日報 4月2日 衝動と、森の果実。
記入者:タラバミント
僕は計画的な人間だと思っていた。
計画を立てるのが大好きだからだ。
旅に出るときなんか、
1ヶ月くらい前から荷造りやら行き先やらを考える。
しかし、計画を立てるのが好きだからと言って、
計画的な人間だとは限らない。
僕の人生はむしろ、無計画に進行中だからだ。
例えばとある朝、
「会社の壁に絵を描いたら素敵だろう。絶対描こう」と思ったとする。
僕はそういう衝動が訪れると、
目的達成のために身体が苦もなく動く。
近所のホームセンターでペンキを調達し、
下絵も描かず、社員を誘って塗り始めるかもしれない。
まるでスーパーマリオのスター状態だ。
しかし、衝動の効力は一定時間のみ。
その機を逃すと、目的達成への意欲をすっかり失ってしまう。
その日の夕方まで何も行動を起こさなかったとすると、
「どんな絵が良いのかわからないな」と、すっかりやる気を失うだろう。
「そんなの、ただの気分屋じゃないか」
と言われてしまえばそれまでだ。僕は反論できない。
しかし僕は、この衝動的スター状態を悪いものとも思えない。
瞬間的ではあるが、自分の内から湧いてくる純粋な欲望のもと、
無意識の力が身体にみなぎってくるからだ。
こんな僕を見かねて、
パン父ジュニアがこの衝動に名前をつけてくれた。
その名は、「森の果実」。
「栽培果実は実をつけさせるために育てるでしょう。
森の果実は、どこに育つのか、いつ実をつけるのかわからない。
栽培果実は目的を持って生まれるけど、
森の果実は生まれること自体を楽しむ。
だから、生命力は強いと思うよ。君はそういう感じ」
パン父ジュニアの言葉は、芯のある力強さだった。
そうかぁ。そういうものかな。
彼の言葉のおかげで、
「自分の衝動は悪いもんでもなさそうだ」と、結構しっかり思えたよ。
時間割の決まっている中で、
休憩時間に好きなことをするのもいい。
限られた時間の中で生まれるものは、
濃厚で、凛としていて、確信をついているものが多いと思うから。
でも、こんこんと水が湧くように出てくる衝動“森の果実”は、
素直で純粋な自分の欲望に出会える。
だから、たとえ非効率だとわかっていても、
たまにはつきあってあげようと思った。
そんなこんなで、
僕の今日の午前中はパンツ作りと器直しに終わった。
なぜパンツ作りと器直しを?
それは、あなたが会社に遊びに来た時にでもお話しますよ。