「海砂糖」#シロクマ文芸部
『海砂糖』一欠片からお売りします(^^)
海が見える小高い丘に住むあたし、渚。女系家族のこの家に生まれた娘は代々、海水から砂糖をつくる秘術を受け継ぐことが習わしとなっています。
えっ?海水から砂糖がつくれるのかって!?まあ、秘術ですからねぇ。詳しくは教えられないけれど、優しいPale Blueの色をしたこの砂糖は、ピュアなウェディングのシーンには欠かせないもので、永遠の愛を誓う結婚式のウェディングケーキをつくるために、世界中から注文が絶えません。
純粋さ、清楚さ、そんな愛くるしい雰囲気を醸し出すPale Blueの海砂糖
もちろん、ウェディングケーキでなくって、バレンタインのお菓子をつくる時に使ってもオッケーです。
大切な人に大切な想いを伝える。そんな時に欠かせないのが、この『海砂糖』なんです。
「お母さん、今日はあたしの13歳の誕生日。とうとう、海砂糖の作り方を教えてもらえるのね」
「渚、お誕生日おめでとう!まだまだ子供でおっちょこちょいの渚もとうとう13歳かあ。さあ、お父さんと海に行って、朝日が射して金色に光る海水を取っておいで」
「了解!お父さん、行こう!」
朝日が昇る前に砂浜に着いて、今日を照らす最初の朝日が射した海水を取ってくるんだ。
渚の右手は、もたつくお父さんの手を優しく握り、左手は、この日のために買っておいた黄色いバケツをつかんで、まだ薄暗い小道を足早に歩きました。足元には愛猫のマールがじゃれています。
「マール!じゃれたら、転けて危ないよ~」
砂浜に着くと、渚は朝日が昇るのを待って、キラキラと光る海水をバケツに汲みました。
「お父さん、溢さないでよ~」
「おいおい、こんだけ汲んどいて、無茶言わんといてや~」
バケツが揺れると、バケツのなかに掬い取られた朝日がキラキラと光ります。
「お母さん、取ってきたよ~」
「じゃあ、海砂糖の作り方を教えるからね。みて、聴いて、感じて、覚えてね、渚」
「できた~!あれ?でもお母さん、色がPale Blueと違うよ」
「うふふ、渚。優しいPale Blue色の海砂糖が作れるようになるには、あなたがほんとうの優しさを知ることが必要なの」
「ほんとうの優しさ?あたしは、お父さんとお母さんから優しさを学んだよ」
「そう、あなたは人から与えられた優しさを知っている。今度はあなたが人に優しさを、愛を与えて、愛情の連鎖をつくることができたとき、ほんとうの優しさを知ることができるのよ」
「与える優しさ、与える愛、愛情の連鎖か。
お母さん、あたしにはまだまだ知らなくてはいけないことがたくさんあるのね!」
「渚。13歳のお誕生日。今日が旅立の日よ。あなたにとっての優しいPale Blueを見つけてらっしゃい。そのとき、初めて海砂糖を作ることができるわ」
なんか、昔のアニメ映画に似たような話しがあったなあ。まっ、いいか。
お母さんの作ってくれたPale Blueの海砂糖をペンダントに入れて、自分らしい色、自分のPale Blueを探して、渚は愛猫マールと旅立ちました。
えっ?空飛ぶ箒?まさか、ちゃんと二足歩行ですよ。
小牧さん、今回も素敵なお題をありがとうございます!