はじめて買ったCD
今ではたくさんのCDを持っているのに、はじめて買ったCDと限定されると、はて?。
誰のなんというCDを買ったのか、邦楽?洋楽?、それとも、クラシックだった?そのCDを手にした時の感覚すら思い出せない。
ところが、はじめて買ったレコードのことは鮮明に覚えている。小学生だった私はお小遣いを貯めて、両親とレコード店に行ってお目当てのレコードを買った。
家に戻ると、テレビの音に邪魔されない茶の間から離れた表の間で、ひとりでレコード盤に針を置いた。
流れてきたのは、小学生にはちょっと渋めな曲、ちあきなおみの「喝采」だった。
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両親とは不仲だけれど、小学生の自分が家を出て自立するには、飛び越えないといけないハードルがいくつもあった。
それよりも、子どもとして親に面倒をみてもらい、本当の意味での自立ができるまでは「我慢しよう!」。子どもの"ふり"をして、ずる賢く生きる方を選んだ。
そんな時、なんとも大人の雰囲気を醸し出した、ちあきなおみの「喝采」に出会った。
自分を引き止める相手を振りほどいて、自分の生き方を貫く私。スポットライトを浴びて恋の歌うたう私と黒いふちどりがついた報せと。
黒い縁取り?亡くなったの?
陽と陰、表と裏、生と死、、この対局にあるものが、一枚のレコードとなって、小学生の私の心を揺さぶっている。レコードって、凄いなあ。
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最近はめっきり音楽を聞かなくなった。いや、わざわざレコードやCDを買いに行って、ドキドキしながら自宅に持ち帰り、聞く。
買ってから聞くまでのあのタイムラグが、音楽への期待感を否が応でも高めてくれた。でも、今ではいろんな手段で、容易に音楽を手にすることができるようになった。
便利だけれど、なんか味気ない。発酵不十分な味噌とか納豆みたい。やはり、音楽も人も人生も、「寝かせる」と旨味が出る。
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ここまで書いても、やはりはじめて買ったCDは思い出せない。どんだけ無意識に買ったことやら。