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【レビュー】さかなクン『一魚一会』

世の中には、天然記念物のような人間が存在する。多くの人は口で綺麗なことを喋っても心の中では暴言吐きまくりかもしれないし、闇が存在する。もし事実がそうでも、「いやいや、この人に限ってないでしょw」と、絶対いい人って思わされてしまう人。私の中でそんなタイプの1人が、さかなクンだ。
さかなクンは、子どもみたいに無邪気に魚の話をする。正直魚についてはそんなに興味がないのだけど、嬉しそうに話すからそれを微笑ましく見てしまう。きっとわたしと同じような人はいるだろう。
ただ、単に「魚に詳しい人」だと思っていたので、絶滅危惧種を発見したとか、国会に出たというニュースを見た時「そこまで専門性高い人だったのか…」と初めて知った。
彼がどんな人生を送ってきたのかは、キャラクター的にも知識量的にもとても興味があったので、今回彼のエッセイ本である『一魚一会』を読んだ次第である。

前置きが長くなってしまった。ざっくり、この本が面白かったかどうかと聞かれたら
普段活字だけの本をあまり読まない自分が、1日で読み終えるほど夢中になって読むことができた!
そして、一言で感想を言うなら、宝箱みたいな本だった。

本当に素晴らしかったのでぜひ人にお薦めしたいと思い、早速周りの友人に「さかなクンのエッセイ読んだんだ〜」と話したのだが、全員が口を揃えて
「面白そう!読んでみようかな」と言うので、少し驚いた。普段さかなクンの話題を一切しないような人でも、彼のエッセイと聞けば「面白そう」に留まらず「読んでみたい」とまで思うのだ。

この本から強烈に伝わったことが1つある。それは、「好き」という気持ちは最強なのだということ。
彼はとにかく「魚が好き」という気持ちであらゆることを乗り越えてきたのだと思った。人とのコミュニケーションを円滑にするだけじゃなく、不良に絡まれた時やクラスのいじめられっ子に接する時など、辛い状況も魚好きが彼を強くした。とにかく魚への熱意が周囲の人間を動かしまくってきたのだ。

そもそもさかなクンの魚好きがここまで極まったのはお母さんの存在が欠かせない。面白いエピソードはたくさんあったのだけど、特に強く印象に残った場面がある。

お母さんの教育方針


ある日、まだ小さかったさかなクンが「この魚を飼いたい」と思い、料理屋さんに行った時の話。
お店の水槽にいたその魚を指差して店員さんに「このお魚ください」と言ったそう。さかなクンは生きたまま連れて帰るつもりだったのだけど、お店の人は当然食べるんだと思い、捌かれた魚を出したらさかなクンがギャン泣きしたというエピソードだ(笑)

これだけでもかなり面白いのだが、注目すべきはお母さん。魚は捌かれるだろうと当然分かっていただろうに、何も言わずに側にいただけだったらしい。この時だけでなく、いつもさかなクンがアクションを起こす時は先回りしてサポートするようなことは一切しなかった、と。実際に失敗するとやってはいけない理由が体に刻まれるし、失敗の先にある感情を知ることができる。

一方で、さかなクンがハマるものには全面的に協力していて、水族館に毎週行ったり、毎日魚料理だったらしい。お母さんもすごいけどお父さんや兄弟も文句を言わなかったそう。
彼も、アルバイト先が合わなかったり進路で悩んだり、他の人と同じように悩み事はあったらしい。最初は魚の飼い方を知らなくて魚が死んだり、失敗もたくさん経験している。
そんな苦労もあるからこそ、彼の成功体験はキラキラと輝いて見えた。

さかなクンはどこまでもさかなクンだった


普通なら相手のことを知れば知るほど「なんだ、意外と腹黒いところもあるじゃん。天然記念物じゃなかった」と思うけど、さかなクンは知れば知るほどやっぱり天然記念物だった。

ちなみに私はそんな彼が一度だけ少しイラついてるところを見たことがある。たしか彼のYouTubeチャンネルだったと思うが、『あつまれどうぶつの森』で魚釣りをした時に釣った魚を見て、
「あっ、少し絵が違うなぁ〜…」「あっ、それもちょっと違…」「あ〜ぁぁ」
と、もどかしそうにしていた(笑)
彼が描く魚は細かいところまで忠実だから、気になってしまったのだろう。いつもとちょっと違う部分が見られて、私はニヤリとしてしまったのだった。

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