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黄 小娥 先生

『ナゾの美人。
まったくつかみどころがない。
いつ生まれて、どこで育ったか、誰も知らない。
日本人だという人もある。
中国人だという人もいる。
チベット人だという噂さえある。
親もなく夫もいない。もちろん子もいない。
たった一人ぼっちだ。 〜〜〜中略〜〜〜
わかっていることは、彼女の占いがものすごく当たるということだけだ。』

これは 黄 小娥 先生の著書『易入門   自分で自分の運命を開く法』光文社カッパ・ブックス 1961年の本の↓カバー裏側に黄先生のお美しいお写真と共に書かれてある紹介です。

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私が生まれる5年前、黄先生はこの本を世に出し、本は飛ぶように売れ、瞬く間にベストセラー、一世を風靡し、マスコミからはスター扱いされ、一方易者達からは易の冒涜との厳しい批判大殺到、後に黄先生は静かに表舞台から去ったと言われます。

何が易者達をそれ程怒らせたのでしょう。『易入門』に対する批判、諸問題等は、汎日本易学協会の当時の易学研究に↓生々しい批判の声が載せられています。ネットのある今のような環境でしたら如何なっていた事でしょう。

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黄先生は加藤大岳先生のお弟子さんという説がありましたが、そうではなく、紀藤元之介先生のお弟子さんだったようです。また、加藤大岳先生をはじめ何人もの素晴らしく優秀で著名な先輩易者さん達がいらしたにもかかわらず「日本一の名人」として紹介したカッパ・ブックスの宣伝が、易者達の怒りを更に煽ったようです。
中には「何故正々堂々と自己の略歴が残されないのか?なるほどああすれば売れるであろう事間違いない、しかし少なくとも正しい易を学んだ黄氏のやる方法ではない。」と言う先生や、「カッパ・ブックスには全てカバーに正しい略歴があり、もしも黄氏が出版社に対して要望したならば、それは通る事である。」等、また当時、本の価格が200円だったという事から「日本一の大安売り」と言われたり、「易入門がベストセラーになったという事そのものの功罪」「不快な読後感」「あれが易だと思われては困る」等々、易者さん達からの厳しいご意見が多数寄せられています。当時黄先生はどのようなお気持ちでいらした事でしょう。

勿論、易学研究では、黄先生の言い分もちゃんと公開されています。

「私のいいたいこと」という題で、それは綴られています。

「『易入門』は、これから易を学ぼうという人の為に書いたものです。
枚数を少なくし、読者に疲れさせず面白く、価格を安くし、なるべく多くの人に読んで貰う為に複雑な取り扱いを避けて、六十四のケースで覚えていただく事にしました。 〜〜〜中略〜〜〜 易学研究、及び実占研究で色々ご批判がありましたが、私の書いてない文字、言ってない言葉に対しては、私はまったく責任がないばかりか、大変な被害を蒙っています。
私のところには、毎日沢山の手紙が来ますが、真面目に易と取り組んでいる人が殆どです。私は正しい易が世の中に広まる事を願っているのです。」

また、『易入門』の推薦の辞を依頼された、高木 彬光 先生は、「わが反論」として、こう発言しています。

「日本一の名人、という表現は、歴史上皆無の恥知らずな言葉だそうだが、あいにくこれは私の責任でも、勿論黄先生の責任でもない。日本一、というキャッチフレーズはカッパ・ブックスが付け足したものである。私も黄先生もカバーのゲラ刷りなど見てもいないのだから責任の取りようもないくらいなものだ。そういうジャーナリズムの性質もわからずに、ギャーギャーがなりたてるのもおかしな話だが、少し占術の力がおありなら、占って真相も理解できよう。それもなさらず攻撃を受けるのは、無神経極まる恥を知らざる言葉であり、現代易学界の堕落をさえ感じさせる無責任極まる言葉とさえ断ずる事ができるであろう。 〜〜〜高木先生の憤りが長過ぎて中略〜〜〜 学問というものは、全てそういうものである。専門の学術雑誌に研究論文を発表することも、学者としては大きな功績だろうが、その学問に対して何の理解も持たない大衆に例え真理の一端でも理解させ、その蒙を啓くことも、それに劣らない功績だろうというほかはない。」

後に高木先生は「易占入門」を出版していますがその中で

「黄先生の易入門には初心者の入門者の為、筮竹と算木を使う方法は避けて、硬貨で占う方法をあげているが、これに対して所謂専門の易者からは、筮竹を使わないのは正式な占いではないと、喧々たる批難が巻き起こったものである。ところが易の歴史を調べてみると、この非難は大いにおかしいのだ。」

と、硬貨で占う方法は中国で大昔から使われていた、と述べています。また、筮竹の方はこれという方法が決まっていない、という事も。

いずれにせよこの騒動の後、黄先生は汎易学協会から去り姿を消したそうです。

しかし、それから43年後の2004年、黄先生の『易入門』は新装版として復活しました。その時の黄先生の喜びが、新装版のあとがきに記されています。
黄先生、良かったですね。

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矢張り良い本は売れ続けるものです。黄先生の本はベストセラーからロングセラーへと変わりました。

それまで易は難しい、易者だけが学ぶもの、と、変に秘伝扱いされて来た易占いを、身近に感じさせてくださった先駆者と思っています。

現在、私はリニューアル版「星マリアのイーチンオラクルカード」という、易をオラクルカードにしたものを作成中です。1961年に、汎易学協会の易者さん達が、私のイーチンオラクルカードを見ましたら、きっと大変な騒ぎとなり、批難に遭った事でしょうし、破門された事でしょう。

私は黄先生と同じ志で、難しいと思われる易を、お一人でも多くの方に、身近に感じて頂きたく、カードの反省点も踏まえ更に使いやすいものにと、品切れを機により納得の行く自分らしいカードにしたく拘りを持ちリニューアル版を作っています。
老若男女、国籍宗教問わず、親しんで頂きたいという願いを込めています。

幼い頃からの「自分の占いカードを作る」という夢を実現させる為、ない知恵を絞り頑張っています。黄先生がご存命でしたら是非、手にとって感想をお聞かせ頂きたかった、と、思いつつ、作成に注力しています。
黄先生の『易入門』は、先週、私のYouTubeチャンネルでも少し紹介させて頂きました。

黄 小娥 先生、お会いしたかった先生の一人です。


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