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余白のアートフェア福島広野 会場割り振りの覚え書き その2
1階端から順にご紹介していくのも面白くないので、その2では2階のご紹介をします。
階段はぶら下げる作品
Marta Wyszyńska
階段に展示されていたこちらの作品。
こちらはポーランドのMarta Wyszyńskaの作品です。
本来はプロジェクタでビデオも投影して完成なのですが、ビデオは省略可とのことでしたので、階段で展示させていただきました。
今回、このスタイルのインスタレーションは女湯で展示したLieu LeとMartaの2作品でしたが、Martaの作品はもうここ以外に無い(他に現実的選択肢が無い)という形で階段での展開でした。
2008 ポズナン美術アカデミー(ポーランド):舞台デザイン学士号
2008/2009 ブルターニュのレンヌ第2大学(フランス)/エラスムス
2010 ポズナン美術アカデミー(ポーランド):舞台デザイン修士号、夏学期
2013 ポズナン社会科学大学(ポーランド):大学院課程、文化マネージャー
2019 ポズナン芸術大学(ポーランド):舞台デザイン博士号
幅広い理解に基づく舞台デザインを扱い、プリント、布地、3D グラフィックス、光を使用した芸術的なインスタレーションを制作しています。
3D グラフィックス、投影、ロボット工学、現実の世界の相互浸透に興味があります。
彼女のアートプロジェクトでは、感情や我々自身が人生で果たす役割、そして私たちの個性を形成する記憶や経験を表現する試みについて取り上げています。
とはいえ、この螺旋を描いて光の中を降りてくる構成もなかなか良かったのではないでしょうか。Martaも画像を送ったら喜んでいましたし。
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合宿の宿2階右奥には反復をキーワードにした部屋
2階の右奥、図面Sの部屋ははたぎりまどねさんと柴田直樹さんを配置しました。
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「はたぎりまどね」はワンタイム使い捨ての名前らしい
はたぎりまどねさんは、普段は小山翔平として活動しているアーティストです。ちなみに「はたぎりまどね」は今回限りかもとのこと。次はまたワンタイムの名前で・・・ってある意味すごい。
ゾンビ映画を観ていたときに、ゾンビをロメロの発明品とするならば、絵画でのドミンゲスのデカルコマニー、エルンストのフロッタージュにグラッタージュ、ポロックのドリッピングのように、誰でもできるけど誰もやったことのない作画方法ってまだあるのでは?と思った。
誰でもできるというのはどういうことかというと多くの人間が数を数えることができる。
理論上は1から無限に数えることができる。でも多くの人が10000まで数えたことがないはずだ。そういうことで誰でもできるけどやったことがない場合、やってみたらどうなるのか?というのが制作のきっかけである。
それと、点描で制作する場合多くが具象物を描くが抽象を描いたらどう表現できるか?
また、今までは限界まで線を重ねて制作していたが、限界まで線を重ねた後マスキングしてベタ塗りをして新たに平面を作ればまた線が置けることに気づき、「無限性」をサブテーマに制作している。
今回はこの3作品でした。
はたぎりまどねさんの作画技法はとてつもなく手間がかかるもので、木の板の上に油彩を置いてひたすらナイフで細かくパターンを刻んでいくというもの。
作品価格は大きめですが、手間を考えるとこれでも時間単価は爆安であろうとおっしゃってました。
あとですね、どの作品も自分の作品の進化の過程の一部なので、本当は1枚も売りたくないそうです。そんなこと言われると買っちゃいそうになりますよね。
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柴田直樹さんは存在論的な波を描く
はたぎりまどねさんと同じ部屋には柴田直樹さんも作品を展示していました。実は二人とも京都造形芸術大学(今は京都芸術大学)のご出身だったそうですが、私は知りませんでした。あ、もちろん資料を見ればわかったと思いますが、ご存知のように余白のアートフェアは大学名をほとんど気にしない運営ですから・・・・(そういえばディレクターの山崎晴太郎も京都造形芸術大学大学院卒です)。
さて、柴田さんは宿泊所となったハタゴイン福島広野でも素粒子論について熱弁を振るうくらい波が好きな方です。
1994年に石川県金沢市に生まれる。2018年に京都芸術大学(旧 京都造形芸術大学)ペインティング領域(日本画)を修了。2021年より株式会社Sandwichに従事する。現在は京都を拠点に活動中。
私は幼少の頃より、何故自分がここに在るのか、何故世界が在るのかということをぼんやりと考え続けています。そして仏教、宇宙科学、量子物理学、生物化学に影響を受け、世界の不確かさ、曖昧さに気付きました。物質、生物や国と呼ばれるものまで、あらゆる全ては出来事によって構成されており出来事の連続体なのではないか、と。私はこの曖昧に漂う自身を含めた世界そのものに関心があり、“存在について”を主題として制作を行なっています。
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余白のアートフェアでももちろん波を描いた作品群を展示。
どれも素晴らしい作品なんですが、特に"landscape#13"は人気でしたね。これ、どの辺を上にしても良い作品だそうで、また置き方によってまったく違うものに見えてきます。海であったり木であったりね。
それと、たしかセイタロウデザインチームが気づいたらしいんですが、目線の高さを合わせると照明が海の上の空に映り込んで朧月夜になるらしいんですよ。絵が。それくらい画面が滑らかに仕上げられているんですね。
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どれも無彩色なんで、どんな部屋にも合うと思います。
画面のサイズを考えてもお買い得!
反復パターンは現代アートでは非常に多く用いられる手法で、草間彌生の水玉もまさにそれですよね。アンディ・ウォーホルもマリリン・モンローをいっぱい並べたし、村上隆の花も反復。ベルント&ヒラ・ベッヒャーのタイポロジーも反復です。そういった意味では、はたぎりまどねさんも柴田直樹さんも基本の部分はある意味「王道」ですが、はたぎりまどねさんの圧倒的な工数の暴力、柴田直樹さんの最新の自然科学と仏教思想の因縁をクロスオーバーさせた波の絵、どちらも現代アートとして素晴らしい説得力があると思います。
とくにはたぎりまどねさんは1枚も売りたくないという人ですから、ここで是非・・・・