第3章-2 (#14) リベンジ合唱コンクール[小説]34年の距離感 - 別離編 -
どの教室からも、合唱コンクールの歌声が響き渡っている。わたしたち7組にとっては、昨年惜しくも準優勝に終わった雪辱のリベンジコンクールだ。
本番まで残り日数が半分を切った。連日の練習で疲れも不満も溜まる頃だ。波長が合わない。声が出ない。リベンジだと意気込んでいたはずの合唱コンクールは、いつのまにかただ歌わされている人たちの集まりになっていた。
指揮者の湯浅とピアノの智奏が顔を見合わせて頷く。もう一回の合図だ。焦っちゃダメだよ。わたしなら、ここで一旦止める。
まとまらないクラスに耐えきれなくなった幸冬が爆発した。
「男子! なんでちゃんと歌ってくれないの? ちゃんと歌ってよ。ねぇ。ちゃんと歌ってよぉ」
幸冬が泣きわめきながら、前列の男子の胸をひとりずつ叩いていく。クラス全員が呆気にとられるなか、幸冬と仲がいい洋雨が止めに入った。
これだから女のヒステリーは! そう言わんばかりに、男子諸君は薄笑いを浮かべている。その瞬間「勝った」と思った。これじゃもう収拾つかないわ。幸冬には、クラスをまとめる力なんてないね。いい気味だよ。そう思うよね? 朔玖も。
朔玖の顔を見た瞬間、さっきまでの勝ち誇った優越感は消え失せ、後悔の念だけが浮かんできた。降りるんじゃなかった。築き上げてきたクラスの絆が、今ボロボロに崩れていく。
月桜が学級委員だったら上手くいったのか? そんな保証はないけど。だけど、子どもみたいに拗ねて、大好きな7組を蔑ろに扱ってしまった。それだけは紛れもない事実だ。
ねぇ。朔玖は今、何を思っている?
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