【心の栄養!ノート】映画「MINAMATA」
映画・ドラマというのは、"他の人生"を堂々と垣間見て心を揺さぶることができる、人としての心の栄養だ。
"他の人生"とは、映画の題材となっている人物でもあるし、その映画を作った監督の視点かもしれない、またはその台本を丹精込めて作った脚本家の心かもしれない。映像として起こすために必要な物すべてだ。
そして、映画は観た者の心も、反映するものだ。
ここに紡ぎ出す感想は、そんな心の反映の一つの例えに過ぎません。
映画大好きで映像業界に入った私が、映画館の暗闇の中、メモを走らせて感じ得た感想を綴っていきます。
色んな課題を抱えた映画、
これはハリウッド制作で、しかもジョニー・デップさんだっらから
完成した映画。
そんな感想や意見がありますが、
まさしく同じことを感じました。
タイトル:MINAMATA
邦題:MINAMATA - ミナマタ-
監督:アンドリュー・レヴィタス (アメリカ)
脚本:デヴィッド・K・ケスラー
上映時間:1時間55分
公式ウェブサイト:https://longride.jp/minamata/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9179096/
ログライン/LOGLINE
ジョニー・デップが伝説の写真家の意志を継ぎ、世界に伝える衝撃の真実
(映画配給会社 ロングライド Facebookより)
War photographer W. Eugene Smith travels back to Japan where he documents the devastating effect of mercury poisoning in coastal communities. (IMDbより)
あらすじ
LIFEマガジンに掲載されるほど実力のある戦場カメラマン、ウィリアム・ユージン・スミス(ジョニー・デップ)は、今となってはカメラ機材を売り出してお金を工面しなければいけないほど落ちぶれていた。そこに、日本からユージーンを訪ねにきたアイリーンは、カメラの宣伝をして欲しいと依頼する。しかし、それはただの口実ということを見抜いたユージーンは、「何が目的なのか」と聞くと、アイリーンは衝撃的な写真を見せる。
汚染水によって身体的障害が出ている人達の写真だ。
「これを撮影して世界に見せて欲しい」と哀願するアイリーン。
最初は断るユージーンだったが、自分のキャリアをも掛け日本は熊本へ向かう。目の当たりにするチッソ工場からの汚染水、そこに生きる住民たち、家族の生活のため仕事を変えることができない住民たち、、、ユージーンがカメラに収めたものとは。被写体となった住民たちの行方とは・・・。
(写真元:https://longride.jp/minamata/)
3つの視点でのノート:①映画人として勉強
1つ目は、もちろん映画関係者としての勉強としての視点。
●ユージーンさんの写真は白黒写真。その白黒写真の世界観を、カラーである映像に良く組み込んでる!!
その写真が撮られた背景の息遣いが再現されているかのようで、本当に美しかった。(実際の再現かどうかは定かではないですが、でも、本当にきれい)
●Production Designに日本人がいない:クレジットも最後まで見ていましたが、日本名の美術がいなかった・・・・。それを考えると良くあそこまで「日本」を再現できてる。。。でも、日本が関係しているのに、きっとこだわる事ができたはず!もったいない!
(噂によると、今や世界の真田広之さんが、美術にまでもアドバイスをしていたそうですね。台詞なども指導に入られるそうで、世界の映像内の"日本"をよりリアルにしてくれている人です!)
●出演者の問題:撮影場所は、諸々な条件がありセルビアとモンテネグロだったそう。Day Player(脇役)などは、世界中からアジア人や日本人が呼ばれたそうですが、その中でも子どもたちは、さすがに招集できなかったのか、「アジア人っぽい」子どもたちが使われていた。もったいない!
でも、最大限のキャストだったに違いない。
●ジョニー・デップさん演じるユージーンと、美波さん演じるアイリーンの掛け合いがキュート。怠け者が身にしみているユージーンが、何かと言い訳して動かない時、アイリーンが視線と間だけで訴えかける。その時のユージーンが自分でこしらえている「アイリーンプレッシャー(勝手に名付けました)」にやられている姿が、このシリアスな映画の箸休め的なコミックな存在でホッとします(笑)
(実際、こういった笑いの要素を持った人物、シーン、物の事をComic Reliefと言いますね)
3つの視点でのノート:②熊本人として
私は、実はというか、特段隠している訳ではないですが、熊本出身。
なので、水俣病問題もそうですが、土地としての水俣もとても身近な存在でした(です)。
余談ですが、水俣は湯の児海水浴場という海水が透明でとってもきれいで有名な海水浴場があり、夏になると熊本市内から出かけていました。
それなのに、今もこんなにも苦しんでいる方がいる、そして、ユージーンさんというフォトグラファーの写真によって世界に発信された、という事を知りませんでした。政治的な一面で、この"水俣病問題"は解決とされているそうなので、公に謳われていない、教科書にも掲載されていないのかもしれません。
これは、日本人ではない、ジョニー・デップさんだからこそ出来た企画だと感じます。それは、次の3つ目のノートに続きます。
3つの視点でのノート:③現代人として
映画の最後に流れるエンドクレジットにて、
世界中で被害が出ている工業汚染の写真が映し出されます。
この映画は、ミナマタについて描かれた作品ですが、その裏側のメッセージとして、世界中に「今も」広がる環境汚染について言及している事がここで表現されていました。
実際に、監督のアンドリュー・レヴィタス氏が、Vogueのインタビューで、
半世紀も前の事実を単に“振り返る”のではなく、今の時代につなげるという使命感を感じましたし、その延長で正義感も芽生えました。
(VOGUE:「アンドリュー・レヴィタスに問うクリエイティブの可能性。」より)
と答えられています。
(このVOGUEのインタビュー、めちゃくちゃ素晴らしい事をお話されているので、ぜひ一読されてください!)
この世界では、ニュースに取り上げられない、SNS上に流れて来ない問題が起きている。しかも、それは私達にも間接的にも関係のあること、だと訴えているのです。もう心に響きました。
私達が優先順位を付けて選んできた「便利」「早い」「安い」などの裏側では、この地球の限りある財産である自然を破壊してきたのだ、という目を逸したくなるような事実が突きつけられたのです。
毎日の行動が地球の環境破壊に繋がり、人間に返ってくる。
そんなメッセージを受け取りました。
こんなシリアスな映画ですが、
映像が本当に本当ーーーーーに美しいので、片時も目を離さず観て欲しいです。
公開情報
劇場公開:公式ウェブサイトにて
配信: U-NEXT