【虚淵玄原案】ロボットアニメ「OBSOLETE」の紹介
1.話題性と世界観
2019/12/3(火)から Youtube Premiumでリアルロボットアニメ「OBSOLETE」が配信されています。「魔法少女まどか☆マギカ」や「Fate/Zero」、「アルドノア・ゼロ」等の話題作を世に出した「虚淵玄」さんが原案・シリーズ構成を手がけているため、世間の注目度も高い作品だと思います。
公式サイトでは、「OBSOLETE」の世界観を以下のように説明しています。人類が異星人との交流で新技術である「エグゾフレーム」を手に入れ、その普及を通じて、世界が変容していく様を描くようです。
2014年、突如現れた異星人は、人類に対して「交易」を要求。彼らが石灰岩の対価として地球にもたらしたのは、意識制禦型汎用ロボット「エグゾフレーム」だった。
戦闘機よりも戦車よりも銃よりも安価で、誰でも簡単に乗りこなすことができる「エグゾフレーム」は、またたくまに拡散し、世界を変えていくーー。
2.視聴方法
2019/12/15(日)時点で、第6話まで配信されています。但し、Youtubeの無料会員は、第2話までしかフルーバージョンで視聴できず、6話まで観るにはYoutube Premiumに登録する必要があります。
幸いYoutube Premiumに登録済だったので全話を一気に見ました。一定期間経過後に順次、無料視聴が可能になるシステムのようなので、その時を気長に待つという選択肢もあると思います。
3.見所
(1)先進国VS発展途上国
異星人ペドラーがもたらした新技術「エグゾフレーム」は、普及度は先進国と発展途上国で異なります。先進国が既存の既得権益を保護するため、「エグゾフレーム」の導入に消極的な一方で、発展途上国はエグゾフレーム1機を石灰岩1,000kg(とあるサイトでは15万円程度)で手に入れられるため、産業機械等の代わりに積極的に活用しているシーンがあります。
歴史的にも新技術の登場が社会階層や国家間の力関係を変える例は多いと思います。蒸気機関に端を発する産業資本家の登場や火縄銃により練度の低い兵士も戦場に行けるなどがあります。OBSOLETEでは、その役割を「エグゾフレーム」が果たす可能性があり、安定した関係性が崩れていく過程で、安定を守りたい側と崩す側の対立が見所だと思います。
この両者の新技術導入に関する積極性の違いは、経済学の「置換効果」で説明できると思います。先進国は元々、生産性が高く、既存技術で高い利潤を得ているため、新技術の導入によって“追加的”に得られる利潤はさほど大きく無い可能性があります。一方で、発展途上国は生産性が低く、さほど利潤を得られていないため、新技術の導入で“追加的”に得られる利潤は大きくなります。新技術の活用による“追加的”な利潤の大きさが異なるため、先進国と発展途上国では「エグゾフレーム」に対する姿勢が異なるというのは世界観を説得的に説明できるロジックかもしれません。
ただ、経済学的には寧ろ先進国の方が「エグゾフレーム」の導入に積極的であるはずだという主張も可能だと思います。そうした主張のポイントは「独占利益の確保」です。ミクロ経済学の考え方では、市場における企業の多寡によって、企業が得る利潤の大きさが異なるというものがあります。仮に同じ市場の大きさ(専門用語では需要曲線)で、同じ製品・サービスを販売する場合、企業が1社のみで価格設定が可能であれば、企業は自社利潤を最大化できる価格をつけます(独占市場下の企業行動)。一方で、企業が無数に存在し、自社の供給量が市場全体に与える影響が小さく、市場価格を所与として行動すると利潤を得られないという結論になります(完全競争下の企業行動)。独占市場で活動していた企業は競争相手が増えて利潤が低下することを防ぐために、競争相手の出現を防ぐような行動を取るインセンティブがあります。
「OBSOLETE」の世界でも先進国は、恐らく自動車や産業用機械が主要産業であるため、それらの製品の代替品となる「エグゾフレーム」が普及することで独占的な市場を失うことは望ましくないと考えるはずです。幸い(?)「エグゾフレーム」は固定レートの石灰石1,000kg(15万円程度)なので、先進国やグローバル企業が独占的に買取り、市場への流通を防ごうとする可能性があります。
また、「エグゾフレーム」が生産要素を大きく低下させる工程革新の一種と捉えると、人件費が割高な先進国の方が老若男女を問わず、同一の仕事を可能にするエグゾフレームの導入に積極的になる気もします。この辺りは設定に違和感を感じさせる点です。
(2)既存兵器VSエグゾフレーム
作中の紛争地域では、「エグゾフレーム」を戦争目的で利用する勢力が現れています。「エグゾフレーム」は、人の意識で制御できるため、熟練者になると従来の兵器(戦車や戦闘機)と異なり、人間と同様の動きを意のままに扱えるようになっています。人型で2.5mという大きさから建物内に侵入したり、ビルの屋上や森の中の移動も可能になっています。
巨大な勢力として既存の安定を守る者(先進国やグルーバル企業)に対して、物量面で圧倒的に劣っている安定を崩す者たちはゲリラ的な戦いやテロ行為しか手立てがありません。そのため、安定を守る側は戦車や戦闘機等の現実兵器を使う一方で、安定を崩す側は「エグゾフレーム」の多様な場面で安定的に高い機動性を発揮してくれるという特性を最大限に活かして対抗しています。渡河している軍隊に対して水中から特攻したり、市街地を飛び回る軍用ヘリをビルの屋上から攻撃したりと空間を縦横無尽に動くことで戦場の状況を大きく変容しています。
4.各エピソードの時系列
OBSOLETEはエピソードの順番が時系列に沿っていません。また、1話当たりの時間が短いため、ナレーションによる世界観の説明もなく、1度視聴しただけではエピソード間の繋がりが分かりにくいと思います。
公式サイトでは、一応、OBSOLETE世界の年表と各エピソードの時点が記載されています。こうした公式サイト上の追加情報にも触れることで、各エピソードで描かれるシーンの意味を理解する手助けになります。
動画を観て、公式サイトを読み、その上で動画を再度見返す際の1つの方法として、時系列順にみるというケースもあると思います。その際の手助けになればと思い、各エピソードを時系列で並びなおしてみました。
【エピソード2「BOWMAN」:2015年】
【エピソード3「MIYAJIMA REI」:2016年】
【エピソード5「SOLDIER BRAT」:2016年】
【エピソード4「LOEWNER」:2017年】
【エピソード4「JAMAL」:2021年】
【エピソード1「OUTCAST」:2021年】
5.おわりに
各エピソードには今後の伏線になるセリフやシーンも多く、視聴中に「さっきのシーンの意味は何だろう?」と考えさせらます。また、戦闘シーンが豪華に描かれるので興奮できる一方で、各話の登場人物や組織が異なり、その説明も特に無いので、すぐにストーリーを理解するのはなかなか難度が高いです。
しかし、そうした演出が視聴者の想像力をかきたて、考察欲を刺激されるのだと思います。今後も新しい動画が公開される都度、早めにチェックして、この記事の更新や新しい記事の投稿をしたいと思います。
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