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悪ふざけもほどほどに
「えー!何やってるんですか!」
病棟では大声は厳禁ですが、たまらず大声をあげてしまいました。なんやかやとやらかす白さん、今度は患者さんに鬘を被せ、化粧をしているではありませんか。しかも男性。
そして、あろうことか、緩和ケア病棟の医師までいるではないですか。外来が暇で上がってきたらしく、白さんのおふざけを叱るでもなく、一緒に楽しんでいます。
「先生まで一緒になって、何をやってんですかー!男の○○さんに鬘までかぶせて~」
いや、男性が鬘をかぶってはいけないと言う訳ではありません。男女平等です。
でも、ベルサイユの薔薇に出てくるオスカルみたいな金髪が、80歳過ぎの男性の白髪頭にのっているではありませんか。しかも顔には化粧が施されています。
ここまでやられると、怒るより、腹を括って笑って降参、同罪になるしかありません。
もう!好きにしいや~。日曜日だから師長もおらんし、どうにかなるさ~。それに先生もおるし~(心の声です)。
賑やかな声に誘われて、患者さんがホールにやって来ます。金髪の彼がおどけた顔をするもんだから、みんな大爆笑です。
ノリのいい女性の患者さんが自分の化粧品を持ってきます。「もう、死んだときに化粧をするくらいしか、使うこともないき~」
化粧には疎いあたしでも知っている、高級な化粧品を金髪の彼の顔に塗っています。
長期にわたる入院生活、紫外線からも守られているので色白のきれいな肌の彼、化粧映えしています。
「あたしもやりたい~」
「わしも~」
高齢の患者さんの要望に、いそいそと応じる白さんと先生の悪戯2人組。でも、いちばんはりきっていたのは、化粧品を提供した女性でした。手際よく化粧をしていきます。
しゃあないなあ~、やりますか。
派手な鬘と化粧の患者さんたちと一緒に記念撮影です。仕事せずに何をやってんのー!と言われそうですが、真剣に遊ぶのも仕事だと思いました。
ここで止めれば良かったのですが、お節介な先生が写真をプリントアウトして患者さんの部屋に飾ってくれていました。
翌月曜日、その証拠写真とともに師長に呼び出され、看護師も先生も注意を受けました。もちろん、あたしも。師長命令で患者さんのご家族に謝罪することとなりました。
でも、先生に気を使ったのか、いや、やはりお祭り好きな県民性ですね。誰もが大笑いをして許してくれました。
金髪の鬘を被って、化粧して、満面の笑みの写真、それらは亡くなるまで部屋に飾られていて、どの家族もありがたくお持ち帰りしてくださいました。
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男郎花化粧めんこし女郎花