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自分と相手の境目が分からない乳幼児期

前回の記事で、「子どもは世界があやふや」「輪郭がぼんやりしていて、規定できないふわっとした世界(に住んでいる)」と書きました。

では、どのくらいあやふやなのか。

保育士としての体験談をご紹介します。

別に答えがある訳ではないのですが、子育ては自分の子どもしか観れないのに対し、保育士は一度に多くの子どもを観ることができるので、そこで見聞きしたことがみなさまの子育ての材料になるかも、と思って書いてみます。


■双子は自分がどっちか分からない

保育園勤務でよく見ていた1歳児クラスには双子の男の子がいました。

1歳児クラスといってもみんな2歳に近づくにつれ、言葉も上手になってきます。双子の男の子も例外でなく、大人と会話できるくらいにお話することができました。

けれど彼らはよく、自分の名前を間違えます。自分の名前ではなく、兄もしくは弟の名前を自分の名前だと思って言ってしまう。

この話をベテランの先生に言うと、よくあることだと。ベテランの先生が過去に受け持っていた双子ちゃんも、よく自分の名前を間違えていたそう。5歳くらいになったときに「どうして〇〇ちゃん(自分の名前ではない方の名前)って自分のこと言ってたの?」と聞くと、「だって、どっちがどっちか分からなかったんだもん」と。


双子ではないですが、うちの2歳の次女も、自分と姉の区別がついていないようです。自分のことを姉の名前で呼びます。


1歳にもなると、お友達と自分の区別はつくようで、名前も覚えられます。お父さんやお母さんもさすがに分かります。けれど、家庭内で一緒に過ごす幼児同士は区別がつかないのかなと思います。もしくは、友達や親や先生の名前の違いは認識していても、やはり、「体が別々だ」と言うことははっきり理解していないのかもしれません。子どもの言動には、明確に線引きできない「あやふやさ」があります。


■「おててが叩いたの」 自分がやっているという自覚がない

「乳幼児は、自分の体がどこからどこまでかが分からない」と言われています。

世界と自分の輪郭があやふやなので自分の手や足がどこまでなのかよくわからない。だから、叩いたり蹴ったりというのも、悪気がある訳じゃない。ただ衝動があっただけのこと。

1歳児クラスに通称「がぶちゃん」と言われる、すぐ噛む女の子が居ました。

私がその子に密かに試していたのがこの手遊びです。

これが効果覿面で、先生たちが「どうしちゃったの?」と言うくらい、すぐに噛まなくりました。1ヶ月かかってないと思います。本人もすごく気に入っていたようで何度も「やって」とせがまれました。

もちろん、動画にも説明があるように、効果の出方には個人差があるし、他の要因でストレスが溜まっている場合などはこれだけで済まない子もいました。

がぶちゃんはクラスに3人いて、2人の女の子はすぐ噛まなくなりました。あと1人は男の子で、性格や生活習慣、お母さんが2人目妊娠中などの状況が重なって時間がかかったように思います。

「この手遊びが噛まなくなった最大の要因だ」と断言することはできなくて。子どもの成長で自然に無くなった可能性ももちろんあります。

けれども、「自分の体がどこまでか分からない」という動画の説明が、きっと本当にそうなんだろうなぁ…という実感になりました。

*****

私がよく参考にしているシュタイナーでは、7歳までの子どもは体を発達させることが一番の目的だといいます。私も、そうだろうなと感じます。自分の体を知ることで、世界と自分の境目をだんだん知っていく。その基礎ができたうえで、次により高度な知性の発達にうつるんだろうと思います。

自分の体の輪郭を知る方法は、喧嘩による感触や手遊びだけではありません。乳児期にハイハイしたり、段をよじ登ったり、物を投げたり、抱っこしてもらったり。そういう、あかちゃんが普段する一つ一つの動作がその役割を果たします。

ですが、保育園の0歳児クラスを見ていると、段によじ登るのもダメ。ものを投げるのもダメ。口になにか入れるのもダメ….理由は「危ない」から。

といっても、本当のところは「危ないからダメ」なのではなく、根底にあるのは「怪我をしてしまったら保育士の監督不行届ということでクレームが来るから」だろうと思います。

話がそれましたが、結局いいたかったことは。

・子どもは「自分と世界の境界線が分からない」という、大人の尺度では測れない世界に生きている

「自分と世界の境界線が分からない」乳幼児期は「みんな仲良し」以前の段階。なので仲良くできないことに悩む必要はなく、いろんな経験を通して自分と世界を学んでいく時期になればいい。

と私が考えるようになった体験談のひとつです。

こういう風に世間が子どもを認識している社会になったら、もちょっと子育てしやすい環境になりそうなのにな、とかも思ったりします。

ふわっとしたままですが、本日はこのへんで★


■VEREIN PROJECT■ 
子どもととりまくソーシャルデザインを考えるコミュニティ 
HP→ https://momocat223530.wixsite.com/verein


【blog主】「2歳4歳子育て中の母」であり「保育士」。ふたつの現場での経験を社会学・人類学・哲学・政治学・宗教学・アートなどボーダレスな分野の知から考察。これから子どもたちが大きくなって船を漕ぎ出していく社会に疑問が沢山。同じような疑問や不安を持つ子育て世代と、気付き・学び・疑問などをシェアして考えたい。大阪府にて“子育てハウス”を媒介にした共同体を作りたいと企画中。
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