ビザが貰えない②
もうなんだったか忘れたが私達の番号はたしか「D5」とかたしかそんな感じだった。画面には「A3, A4, B2, C1, D2」という感じに並んでいる。以外に早く終わりそうだという期待も儚くD2で止まり、そこから続々とE1だのF1だのよそ者が割り込んで来た。夫は既に一冊読み終えてしまい退屈している。
結局五時間待たされた。本も読み終えスマホのバッテリーも残り寂しい。その間レセピセが貰えず窓口で泣き叫び、警察に取り押さえられている女性を目にし怯んだが私達はこの日のために周到に用意してきたはずである。基本的な戸籍だったり結婚証明書、連名の電気代請求書の他に、夫の一年分の所得証明、一年以上の付き合いがあることを証明するために一緒に旅行した時の飛行機のチケット(幸いにも私はこういった思い出全て取っておく派だった)、更には付き合い始めた当初に生まれた姪と一緒に写っている写真を数枚印刷し、成長の経過で時の長さを感じさせようという目論見もした。そして全ての書類の原本とコピーを持っていかなければならないので余裕でショパンのバラードの楽譜一冊分くらいにはなった。
さて結果から言うと私たちはその楽譜一冊分の書類を抱えたままpréfectureの門を出ることになる。何故か。五時間待たせた末私達を窓口に呼んだ女はまず私のパスポートと滞在許可証を確認した。そして事前に用意していたメールアドレスや住所を書いた申込書のようなものを渡すと「じゃあこのメールにconvocation(◯月◯日に来なさいと書かれた呼出状)送るから。」
で終わった。
「もうすぐ切れちゃうんだけど」「少なくともいつ頃メールが届くかくらい教えて貰えないか」と夫が食い下がるも「皆そうだから」「私にはわからないわ」と使い物にならない返答。そして「その時に持ってきてね」とリストを渡され更に「もう僕達は準備出来てるんだけど」と言うも「今日じゃない」と。待っておめーはなんのために今ここにいて働いてるんですかこのやろー。怒りもしたがそれよりも呆然としてしまった。