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余白のアートフェア福島広野 会場割り振りの覚え書き その4(2階右奥、南側の2部屋)


 さて、はたぎりまどねさんと柴田直樹さんの部屋の向かいにあったのはこの画像。音無響子さんとセーラームーンのフィギュア。これは一体???


Imaginativeで組んだ部屋

 この奥の部屋は竹腰隼人さんと曽根絵里子さんが配置されていました。

配置案より。最終的にはこれとは変わっています。

 もともとはここは竹腰隼人さんと小山ひときさんのお二人を配置していました。その時のキーワードはもちろん「写真」です。お二人はご自宅も比較的近くて以前から交流がありましたし、プリントのプロセスがどちらもワン・アンド・オンリーのアーティストですから、切り口としては「とんでもねえプリント技術」で考えていたのです。

 その隣に青山紗えさんと吉乃モカさん、そして曽根絵里子さんも最初はこちらを考えていました。こちらのキーワードは「ファンタジー」です。

 ですが、青山さんと吉乃さんの作風がどちらかというとガーリーでポップなのに対して曽根さんの作風はもう少し年齢層が上ということで、作品が喧嘩してしまうかもしれないという懸念があり、まず小山さんを2階左奥の鳥本さんの部屋に移すことにしました。ここでのキーワードは「記憶」です。鳥本さんも小山さんもアーティストステートメントで家族についての記憶を表現の核としておられると書いていたからです。

 そのうえで、竹腰さんに曽根さんとの二人部屋は可能ですかとお伺いしたところ、快諾いただきましたので、曽根さんを竹腰さんの部屋に移しました。

 こちらのキーワードはimaginative(想像力に富む)です。

 アーティストとしての曽根さんの表現の核にあるのは、児童文学や幻想文学の中に現れる想像力豊かな言葉、そしてラノベより前の時代の挿絵だと私は理解していました。そういう意味ではミルヨウコさんとの部屋でも良かったのですが、今回ミルヨウコさんは写楽や歌麿の浮世絵のオマージュのシリーズが中心だったのでちょっと合わない。

 さあどうしよう、という時に思いついたのが、竹腰さんです。
 
 竹腰さんの作品には日本画のような仕上げのシリーズと、スタジオジブリ作品の背景のような森のシリーズがあります。後者を中心で組んでもらったら曽根さんとも合うのではないか。

 まあ、結果として竹腰さんはそっちのシリーズを1枚も持ってこなかったわけですが・・・


「絵本」の世界へ

 さて、そうなると青山紗えさんと吉乃モカさんの部屋は、特に青山さんが新しく少女の絵のシリーズを始めてこれを持ってくると宣言されたことで、雰囲気がかなりはっきりと決まってきました。

 曽根さんが児童文学とするなら、こちらは「絵本」のような作風です。

 となると、ポップなオリジナルキャラの「ポセミン」を描き続けておられる松本さんにもここに入ってもらえば、かなり統一感が出るのではないか。

 誤解してほしくないのは、青山さん、吉乃さん、松本さんの絵が子供向けと言っているわけではないということです。実際には松本さんはかなりコンセプチュアルな画家ですし

私は「腐る喜び」をテーマに作品の制作を行っております。一般的に「腐る」という言葉にはネガティブな印象があるかと思いますが、私にとっては、とても神秘的で、魅力的な現象です。そう感じ始めたのは、以前私が自ら耕している畑を通して物理的な「腐る」を経験したことと、過去の辛い出来事から精神的な「腐る」を体験したことがきっかけでした。「腐る事」はいつでも、どんな形でも「次の何かに生まれ変わるための準備」としての役割を担っているのだと私は感じました。循環を感じられるのは、とても幸運なことです。だから私は、自分の作品を通して、鑑賞した人が身の回りに起こる循環に気づく助けになるような作品を制作しています。私は「ポセミン」というキャラクターを13年前から描き続けています。それは私の心が腐った時に描き始めた生き物で、ある種自分の生まれ変わりです。ポセミンはいつも循環と共にあり、私の思想を体現してくれます。

松本悠以アーティスト・ステートメント

 青山さんも抽象画のシリーズがあります。

 吉乃さんもしっかりした思想があって、あの画風なのです。

無邪気な気持ちをテーマに制作しています。私は10年ほど絵を描く事を離れた期間がありましたが、人生において何に情熱を持っていたのか思い返した時、私にとっては絵を描いていた時だった事に気付き、4年前からまた絵を描き始める事にしました。
作品には折り紙やカラフルな色彩など子どもの時に純粋に好きだったものを作品に取り入れています。また、本能のままに生きる動物達を描く事で、無邪気な気持ちを忘れないようにという願いを込めています。
現代社会において、生活の中でもある程度妥協を必要とする為本心を犠牲にする事があります。それは円滑に物事を進めていく為に必要な要素ではありますが、本心(即ち無邪気さから選ぶ物事)を置いてきぼりにすることは時に人生を空虚なものにしてしまう恐れがあるのでないかと思います
そんな無邪気さを肯定とする事で心の豊かさが社会の豊かさへ繋がっていくことを問いかけています。

吉乃モカ アーティスト・ステートメント

 実は個人的には、今回の「余白のアートフェア」で最も尖っていた一角がこの二部屋だったと思っています。だって、他の現代アートイベントでこんなカラフルでキュートなラインナップって無いでしょ? 廊下に響子さんやセーラームーンですよ? それでお隣にはまるで絵本のような世界。

 これが現代アートなの?

 現代アートですよ。決まってるじゃないですか。吉乃さんも松本さんも現代アートの公募に応募して堂々と勝ち上がってきた人たちなんですからね。曽根さんの原型師としての作品も、それらが廊下にあったことでイマジナティブ部屋の中の作品たちとの違いと共通点の両方を知ることが出来ました。 

 他がやらないからこそ、やる意味がある。

 ここを見てつまらないとか幼稚とか言う人のことは信じるな。

 そんな思いを込めての配置でした。

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