9/27: 今週の辺境の心境
10/1は中秋節だ。なお、月曜午前までは先週内であるという解釈である(解説がnote記事にしては長くなったという言い訳だ)。
今週の大賞:关于反派影评被新京报李世聪举报的说明。
新京報の記者が某監督の取材を巡って上司と揉めて、相当ひどい扱いで「自主」退職を迫られた経緯を記した記事が一部で話題になったので、今週はそれ。記者は(文中ではっきり書かれてはいないが)今年の春節に映画館公開される予定がコロナの影響もあって急遽バイトダンスに買い取られ、傘下の動画サイトなどで無料公開された映画「囧妈」について記事にしようとしていた(ちなみに今日は本文に書かれていない背景説明を色々加えているので記事が長くなり普通に辺境通信記事と同じようになってしまっている)。
この映画のバイトダンス系での無料公開は一般的には大変ポジティブに評価されていると思う。本来なら公開不能になってしまう予定だった映画を救った形になるからだ。
しかし中国速度での公開はまた中国速度によって誰かがきちんとしたケア抜きに煮え湯を飲まされているということの裏返しでもある。当時でも話題作をいきなり持って行かれた映画館が怒っていたのは記憶している。「ただでさえネット動画に押されて劇場の客足が落ちているのに」という彼らなりの事情もわからないではないが、公開自体にほぼ無理と思われていた当時の状況から若干無理な抗議ではと思っていた。
でもどうやら話はそれだけではなく、他の関連記事(たとえばこれ)を読むと制作サイドが出資者である映画館チェーンに多額の最低売上保証契約と引き換えに事前の支払い(こちらも巨額)を求めていたりと色々火種になりそうな金の絡む事情があった模様。
この記者は半年かけて「囧妈」の監督である徐峥に単独インタビューを取り付け、それを記事にしようとしたところ圧力がかかって勝手に監督側の要求に応じて色々記事をいじられて最終的に自分の署名を放棄(ちなみにこれも明示されていないがおそらくその勝手にいじられた記事は多分これ)、豆瓣でその内幕を書いたところ、よりにもよって自分の上司から「これは映画批評ではなく暴露だ」として通報されて削除され、結局自分の公众号で再度暴露して話題になった上に「お前辞めろ」…ということになったらしい。
これが単なる「映画がネット公開になっちゃった」というだけにとどまらず様々なところ・人・カネに波及する可能性が高い以上、正直なところいくら調査報道が(少なくとも過去においては)売りの新京报でも様々な「事情」を斟酌して書かなければならない、場合によって書かない方が賢いことが出てくるのはある程度仕方ないとは思う。この記者がその調整能力に長けていなかったのかもしれない、とも。とはいえそれが原因で圧力がかかって辞めさせられるというのはやりすぎであるとも思う。「適度」という言葉に疎く、アクセルを踏むと決めたら踏み切るしかない中国らしさに溢れたエピソードといえば、その通り。
实战采访中,保安拦你怎么破?
每个保安都是浑然天成的大哲学家,每天,他们都在反复追问着3个终极哲学问题——“你是谁?”“你从哪里来?”“你要到哪里去?”
から始まる記者向けのセキュリティのいなしかた(別に上の記事の記者にこういった融通無碍さが足りなかったと言いたいわけではないのだが)。「90%の保安はタバコを吸うのであげれば通れる、ダメなら水でも買って来い、それでもだめならお前がダメってことだ…保安ひとり落とせずにどうして取材対象を落とせる?」だそうです。
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