「銀河売り」#シロクマ文芸部
『銀河売り切れました』
「なぬ~、今日、発売予定の銀河、もう売り切れちゃったのー!!今度こそは銀河を手にいれて、あたしたちだけの地球を見つけようと思ったのに~」
「まあまあ、夏奈。落ち着けって!次こそ、俺たちの地球を手にいれよう、なっ!」
「陽輝、約束よ!」
西暦2050年、人類は地球を飛び出して、月や火星に住むようになりました。
あたし(夏奈で~す)のおばあちゃんがアラ還だったころ、"生成AI"が爆発的に流行して、デジタルに疎いおばあちゃんは置いてけぼりだったようですが、大人も子どもも生成AIにハマり、便利と不便の嵐が吹き荒れたと聞きました。
でも、そんな人間たちのドタバタ騒動を救ったのは生成AIでした。生成AI自らが人類とのつきあい方のルールを決め、共生の道を提示してきたのです。
生成AIとタッグを組んだ人類は、うまいこと生成AIの敷いた平和路線に乗っかり、戦争も扮装もやめて、目を宇宙に向けました。
あたしたちの地球を含む太陽系は、「天の川銀河」または「銀河系」と呼ばれる、巨大な円盤状の銀河の中にあるそうです。そして、なんと銀河は2兆個もあるらしいんです。
たまるか!
小さな、この地球上でチマチマと争うのではなく、2兆個もある銀河に人間を分散する、そうすればこの青く、美しい地球の生態系が保たれる、というのが生成AIの意見でした。
そのためには、もっと!もっと!と際限ない欲望を満たそうとする人間、非人道的に争うことが好きな人間を、散り散りに分散させることが最善の策だ、というのです。
「人間の叡智と生成AIの頭脳、お互いに力を合わせて、銀河に人を送りましょう」
今では、定期的に『銀河売ります』の募集がかかり、大勢の人が応募しています。何と!当選した銀河まで行くロケットも、お世話をしてくれるロボットも無料で支給されます。
条件はただ1つ。当選した銀河に、あるかもしれない自分たちの地球は自分たちで探す、ということです。
まさに賭けです。あるかもしれないし、無いかもしれません。いや、あるかもしれない、でも、自分たちの寿命が尽きる前に見つけられるという保証はありません。
あるのはロマンだけです。
「夏奈、覚悟はいい?」
「もちろん!陽輝」
「とっびきりの銀河を手にいれて、僕たちの美しい地球を見つけよう」
「素敵!あたしたち、新しい地球のアダムとイブになるのね」
ガラガラガラ、ポテン
「大当たり~~~」
今回は少し難しかったけれど、楽しくやらせていただきました。ありがとうございます!