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歴史の重さを受け止める

ヴィンテージワインをサーブするときに、よく用いられるのがパニエ(Panier)です。パニエとは、ワインバスケットのこと。年数の経ったヴィンテージワインのボトルの底には、澱(おり)が多く沈殿しています。パニエはその澱などの沈殿物がグラスに注ぎ込まれないように、ワインを傾けたままサーブできる優れもの。

今回の主役は、ティーローズの深みを帯びたガーネット色が特徴の《シャトー・ディッサン1981》。はじめはドライいちじくやプルーンの甘みが感じられますが、すぐ後からなめし革やタバコ、腐葉土のような複雑な香りが広がります。口に含むと、円熟したブルーベリーやラズベリーなどの甘みと、ビロードのような繊細なタンニンが見事なバランスを保っています。フィニッシュにはエスプレッソーコーヒーの豆をかじったような苦味が微妙に感じられます。長く続く余韻とともに、エレガンスとその背後に見え隠れする力強さ。42年という長い時間経過によって、見事な熟成を遂げていました。

ヴィンテージワインは、当時の時代背景を思い出させてくれます。ロナルド・レーガン米国大統領が就任し、「レーガノミクス」を打ち出したのが1981年。その後日本では中曽根内閣が発足。“ロン・ヤス”と呼ばれる蜜月関係を構築し、現在につながる日米安全保障体制の基盤をつくった時代でした。

ヴィンテージワインとは、当時の出来事やトレンドを感慨深く思い起こさせてくれる不思議な飲みもの。澱などの沈殿物を排除するだけでなく、とりわけ年季の入った純銀製のパニエは、そんな歴史的な重みを受け止める役割を担い、より格調の高い雰囲気を醸し出してくれます✨✨

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