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ロッシーニは、必ずしも牛フィレ肉でなくても良い

ロッシーニと聞くと、多くの人は牛フィレ肉の上にフォアグラを乗せ、トリュフを添えたフランス料理の定番「トゥルヌド・ロッシーニ」を思い浮かべるでしょう。この料理は、イタリアの偉大な作曲家ジョアキーノ・ロッシーニへのオマージュとして生まれた、贅沢さの象徴ともいえる一皿です。しかし、ロッシーニの本質はその構成要素にとらわれず、応用の幅広さにあるのではないでしょうか。

今夜、わたしが楽しんだのはその一例です。主役となったのは牛フィレ肉ではなく、柔らかくジューシーに焼き上げたハンバーグ。その上には濃厚でクリーミーなフォアグラがとろけるように乗せられ、さらにスライスしたトリュフが贅沢に散りばめられていました。この新しい解釈のロッシーニがもたらすのは、伝統的な格式の中に親しみやすさと遊び心を加えた一皿です。

そして、この特別な料理を引き立てるために選んだのが、「モンテリー ルージュ ドメーヌ・ポティネ・アンポー」の2013です。このブルゴーニュの赤ワインは、熟成によって角が取れ、チェリーやプラムの果実味に微かなスパイスと土壌由来のミネラル感が重なり合う、奥深い味わいを持っています。モンテリーの持つ繊細な酸味とエレガンスが、ハンバーグのジューシーさやフォアグラの濃厚さを絶妙に引き立て、トリュフの芳香をさらに際立たせます。

ひと口ごとに、料理とワインの調和が奏でるハーモニーが広がります。ロッシーニの名を冠する料理が必ずしも牛フィレ肉でなければならない、という固定観念を軽やかに超えたこのひと皿は、ワインの可能性をも広げるものでした。重厚さと親しみやすさ、贅沢さと遊び心。この対比が食卓に新たな魅力をもたらし、特別な夜を演出してくれます。

ロッシーニの本質は、その素材がなにであるかに縛られるものではありません。フォアグラとトリュフが織りなす豊かな味わいを、どのように楽しむか。そして、それに寄り添うワインをどう選ぶか。その自由な発想が、新たな美食の扉を開いてくれるのです。

今後ロッシーニを楽しむ際には、ぜひ型にとらわれないやわらか発想で、ワインと料理の組み合わせを探求してみてください。そこにはきっと、まだ見ぬ感動が待っています。

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