見出し画像

モーツァルトとの戯れ

あの猛暑はどこへいったのかと不思議に思うほど急に秋めいてまいりましたね。そんな秋の夜長にお楽しみいただきたい動画をご紹介いたします!

9月6日に延期公演として第一生命ホールで開催されました、モーツァルト協会例会から、どどん!!と豪華二本立てでお届けします。是非ゆっくりとお楽しみいただけたら嬉しいです。


モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 変ロ長調 K.424

この作品K.424は、ヴァイオリンとヴィオラの二重奏曲という編成の作品の中で、同時期に書かれたK.423と並んで世界的に最も愛されていると思います。

1783年、モーツァルトが27歳の時に作曲されたと言われています。悪妻と名高いコンスタンツェとの結婚を、モーツァルトを神童に仕立て上げた名プロデューサーであり自身名高い音楽家でもあった父レオポルトに反対されていましたが、その関係修復のため故郷ザルツブルクを訪れた際に書かれたそうです。

この作品には逸話があります。教会に権力が集まっていた当時、音楽家たちにとっての安定した就職は、大司教の宮廷に仕えることでした。血気盛んなモーツァルトは、務めていたザルツブルクのコロレド大司教のもとを1781年に去りますが、この作品は、モーツァルトの後任として働いていたミヒャエル・ハイドン (「交響曲の父」で知られる有名なフランツ・ヨーゼフ・ハイドンの弟) が病気で課せられた課題をこなせずにいたことを知り、代筆してあげたのではないかという説があります。たまたま帰省していたザルツブルクで、音楽仲間への友情をあらわした作品...なのかもしれませんね。

このK.424は、K.423 (ト長調) と対照的な変ロ長調という、比較的弦楽器が鳴りにくい調性で書かれています。その分、柔らかさや繊細さが魅力的な作品だと思います。ヴァイオリンが主旋律を先導しつつも、たった二つの楽器でこれだけの鮮やかな世界を創り出せるモーツァルトは、やはり天才だと感じざるを得ません。全三楽章です。

00:00 Ⅰ. Adagio - Allegro
11:03 Ⅱ. Andante Cantabile
14:05 Ⅲ. Thema. Andante grazioso - Variazioni I-VI - Allegro

共演は、2012年にかのエリザベート王妃国際音楽コンクールでも第二位を受賞するなど第一線で活躍を続けるヴァイオリニストの成田達輝くん。2016年に初共演して以来プライベートでも仲よくさせていただいていて、彼の音楽性はもちろん、人間性も大好きです。そんな彼とモーツァルトの世界の中で戯れられて、とても幸せでした。使用楽器は、ストラディヴァリウス1711年製"Tartini" (宗次コレクションより貸与)です。

成田くんのYouTubeチャンネルはこちら↓



モーツァルト:ディヴェルティメント 変ホ長調 K.563

モーツァルトは35年という短い生涯を疾走しましたが、この作品はそんな彼の最後のディベルティメントで、1788年、32歳の時に書かれました。「3大交響曲」と呼ばれる大傑作を生み出していたのと同時期に作曲され、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロというたった三つの楽器のための作品とは思えない充実した内容になっています。あのアインシュタインもこの作品を聴いて「最も完全な、最も洗練された三重奏曲」という言葉を残しています。

ピアニストとしても作曲家としても売れっ子で人気を博していたモーツァルトでしたが、自身の浪費癖や彼をよく思わない人たちによる妨害などにより、映画「アマデウス」でも描かれるように、経済的に苦しい晩年だったようです。

この作品は、そんな時に手厚く援助をしてくれていたウィーンの裕福な織物商人の友人プフベルク (フリーメイソン仲間でもある) のために書かれたと言われています。

全六楽章という超大曲ですが、音楽的な充実だけではなく、弦楽器を熟知しているモーツァルト (好んでよくヴィオラを弾いていました) ならではの華麗なテクニックを要する場面がたくさんあります。どこを切り取っても美しい、そんな素晴らしい作品です。

00:00 Ⅰ. Allegro
11:57 Ⅱ. Adagio
22:29 Ⅲ. Menuetto (Allegretto) - Trio
27:25 Ⅳ. Andante
33:24 Ⅴ. Menuetto (Allegretto) - Trio I -Trio II
38:29 Ⅵ. Allegro

今回、室内楽初共演させていただいた辻本玲さんは、2009年にガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位入賞されるなど、ソリストとして、またNHK交響楽団の首席奏者を務められるなど、多方面でご活躍のチェリストです。抜群の安定感と、その深みのある美音に包まれて至福の時間でした。使用楽器は、ストラディヴァリウス1724年製(NPO法人イエロー・エンジェルより貸与)ということで、成田くんの楽器の音色との贅沢なマリアージュも是非ご堪能ください。

そのほかの演奏動画やQ&A動画などもアップしておりますので、YouTubeチャンネルの高評価、チャンネル登録も是非お願いいたします♪

いいなと思ったら応援しよう!

安達真理 - Mari Adachi
サポートというあたたかい応援のお気持ちは大きな励みとなると共に、実際のアーティスト活動を支え可能にするパワーとなります。それを皆さまと分かち合える日を楽しみに...♡