第2章-2 (#8) 学級委員[小説]34年の距離感 - 別離編 -
藤堂のことは、黒崎に頼んで断ってもらった。あれから藤堂とは一気に気まずくなってしまった。どうしても意識してしまう。藤堂の顔を見るたびに、罪悪感でいっぱいになる。
藤堂のことがあって、今年は学級委員を降りてよかったと、心からほっとしていた。今思うと、ほんとは藤堂のせいにしたかっただけかもしれない。
3年生になると、みんな嫌でも高校受験を意識する。○○委員長や○○部長になると内申書が有利になるんだって。そんな噂を信じて「長」が付く役職をやりたがる輩が出てくる。
くだらねぇ。おまえらにこの重圧が耐えられるのかよ。やれるもんならやってみろよ。こんな役職くれてやるよ。
自習の時間が騒がしければ「学級委員! 何やってる!」隣の教室の先生が怒鳴り込んでくる。朝会で体育館に行くのが遅くなれば、クラスの代表で学級委員が怒られる。体育祭や合唱コンクールだって、実行委員はいるものの、揉め事が起きれば最後は学級委員が尻拭いをさせられる。
避難訓練なんか最悪だ。校庭に並んだクラスメイトを点呼し担任に報告にいく。全校生徒の確認まで何分何秒。タイムの足を引っ張ろうものなら、点呼がもたもたしているからと槍玉にあげられる。
いつだって学級委員は完璧を求められる。
その内申とやらに一番効力を発揮するのが学級委員らしい。担任からは今年も継続するよう何度も声をかけられた。だけど、責任と重圧を押し付けられることに辟易していたわたしは、断固として首を縦には振らなかった。
学級委員に名乗りをあげたのは、心の宿敵である幸冬だった。自分で降りたくせに、妙に幸冬に嫉妬してしまう。肩書きほしさかどうかは知らないけど、幸冬のお手並み拝見ってところだね。
絶対にあの子たちとは同じクラスにはなりたくない。神様というのは意地悪で、そう願う人ほど一緒のクラスにするものなんだね。2年生のクラス替えから、わたしは和乃とも幸冬ともクラスメイトになっていた。同じクラスだと、こういう小さなことがチクチクと胸を刺して苦しかった。