲノムの遺伝子の大半の部分は、ちょっとしたパラメータ(周辺条件)の変化で読みに行く。読みに行くと実はそれまでなかったような形質、表現系が現れてきて、それが進化を駆動していく。実はそういう風にして我々に影響のないようなウイルスの転写が種間(speciesの間)で絶えず生じている。(木村資生による遺伝子の「中立進化説」)
他方、ウイルスの中には影響のあるものもある。影響のあるものはレトロウイルスで転写される場合が一番多いのだが、有害だったのがHIV。でも、HIVも有害性(ふりかえるとそれによる大量死)と引き換えに、私たちに他の生物から色々な遺伝子が受け渡される可能性もあって、随分あとの視座から見直さないと今起こっている例えばコロナ19の感染がどう言う意味で人類に影響を与えるのか、ということは分からない。
人間は今COVID-19で大慌てだが、私たちが気がつかないうちに、COVID-19の流行は例えばアリで起こっていたかもしれない。蜂や蛇で起こっていたかもしれない。
日常的にこういったウイルスによる、ある種の“生物間の刺激”が起こって生物は次の段階に進む。これはいつもあちこちで起こっている。これがエコロジカルルーティーンというもの。その人間バージョンが今起こっている。これは地球レベルでは日常。
人間社会をどう維持するかという目の前の対策をすることはもちろんだが、一方でこういう視座も持っておく必要がある。
【blog主】「2歳4歳の子育て中の母」であり「保育士」。ふたつの現場での経験を社会学・人類学・哲学・政治学・宗教学・アートなどボーダレスな分野の知から考察。これから子どもたちが大きくなって船を漕ぎ出していく社会に疑問が沢山。同じような疑問や不安を持つ子育て世代と、気付き・学び・疑問などをシェアして考えたい。大阪府にて“子育てハウス”を媒介にした共同体を作りたいと企画中。友達申請・メッセージはこちら→ https://lin.ee/qK7pte