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私達はどんな世界に生きているのか。#NoteDay7

2019年秋、フランス・リヨンにあるemlyon business schoolで授業を受けていた。授業の中にsystem thinking and sustainabilityというテーマがあり、最近ふと思い出したので、少し共有してみようと思う。

この授業では、システム思考を用いて、サステイナビリティを考えるというテーマを学生に問うことを中心としていた。

システム思考とは、全体のシステムを構成する要素間のつながりと相互作用に注目し、その全体の振る舞いに洞察を与える思考で、この授業は、世の中をシステムとして捉え、システム、情報、制御を通して、課題解決にどう繋げていくのかを考える試みだった。

この授業では、オンラインでのシュミレーションを用いることも多く『フィッシングゲーム』という仮想ゲームがあった。

そのゲームでは、チームを作って、オンライン上で船を買い、停泊させるか、海に出すかして、魚を獲って売る。そして、たまに船をオークションで売り買いする。常に収入、資産、支出や、各チームの結果が見える。

同じ海で数チームが一斉に魚を撮っていると、最初はうまい具合にたくさん獲れて、儲かっていたのに「もっといくぞー!」と調子に乗ってどんどん船を足していくと、ある時から急に、魚が獲れなくなる。船の維持費でお金がどんどん減っていく。船も売りたくても、誰も買いたくないので売れなくなるのだ...

気づけば、魚の再生産のスピードを超えて、全てチームのボートで、ひとつの海の資源の限界に達するまで漁獲。

最終的には、ほぼ全てのチームがマイナスの結果になり、最初は勢いよくキャッキャ喜んでいた学生たちも、皆呆然として静かにゲームが終わってしまったというもの。


私は、システム思考を初めてここで学んだのだが、もうひとつ印象的な授業があった。

ある日、教室に行くと「あなたは今日からIndiaチームね」と、紙を渡されて、初めて話すクラスメートとIndiaチームになる。

教室の中には、US、Europe, Other developed, China, India, Other developingの地域にランダムに振り分けられたクラスメートたちが戸惑いながら着席していた。

クラス自体は、英語で実施され、学生のバックグラウンドも数十カ国ぐらいいたのだが、皆、自分の出身国とは違うエリアに振り分けられていた。

「今から、Co2の排出量に関して、それぞれの国の戦略を立てててもらいます。このまま、Business as usualでいくと、2100年には、全世界の気温が+4.2℃上昇する想定です。Co2排出削減努力に取り組みを開始する時期、ピークとなる時期、年間の削減率、植林などの、具体的な目標値を各国チーム内で話し合ってください」と言われ、
私達は、チームの仲間と話し合いの時間を持った。その時点で、他チームの方針は不明であるため、チーム内での議論となった。


途中で、学生の中からジャーナリスト役、環境活動家役、ロビイスト役などがボランティアで立候補し、この三者は、チームの話し合いを訪問し、それぞれの立場からの見解を述べたり、ジャーナリスト役は、チームの発言をTwitterに投稿して、前の画面で見えるようにした。

煽るような投稿や、活動家のスピーチが視界の中にちらつく中、それぞれのチームは、自国の成長と削減目標の数値を算出。

世界の深刻な状況もわかるが、国としての成長も追求するには、少し年月が必要だ。私達のチームは、そう話し合って、目標値を設定した。

「では、各国の代表に、それぞれの考え方と目標値を話してもらいます」

先生がそう言って、それぞれの国が出した目標値をシュミレーションソフトに打ち込んでいく。

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どこかが頑張ってくれるだろうと思っていたのか、どこのチームも、自国の利益や成長を重視した上で、削減目標に小さな貢献しているという状況で、その結果、2100年の上昇温度は+3.2℃だった。
正直、皆が削減に取り組んだにもかかわらず、思ったよりも、小さなインパクトだった。

「次に、それぞれの地域同士で、話し合って条件を交渉してください」

その指示が出ると、態度でかめなUS役の代表者が私達のチームのもとへ来て「Indiaがもっと頑張ってくれなきゃ困るんだよ」と強めの注文がきた。

「でも私達も、今成長をストップさせられない。もう少し後で..」
そんな交渉が各国間で繰り広げられた。

そして交渉後も決して、数字は大きく下がらなかった。

色々とシミュレーションをし直して、2100年に上昇温度+2℃で留めるには、それぞれが協調して、早い段階で削減に取り組み、ピークを早めに持ってくるように取り組まねばならず、技術イノベーションも必要だということだった。

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あくまでこの授業はシミュレーションであり、詳細の施策や実現可能性を議論したのではないものの、各国の協調なしには達成しえないということを突きつけられた学生たち。理想はそうだけれど、少し「無謀じゃないか?」というざわめきが起きた。


私たちはそんな世界に生きている。


今は、コロナの影響で、世界中がステイホームとなり、
少しこの授業のことを思い出した。

本当に必要なもの、足元の暮らしや、これから生きる環境を見つめ直す時にいる。そして、同時に世界のことにも、もっと目を向けている。

私たちは、これからどんな世界に生きるのだろか。

🙏




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