【緊張との向き合い方】大勢の前で発表する時震えてしまう方へ【アナウンサーが教える講座】
大勢の観客がいる舞台の上で一人でしゃべるとき、あなたは緊張しますか?
例えば、発表、報告、プレゼン、司会などで舞台の上で一人で一定時間喋らないといけない時、震えるほど緊張してしまった経験はありませんか?
体の芯がブルっときて、手足が震え、声も震える。
震えるほど緊張していることがわかるから、ますます緊張してしまう。
今回は大勢の前や舞台で話す時の「緊張との向き合い方」を書いていきます。
これらを実践すると、緊張と上手に付き合うことが出来るようになりますよ。
1.プロでも緊張する
私は、数多くの司会やテレビの生放送・生中継、講演、数は少ないですがドラマリーディングや舞台俳優、もちろんプレゼンや発表……やり直しのできない生の現場で色々としてきました。
司会をする時、よく舞台袖で「やっぱりプロは緊張しないんですか?」と聞かれますが、プロでも緊張します。
逆に緊張感が大事だとも思っていますので、緊張することは必要なことだと思っています。
違うのは「緊張との向き合い方」です。
緊張の向き合い方には、
があると私は考えています。
これらを上手に取り入れるだけで、自信喪失につながる「悪い緊張」から、程よい緊張感を持った「良い緊張」にかわっていきます。
それぞれ説明していきますね。
2.環境的向き合い方
大勢を前に舞台などで発表やプレゼンをするときの緊張をほぐす方法の一つとして「環境的向き合い方」があります。
これは、事前に環境を整えることで緊張を和らげる方法です。
例えば、発表やプレゼン、司会などで使う資料がきちんと揃っているか、内容に不備はないかを確認することです。
不安を取り除くことで緊張を和らげます。
資料の確認だなんて緊張以前に当たり前と言ったら当たり前の作業ですよね。
でも準備するのは発表する必要な10の資料のうち、10しか揃えていないなんてことはありませんか?
最低でも12〜15は揃えましょう。
これは同じものを数多く準備するという意味ではありません。
不測の事態や質問が来た時に、別の角度から答えたり違う提案をしたりするためです。
司会で言えば「ゲストがまだ到着しません!司会の方、ゲストが登壇するまで喋りで延ばしてください!」なんて言われた時の対応策です。
「え?今突然間をつなげといわれても、何を話したらいいの?」と頭が真っ白になって喋れなくなったらプロとしていけませんよね。
突然のことにもアドリブで対応するのがプロだ!と言い切る方もいますし状況によってはもちろんそれも必要ですが、考えられる不測の事態に備えて準備をしておくこともプロの仕事として必要です。
何もなければそれでいい。
でも何かあった時に対応できるようにしておく。
「何か突然のハプニングが起こるかもしれない」と緊張につながる不安の要因を予測しておくことです。
発表やプレゼンでも同じことです。
もしかしたら、
考えだすと本当にたくさんのことがあるんですよね。
その中から最低でも現実的に起こりそうなことをピックアップして、事前の準備やリサーチをしておくと心に余裕が生まれます。
心の余裕は、失敗や自信喪失につながる悪い緊張から良い緊張にかえるために必要なものです。
だから発表に必要な10の書類だけ揃えて安心してはいけません。
不測の事態を想定して、それに対応できるように準備するだけで俯瞰が少し見渡せます。
緊張への環境的向き合い方の他には、女性の方であれば「細いヒールを履かない」というのもポイントです。
舞台袖から舞台の中央や発表する場所まで必ず何歩か歩くはずです。
暗い舞台袖から明るい舞台へ。
光の加減が変わるだけで一気に緊張してしまいます。
その時、細いヒールで歩いてしまうと緊張による震えでバランスを崩しやすくなり、そのバランスを保とうと焦ることでますます緊張します。
観客が多いなど緊張が想像できる場面で発表するときは、太めのローヒールかヒールのないパンプスがおすすめです。
何らかの理由でどうしても細めのヒールを履いてしまった場合は、すぐに脱げるタイプのものを選びます。
発表台や司会台に着いた時に足元が隠れるようであれば思い切って靴を脱いでしまいましょう。
足元が安定するだけで緊張の度合いはかなり違ってきます。
このように身につけるもので不安定なものや震えた時に身につけたものが揺れる可能性のあるものは極力取り除きます。
3.身体的向き合い方
これはよく本や何かの情報で見かけるのではないかと思います。
「本番前の体操」「口の運動」などのことです。
緊張でかたくなった体をほぐすことで、身体的緊張を和らげます。
これは前日にやるものではありません。
発表直前の舞台袖などでやるものです。
私のおすすめを紹介します。
これらは全て、舞台袖で自分の順番を待っているときに行います。
まずは 1)体全体のストレッチ
前屈
首を左右前後に動かす
片方の腕を抱えて腕を伸ばすストレッチ
腰に両手を当てて上半身をねじる
立ったりしゃがんだりする
などです。
時間やスペースが限られている場合は、首を動かすだけでもいいので、体の緊張を極力ほぐしておきましょう。
2)口周りの運動 です。
唇を閉じた状態で舌を上の前歯の表側から下の前歯の表側に向けてぐるりと一周します。
最初は右回りを10回。
次に左回りを10回。
口周りの緊張がほぐれます。
この運動をすると唾液が出るので緊張でカラカラになった口の中が潤います。
最後に 3)深呼吸 です。
緊張すると呼吸が乱れます。
深呼吸して緊張の呼吸をリセット。
鼻から吸って口からゆっくり優しく出していく。
「呼吸が落ち着いたな」とわかるまでやってみます。
私は舞台袖では1)から 3)の全ての身体的緊張のほぐし方をしています。
どうせ舞台裏はお客さんは誰も見ていませんからね。
ならば自分の体を整えることに集中します。
もちろん台本片手に、ですが。
4.心理的向き合い方
あなたは大勢の前で話す時、なぜ緊張するかわかりますか?
それは
です。
これがもし、大勢の前で同じことを毎日何年も発表していたとしたら、緊張すると思いますか?
きっと緊張しませんよね。
つまりあなたが緊張する理由の大きな一つは、「経験が圧倒的に少ないから」なのです。
これを取り除けばいいのです。
例えば、「ステージの上で大勢の前で自分の書いた10分程度の作文を読む」という状況を想定します。
これを分解して考えます。
ステージの上で話す
大勢の観衆の前で話す
読み上げるのに10分かかる文章を読む
次に、あなたはこの中のどれの経験が少なくて緊張するのかを考えます。
どれもだ!
という場合、それぞれをイメージして何度も「作文を読む」練習をします。
立って話すのならば立ちながら。
舞台の上にいて、大勢の慣習の前で。
これを強くイメージしながら、暗記するほど何度も読み上げるのです。
最初は特に何も考えずに普通に読む。
次にゆっくり読んでみる。
抑揚をつけて読んでみる。
強調したいところをたてて読んでみる。
たまに作文から目を離し、観客の方を見ながら読んでみる。
時々、手振り身振りも入れて読んでみる。
感情を入れて読んでみる。
読むペースを一定にするために足でリズムをとりながら読んでみる。
「たかだか作文を読む」程度で、こんなにたくさんの練習法があるんです。
何度も何度も繰り返し練習をします。
イメージしながら。
どこを見ようかな、眩しいのかな、客席は暗いのかな、と考えながら。
こうして擬似的な「経験」を少しでも多く積むことで、圧倒的な経験不足からくる緊張を和らげます。
それから心理的なテクニックとして「ゆっくり話す」というのも大きなポイントです。
緊張する人は口の開きが悪くなり、早く終わらせたいがために早口になります。
早口になると言葉を噛みやすくなります。
かんでしまうとますます焦って声が小さくなり、話す速度が上がります。
またかみます。
これでは悪循環です。
これを断ち切るためには、つとめてゆっくり話すことです。
大袈裟なくらい口を動かしながら話してもいいでしょう。
ゆっくり話すことで、言葉に詰まった時に考える時間がわずかに増えます。
このわずかな時間が大きな心の余裕になります。
とにかくゆっくり話す、を、最初からさいごまで強く意識したみてください。
そして緊張との心理的向き合い方の最大のポイントはこれです。
あるいは
目的を見失わないこと、これが実は最も大切なんです。
緊張して震えてしまうのは本当に誰でもよくあることです。
プロでもあります。
でも違うのはその後。
自分はなぜこの場にいるのかを強く意識するのです。
例えば私がステージ上で全身にスポットライトを浴びながら司会をするのは、これから先に出てくる主役を紹介したいから。
今日の主役がいかに魅力的で素晴らしいかを伝えたいから。
そしてお越しいただいた大勢の観客の皆様に楽しいひとときを過ごしてもらいたいから。
だから、観客の皆様にわかりやすく丁寧に。
主役が緊張せず引き立つよう余裕のある笑顔で話をするのです。
そこを強く意識し続けると震えるほどの緊張が、程よい緊張感に変化します。
言葉を変えると、自分自身の今現在の震えるほどの緊張に向き合ってしまうことを「目的」というものを強く考えることで遠ざけます。
5.本番中に緊張と向き合わないこと
あなたが舞台に立つ目的は何ですか?
舞台の上で緊張して震える自分と向き合うことですか?
違いますよね。
緊張するのは当たり前。
震えるのも仕方ないこと。
プロでも緊張して震えることはあります。
違うのは向き合い方です。
環境的・身体的・心理的向き合い方のコツをおさえて、大きな舞台にのぞんでくださいね。
でもこれらをしたからと言って緊張しないわけではないということを忘れないでください。
自信喪失や大きな失敗につながる緊張をせず、終わった時に「気持ちよかった」と思えるような緊張にかえてしまいましょう。
「本番中は緊張したな、震えたな」というのは、本番中に考えるのではなく終わった後で考えましょう。
その時にはスッキリしていますから。
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