方向音痴①
方向音痴(ほうこうおんち)は、方向・方角に関する感覚の劣る人のことをいう。音痴が変化してできた言葉。方向感覚だけでなく空間に対する認識の能力に対しても使うことがある。(wikipedia)
つまり私のことである。どの程度かと言うと、一番よくある例で言うとレストラン等でトイレに入った後、自分の席に戻ろうとして平気で真逆の方向に行く。たまたま入った初めてのレストランならまだ許そう。しかし四歳から通っていた音楽教室でも授業後教室から出るときに毎週「はて?」と、信号もないのにドアのところで突っ立って右左を確認している始末であった。
屋内でもこの有様なのだから、屋外に出たらたまったもんじゃない。ガラケーでやっと位置情報ナビなるものが出始めた時に調度一人でコンサートに赴いたり、ということが多くなった。母は私と真逆で地図などなくても道が分かる私には理解不能な人間なので、私の方向音痴レベルを病的に扱い、「着いていく」、「恥ずかしいからやめてくれ」という一悶着を30分は毎回していた。やめてくれといいつつ「まあどうにかなるさ」と構えられるほど肝も座っていないので最低一時間半前には着く計算で初めての場所にはいつも向かっていた。方向音痴のせいで、母との一悶着も含め既に2時間も無駄にしている。
さあいざ電車に乗って目的地へ向かう。駅構内の案内板を見つける技には無駄に長けているので何度乗り換えがあろうと、わりかしスムーズに進む。困っても駅員がどこかしらにきっといるという安心感もある。新宿東口への出方を取得するのには大学生活の四年間を費やしたが。
さあ問題は出た後である。指定された◯口出口を出てもショッピングセンターの中だったり建物の中だったりすると最悪だ。ナビを見ても、私は呆然と突っ立っているだけのに画面上の現在地を示す丸ポチは不安そうにウヨウヨ動いている。電波が悪く定まらないのだ。「私はここよー」とケータイに教えてあげたいがむしろ教えてもらいたいからケータイを開いていたことに気付く。とりあえず地上に出るしかない。出てみてちょっと進んでナビと逆方向に丸ポチが進んだら逆に行けばいいのだ。これが私のいつものやり方で一時間半余裕を持って出る所以である。