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侍ジャパン2023選手紹介〜投手編〜

今月8日より開催された第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)も、いよいよ大詰め。大谷翔平やダルビッシュ有、村上宗隆らを擁する今大会の日本代表は「史上最強」とも評されます。

しかし、普段野球を見慣れていない皆様にとっては、どの選手がどれくらい凄いのか、今ひとつピンとこないのではないでしょうか。

そんなお悩みを解決すべく、今大会の侍ジャパンに選ばれた15名の投手について詳しく紹介した記事を作成いたしました!
観戦の際には、お手元のスマートフォンからこの記事を時おり覗いて、それぞれの選手の特徴をバッチリ把握していただければと思っています!

(本文に記載した記録は全て2022年シーズン終了時のものを参照しております)

11 ダルビッシュ有

  • 生年月日:1986/8/16(36歳)

  • 身長/体重:196cm/100kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:東北高校(2002~2004)ー北海道日本ハムファイターズ(2005~2011)ーテキサス・レンジャーズ(2012~2017)ーロサンゼルス・ドジャース(2017)ーシカゴ・カブス(2018~2020)ーサンディエゴ・パドレス(2021~)

現役ながら「日本プロ野球史上最高の投手は誰か?」という議論に度々名が挙がる百戦錬磨の大投手。自らを「150km/hを投げられる変化球投手」と称し、多彩な球種のコンビネーションで相手打者に的を絞らせない。
特筆すべきは奪三振能力の高さで、2010年以降登板があった全てのシーズンで奪三振数が投球回数を上回る、2021年にはMLB史上最速での通算1500奪三振を達成するなど、打者から三振を奪う能力は世界でもトップクラスである。今大会で相対するメジャーリーガーとの対戦経験も豊富であり、彼の実力と経験は今大会で日本が勝ち抜く上で必須といえるだろう。

東北高校時代には投手としての稀有な才能と”高校球児らしくない”メンタリティーで全国の野球ファンに衝撃を与え、卒業後に入団した日本ハムでは2007年から2011年まで5年連続防御率1点台の日本記録を達成する。2012年にはMLBの門戸を叩き、度重なるケガや不調を乗り越えつつ現在も第一線で活躍している。日本のトッププレーヤーでさえ全く通用しないことも多いメジャーリーグで10年以上プレーしている事実が、何よりもその実力の高さを証明している。

圧倒的な成績を残す一方で、Twitter上で一般人相手にレスバトルを繰り広げる、スマホゲーム「プロスピA」にどハマりして数百万円課金するなど、マウンド外での人間臭いエピソードにも事欠かない。しばしば「日本一レジェンド感のないレジェンド」と評されることも。私生活では色々あった末にレスリング選手の山本聖子さんと結婚、5人の子供たちと共に仲睦まじい家庭を築いている。

12 戸郷翔征

  • 生年月日:2000/4/4(22歳)

  • 身長/体重:187cm/84kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:聖心ウルスラ学園高校(2016~2018)ー読売ジャイアンツ(2019~)

右腕を大きく後ろに振る独特の投球フォームと、そこから繰り出される落差の大きいフォークボールが持ち味の若き右腕。昨シーズン奪った三振154個のうち133個が空振り三振によるものであり、その空振り三振率は86.4%で歴代2位の高水準である。メジャーリーグでプレーする選手は落ちる球に弱い傾向があり、彼のフォークボールはワールドクラスの選手にも十分通用しうる。

高校時代に宮崎県代表としてU-18日本代表相手に好投したことでプロのスカウトから注目を集め、2018年にドラフト6位で巨人に入団。チームのリーグ優勝がかかった大一番でプロ初登板を果たす、その後の日本シリーズで高卒新人ながら先発投手に抜擢されるなど1年目から濃い経験を積み、2年目以降は主力として現在まで活躍し続けている。今シーズンからはチームの投手キャプテンを務めるなど、名実ともにエースとしての働きが期待されている。

誠実な人柄でファンからの人気も高く、ヒーローインタビューでのハキハキとした受け応えは「公務員」と評される。後述の「宇田川会」ではお店の予約と送迎のアテンドを行うなど、マウンド外でも抜け目のない男である。年齢的にはまだ大卒1年目の代であり、彼と比較される今年の新入社員はたまったもんじゃない。

13 松井裕樹

  • 生年月日:1995/10/30(27歳)

  • 身長/体重:174cm/74kg

  • 投球・打席:左投左打

  • 経歴:桐光学園高校(2011~2013)ー東北楽天ゴールデンイーグルス(2014~)

キレッキレの変化球を武器に奪三振の山を築く杜の都の絶対的守護神。1試合(9イニング)あたりの奪三振数を示す奪三振率は通算で11.77(2022年シーズン終了時)と歴代でもトップクラス。150km/h台の直球と大きく曲がる縦横のスライダーに、近年は新たに140km台のフォークボールが加わり、相対する打者はボールをバットに当てることすら難儀する。年齢的にはまだ若手ながらもプロ入りから積み上げたセーブ数は197にのぼり、プロ野球史上でも8人しかいない通算200セーブの史上最年少達成が確実視されている。

神奈川の桐光学園から甲子園に出場した高校2年の夏、初戦で10打席連続奪三振・1試合22奪三振の大会新記録を達成、野球ファンの度肝を抜く。その後の試合でも圧巻の奪三振ショーを繰り広げ、この大会を通して計68の三振を奪った。これは甲子園歴代3位、左投手に限れば歴代1位の記録である。
プロでも1年目から先発ローテーションの一角を任されると、2年目には高い奪三振率に目をつけた当時の楽天・大久保博元監督が松井を抑えに抜擢。33セーブ・防御率0.87という驚異的な成績を残し、同年11月に行われたプレミア12では20歳ながら日本代表のクローザーを任された。

3月3日に行われた中日との壮行試合では不安な投球を見せるものの、大谷らのアドバイスもあって復調の兆しを見せる。試合終盤の短いイニングでその真価は十分に発揮されることだろう。
ちなみに、代表チームメイトの佐々木朗希・山川穂高と同じくあいみょんのファンであり、山川曰く「一番のオタク」なのだそう。

14 佐々木朗希

  • 生年月日:2001/11/3(21歳)

  • 身長/体重:192cm/92kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:岩手県立大船渡高校(2017~2019)ー千葉ロッテマリーンズ(2020~)

今まさに産声を上げたばかりの「令和の怪物」。3月4日に行われた中日ドラゴンズとの壮行試合では自己最速かつ日本人最速タイの165km/hを計測。未完の大器は未だその片鱗をわずかに覗かせているに過ぎず、ひょっとしたら今回のWBCもその伝説の序章でしかないのかもしれない。彼の投球が世界最高峰の打者たちにどこまで通用するのか、日本のみならず海外の野球ファンも注目することだろう。

高校3年生時に参加した高校日本代表候補の研修合宿で球速163km/hを叩き出したことでその名を全国に轟かせる。同年夏の岩手県大会では、甲子園出場がかかった決勝戦で登板を回避、この起用法をめぐっては高校球界を超えてスポーツ界全体に議論を巻き起こした。プロ入り後は球団の方針で身体作りに専念、1年目は2軍の試合にすら出場させないなど徹底的な育成プランが取られた。日本の球界・野球ファン全体の期待を受けて暖められた金の卵は、3年目の2022年、ついに孵化する。
2022年4月10日、本拠地・ZOZOマリンスタジアムで迎えたオリックス・バファローズ戦、シーズン3度目の先発登板となった佐々木は史上最年少での完全試合達成・歴代最多タイの1試合19奪三振・日本新記録かつ世界新記録の13者連続奪三振を達成。新たな伝説が始まった瞬間だった。

「朗希」という名前は3歳年上の兄によって名付けられたもので、当時放送されていた「百獣戦隊ガオレンジャー」の登場人物・狼鬼にあやかったのだそう。また松井・山川と共にあいみょんのファンであり、マリンスタジアムでは『今夜このまま』の音楽とともに登板してくる。どう考えても160km/h連発するピッチャーが出てくる曲ではないと思うのだが。

15 大勢

  • 生年月日:1999/6/29(23歳)

  • 身長/体重:181cm/88kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:兵庫県立西脇工業高校(2015~2017)ー関西国際大学(2018~2021)ー読売ジャイアンツ(2022~)

韓国のレジェンド・林昌勇を彷彿とさせるサイドハンドから放たれる最速159km/hの豪速球と、プレッシャーに負けない強心臓を兼ね備えたクローザー。一般的な上手投げ投手のストレートは地面と垂直の縦回転になることがほとんどだが、大勢のストレートは横方向に回転する。この回転軸のズレによってもたらされる独特の軌道を持ったストレートが彼の決め球である。1回限りの対戦で、初見の相手ピッチャーを攻略しなければならない対戦相手にとって、その存在は脅威と言って差し支えないだろう。

プロ入り当初はそこまで注目度の高い選手ではなかった。学生時代から投手として高い評価を受けていたものの、高校時代は甲子園出場なし、大学時代は度々ケガに苦しめられるなど、活躍の機会は決して多くなかった。しかしプロ入り後の春季キャンプ・オープン戦でアピールに成功すると新人ながらクローザーに抜擢、開幕戦でいきなり3者連続三振の衝撃デビューを果たした。そのまま1年を通して抑えとして活躍し、代表チームメイトの栗林良吏が持っている新人最多記録に並ぶ37セーブを挙げ、同じく今大会の代表選手である湯浅との接戦を制し2022年シーズンの新人王に輝いた。

昨シーズンのオープン戦で、彼の投球を見たチームメイトの高梨雄平が「#大勢はガチ」とツイートしたところ、その投稿がファンの間でバズりそのまま本人の公式キャッチフレーズになった。
本名は「翁田大勢」で、全国に100世帯しかないレアな苗字の持ち主。巨人の選手だが、当の本人は阪神ファンである。ちなみに父は巨人ファンで母は中日ファン。チャンネルの取り合いがヤバそうな家庭である。

16 大谷翔平

  • 生年月日:1994/7/5(28歳)

  • 身長/体重:193cm/95.3kg

  • 投球・打席:右投左打

  • 経歴:花巻東高校(2010~2012)ー北海道日本ハムファイターズ(2013~17)ーロサンゼルス・エンゼルス(2018~)

この男が何者かなんて今更語るだけ野暮だろう。日本中が待ち望んだ稀代の傑物、過去の記録どころか野球のルールそのものを塗り替えてしまったスーパースター。凡百の想像力を「不可能」の言葉とともに置き去りにして、現在進行形の英雄譚は綴られる。

花巻東高校時代に「みちのくのダルビッシュ」と評され、大阪桐蔭高校の藤浪晋太郎と並び注目を浴びる。卒業後はNPBを経由せずのMLB挑戦を表明していたが、日本の球団で唯一、日本ハムだけが大谷の強行指名に踏み切った。球団は数十ページにわたるMLB活躍の最短経路を示したプレゼン資料や投手と打者の「二刀流」プランを提示するなど粘り強く対話を重ね、交渉は1ヶ月以上にも及んだ。2012年12月9日、大谷はついに日本球界入りを表明、日本ハム・大谷翔平が誕生した。
二刀流への挑戦は野球ファンのみならずOBからも数多く批判の声が上がったが、2014年にベーブ・ルース以来の「10勝・10本塁打」を達成、2016年に史上初の「投手・野手両方でのベストナイン」を獲得、反対意見を結果で黙らせた。
2018年にMLBのロサンゼルス・エンゼルスに移籍。同年に新人王を獲得するが、その後はトミー・ジョン手術や不調でなかなか満足のいく結果を残せなかった。
そうして迎えた2021年、大谷はついに覚醒。投手と打者の双方で高い成績を残す「リアル二刀流」を実現し、アジア人としてイチロー以来2人目となるMVPを獲得した。さらに2022年にはあのベーブ・ルースですら達成できなかった「同一シーズンでの規定打席および規定投球回到達」を達成するなど、その活躍は止まるところを知らない。

投手としては球速の速さばかりが注目されがちだが、真の武器は140km/h台で沈むスプリットと「スイーパー」と呼ばれるスライダーの亜種であり、昨シーズン大谷が奪った219個の三振のうち2/3がこの2球種によるものである。打者としては打球の速さが群を抜いており、昨シーズンの平均打球速度はMLB全体で7位、最高速度では3位と世界でもトップクラスである。また長打を打つ能力が非常に高く、「バレル(パワプロでいうと弾道×パワー的な?)」と呼ばれる打球を打った数は昨シーズンMLB全体で4位となっている。

今大会では開幕投手と二刀流でプレーすることを宣言し、実際に3月9日の中国戦では先発投手として盤石の投球を見せた。打っては4試合で1本塁打8打点。アメリカで開催される準決勝以降では投手としての起用はされないが、彼が投打共に今大会で日本代表の中心となることは間違いない。

高校時代から徹底した自己管理を行なっており、プロ入り後も「夜遊びしない、お金も使わない、浮いた話も全く出ない」と、実生活の全てを野球優先で回している様子がメディアでも度々報じられている。ただ、ゲームは大好きなようで、エンゼルスのチームメイトとは「スマブラ」や「マリオカート」で親睦を深めたという。また大衆のイメージに反して(?)毒舌でもあり、準決勝で対戦するメキシコ代表でエンゼルスのチームメイトであるパトリック・サンドバルに対して「帰りの飛行機を手配しておけよ」とジョークを飛ばしたらしい。

17 伊藤大海

  • 生年月日:1997/8/31(25歳)

  • 身長/体重:176cm/82kg

  • 投球・打席:右投左打

  • 経歴:駒澤大学附属苫小牧高校(2013~2015)-駒澤大学(2016)ー苫小牧駒澤大学(2017~2020)ー北海道日本ハムファイターズ(2021~)

マウンド上での堂々とした立ち振る舞いと個性的なリアクションが特徴的なモクモクの実の能力者。2021年の東京五輪・韓国戦で披露(?)した「追いロジン」の印象が強いが、ピッチングも「6種類くらいある」と自己申告するスライダーや”最遅”70km/hのスローカーブなど多彩な変化球を使いこなし、対戦する打者を文字通り煙に巻く。今大会のチームメイトであり所属チームの先輩でもあるダルビッシュを憧れの選手に挙げており、その投球スタイルは彼から多大な影響を受けている(筆者の見解)。

北海道の駒大苫小牧高校から駒澤大学に進学するも「4年間野球をするビジョンが残せない」と半年で退学、地元へ戻り苫小牧駒澤大学(現在は北洋大学)に再入学する。2年生の春には北海道六大学リーグMVP・最優秀投手賞を受賞すると、翌年には大学日本代表の守護神を担った。2020年にドラフト1位で日本ハムに入団するといきなりローテーションの一角を担い、入団から2年連続で二桁勝利・防御率2点台を記録するなど、既にチームの大黒柱として存在感を示している。

実家は道南のタコ壷漁師で、これまでの全キャリアで北海道に本拠地を置くチームに所属している生粋の道産子。大学時代にはYouTuberとしてトレーニング動画などを投稿していたこともあり、入団早々チームメイトの吉田輝星から「今日はユーチューブ撮らないんですか!?」とイジられていたという。

18 山本由伸

  • 生年月日:1998/8/17(24歳)

  • 身長/体重:178cm/80kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:都城高校(2014~2016)ーオリックス・バファローズ(2017~)

圧倒的なパワーで相手打線を制圧するNPB現役最強投手。どれだけ圧倒的かというと、2021・2022年シーズンを通して、パ・リーグの選手としては史上初となる2年連続での沢村賞を獲得、さらに90年近いプロ野球の歴史上初となる2年連続での投手7冠(完投・完封・勝利・勝率・投球回・奪三振・防御率)を達成。NPBで投手に与えられる主要タイトルは「最多勝・最優秀防御率・最多奪三振」の3つだが、2019年以降パリーグのタイトルは12個中(3個×4年)8つが山本。MLBで長年活躍するダルビッシュ有からも「今すぐにでもメジャーで通用する」と太鼓判を押されており、今大会でも投手陣の大黒柱としての活躍が期待される。

岡山から宮崎県の都城高校に進むと、梅野優吾(現ヤクルト)、浜地美澄(現阪神)らとともに「九州四天王」と評される。高校卒業を控えた2016年のドラフト会議では社会人野球に進む噂も立っていたものの、担当スカウトの猛プッシュもあってドラフト4位でオリックスに入団。2年目に中継ぎとして1軍に定着すると、3年目以降は先発として押しも押されもせぬ絶対的エースに成長し、2021・2022年のオリックスリーグ連覇の立役者となった。一方で2020年くらいまではその実力と裏腹に全くと言っていいほど打線の援護に恵まれず、ファンからはしばしば「山本の最大の敵は味方打線」と揶揄された。

投手としては「すべての能力が優れている」と評され、最速159km/hのストレート、打者の手元で急速に落ちるフォーク、大きな変化でタイミングを外すことのできるカーブと、1つでも持っていればプロで十分通用するレベルの決め球を一人で3つも持っている。制球力も抜群であり、守備の優れた選手に与えられるゴールデングラブ賞を2回獲得するなど守備能力も非常に高い。

特筆すべきは練習で一切ウエイトトレーニングを行なっていない点。米俵を担ぐ昔の女性の写真から重心コントロールのヒントを掴み、立ち投げのような姿勢からしなやかに腕を振る投球フォームは槍投げから着想を得たという。
代表メンバーでチームの後輩でもある宮城大弥と仲が良く、イジったりネックレスをプレゼントしたりなど弟のように可愛がっている。また同じくチームメイトの頓宮裕真とは実家が隣同士で、戸郷翔征の兄とは高校時代チームメイトだった。

20 栗林良吏

  • 生年月日:1996/7/9(26歳)

  • 身長/体重:178cm/85kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:愛知黎明高校(2012~2014)ー名城大学(2015~2018)ートヨタ自動車(2019~2020)ー広島東洋カープ(2021~)

抑え投手は2種類に大別できる。相手に打ち崩せそうな感じを与えつつもなんだかんだ抑えてしまうタイプと、相手に反撃の意志すら起こさせず無慈悲に試合を終わらせるタイプ。栗林良吏は、後者の代表例と言っていい。
伝統的に名クローザーを数多く輩出してきた広島東洋カープの中でも、しばしば「歴代最強クラス」と評される右の剛腕。最速155km/hのストレートと「分かっていても打てない」といわれる落差の大きなフォークボールを使いこなし、チームの勝利を確実なものとする。

元々は内野手で、高校から投手に転向。愛知県の名城大学に進学すると、中日ドラゴンズで投手として活躍した山内壮馬コーチの薫陶を受け、大学3年時には大学日本代表に選ばれるまでに成長した。その後、トヨタ自動車を経て2020年にドラフト1位で広島に入団。アマチュア時代は先発投手だったが、当時の監督・佐々岡真司から抑えに抜擢されると新人記録となる開幕22試合連続無失点を記録、最終的には2015年の山崎康晃に並ぶ新人最多タイ記録の37セーブを挙げ、2021年シーズンの新人王に輝いた。その年の防御率は驚異の0.87で、セーブ機会での救援失敗数はゼロ。まさに絶対的守護神。栗林が出てきた瞬間に味方は勝利を確信し、相手ファンは敗北を受け入れるわけである。

本大会でも9回を担う存在として大勢と並び期待されたが、3月12日に下半身のコンディション不良が報道され、今後の登板に黄色信号が灯っている。彼がいるといないとでは終盤の安定感が大きく変わってくるため、いい知らせを期待したい。
(3/13 決勝トーナメント以降は代表チームに帯同しないことが発表されました。)

2023年からはカープ選手の登竜門(?)でもある広島の不動産会社、アイスタイルのCMキャラクターにも抜擢された。広島に行かれる際には、諸見里大介と同僚の九里亜蓮にツッコミを入れる彼の勇姿を見てみてはいかがだろうか。

21 今永昇太

  • 生年月日:1993/9/1(29歳)

  • 身長/体重:178cm/86kg

  • 投球・打席:左投左打

  • 経歴:福岡県立北筑高校(2009~2011)ー駒澤大学(2012~2015)ー横浜DeNAベイスターズ(2016~)

オリックスの宮城大弥や中日の大野雄大と並び、左の先発投手としてはNPBトップクラスの実力を持つ。武器は「世界レベルで見ても最高級」と称されるストレート。投手の直球を評価する基準に「回転数」があり、この数値が高いほどボールに揚力が働き一般的に「伸びのある」ボールになるといわれる。日本のプロ野球選手のストレートの平均回転数が2200回程度の中、今永のストレートの平均回転数は2400〜2500と際立った数値を見せている。3月10日の韓国戦に登板した際のストレートの平均回転数は2561回を記録したが、これは昨シーズンMLBで登板したどの投手よりも高い数値だった。

駒澤大学では1年の春からリーグ戦に出場し、3年の秋には大学野球最高峰といわれる東都一部リーグでMVP・最優秀投手・ベストナインの三冠を獲得、大学4年時の2015年ドラフトでDeNAから4位指名を受けプロ入りを果たす。肩を怪我していたこともあり、プロ志望届を提出したのは締め切りの2日前だった。
プロ入り後は酷使による不調や左肩の手術などといった困難に直面しつつもDeNAのエースとして存在感を発揮、昨シーズンは1イニングあたりに許したランナーの数を示すWHIPでリーグ1位の0.94を記録するなど(先発投手でこの数値が1を下回るのは超スゴイ)、球界を代表する左腕として存在感を示している。

援護がないという言い訳は防御率0点台の投手だけが言える」「何者でもない一投手を、見ている方々がこういう結果に導いてくれた」などの思慮深くどこか達観したようなコメントを数多く残すことから、ついたあだ名は「投げる哲学者」。キャリアの早い段階からMLB挑戦への意欲を見せており、もしかすると日本で見られる機会はあと少しかもしれない。

22 湯浅京己

  • 生年月日:1999/7/1(23歳)

  • 身長/体重:183cm/82kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:聖光学院高校(2015~2017)ー富山GRNサンダーバーズ(2018)ー阪神タイガース(2019~)

独立リーグから日本代表まで右腕一本で成り上がったシンデレラボーイ。「一球ごとに気迫を込めている」とでも形容できるような躍動感のあるフォームから、最速156km/hの直球で相手打者をねじ伏せる。昨シーズンは阪神のリリーフエースとして主に8回を担当、同じく日本代表選手の大勢と最後まで新人王を争った。惜しくも受賞は逃すものの、防御率や奪三振などの指標は湯浅が上回っていた。

高校時代は腰痛により2年の秋までマネージャーとして活動しており、3年時にチームが甲子園に出場した際にもベンチ入りメンバーからは外れた。大学進学の薦めもあった中で、卒業後は独立リーグの富山GRNサンダーバーズに入団し、1年目から先発として試合に出場する。その年は15試合投げて防御率5.72とお世辞にも良い結果を残せていなかったのだが、その存在が阪神スカウトの目に留まり2018年にドラフト6位でプロ入りを果たす。その後は体力づくりに専念したり腰のケガが再発したりとなかなか登板の機会をつかめずにいたが、2022年の春季キャンプでのアピールに成功し開幕一軍を掴み取り、上記の活躍を果たしたのである。

その経歴からもうかがえるように、最近のプロ野球ではめっきり珍しくなったハングリー精神の持ち主。プロ入り前にスカウトと面談を行う機会があった際、湯浅は15分の予定だった面談でなんと45分間にわたる自己アピールを行い、それが球団が獲得を決意する決め手になったという。彼のグローブには青い熊の刺繍が施されており、これは「…焦るな、…怒るな、…威張るな、…腐るな、…負けるな」という独立リーグ時代の監督・伊藤智仁からのアドバイスに由来する。

26 宇田川優希

  • 生年月日:1998/11/10(24歳)

  • 身長/体重:184cm/94kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:埼玉県立八潮南高校(2014~2016)ー仙台大学(2017~2020)ーオリックス・バファローズ(2021~)

彗星の如く現れたオリックス連覇の立役者にして、本大会における日本代表投手陣の秘密兵器。通算登板数は19、これまでに1軍で投げたイニングは22と1/3と今回の代表メンバーの中ではダントツで少ないが、その高いポテンシャルと驚異的な成長速度は他のビッグネームにも引けを取らない。184cm・94kgという恵まれた体格から放たれるストレートは160km/hに迫り、落差の大きなフォークも交えつつ空振りの山を築く。

高校時代は全くの無名選手で、大学も地方リーグだったためほとんど注目を浴びることはなかった。それでも最速150km/hオーバーの速球が評価され、育成選手ながらもオリックスから指名を受けプロ入りを果たす。2年目となる2022年春、コロナウイルスに感染し筋肉量が落ちたことを機に肉体改造に取り組み、ストレートが球界でもトップレベルといえる158km/hまで上昇した。同年7月末に支配下登録、直後の8月3日に1軍初登板を果たすと、2ヶ月間で19試合に登板し失点したのはわずか2試合のみという素晴らしい働きをやってのけた。ヤクルトとの日本シリーズでは全7試合中4試合に登板、5回と2/3を投げて10奪三振・無失点と大車輪の活躍を見せ「影のMVP」とまで称された。

先発・リリーフ問わずタイトル獲得経験者や既に実績を積み重ねた選手が並ぶ中、宇田川の代表選出は今大会における「サプライズ人選」と言ってもいいだろう。
2月のキャンプ開始当初は宇田川自身が人見知りな性格もありなかなかチームの輪に入れずにいたが、最年長であるダルビッシュ有の計らいで投手陣全員を交えた「宇田川会」を開催、一気にチームの中心となった。今大会の投手陣の中でも特にデータの少ない選手でもあるので、そう言った意味でも活躍が期待できるはず。

28 高橋奎二

  • 生年月日:1997/5/14(25歳)

  • 身長/体重:178cm/73kg

  • 投球・打席:左投左打

  • 経歴:龍谷大付属平安高校(2013~2015)ー東京ヤクルトスワローズ(2016~)

ヤクルトの次期エース候補に名乗りを挙げた本格派左腕。両手を空に突き出すようにして掲げた後、右足を高く上げる独特な投球フォームが特徴。特にストレートとスライダーの評価が高く、昨シーズンのストレート平均球速は148.6km/hで左の先発ピッチャーの中では最速、スライダーの被打率は.129と非常に優秀なスタッツを叩き出している。

中学までは軟式野球をやっていたものの、高校は京都の名門、龍谷大平安高校に進学。1年生の時は体も細く、人懐っこい性格から監督からは「赤ちゃん」と呼ばれていたが、2年生の春に出場したセンバツでは先発として4試合に登板し3勝を挙げ、優勝投手に輝いた。2015年にドラフト3位でヤクルトに入団してからは若手の有望株として期待されていたものの、肩や腰の怪我や制球力の不安もあり今ひとつ伸び悩んでいた。2021年に現在の投球フォームに変更してから安定感が増し先発ローテーションに定着、投手陣の柱としてヤクルトの2年連続優勝に大きく貢献した。さらに昨年の日本シリーズでは先発として15イニング連続無失点を達成、MVP級の活躍を見せた。

投手として高いポテンシャルを持っているのは間違いないが、高橋を語る上で欠かせないのがパートナーで元AKB48の板野友美である。彼女とは2021年の1月に結婚したのだが、当時の高橋は率直に言って”半一軍レベル”の選手だった。蓋を開けれみればその後は「日本一・オールスター出場・侍ジャパン入り」と、まさに上り調子である。板野女史の慧眼は野球ファンも驚きとともに称え、「贔屓のスカウトをやってほしい」との声もしばしば聞く。

29 宮城大弥

  • 生年月日:2001/8/25(21歳)

  • 身長/体重:171cm/78kg

  • 投球・打席:左投左打

  • 経歴:興南高校(2013~2015)ーオリックス・バファローズ(2020~)

代表メンバーの佐々木朗希をはじめ、ヤクルトの奥川や阪神の西純矢ら「01世代」の出世筆頭株。高校を卒業してプロ入りしてから3年間で25勝を挙げており、これは同年代ではダントツの記録である。若干21歳ながらベテランの風格すら感じさせる老練なピッチングが持ち味で、140km台のストレート・120km/h台の縦横の変化球・100km/h未満のスローカーブなど速度の違う多彩な球種を器用に使い分けたかと思えば、時には最速154km/hの速球でゴリ押しの投球もできる。まさに緩急自在、剛柔相済である。
3月11日のチェコ戦はでの登板は、まさに宮城の真骨頂だった。3番手で5回から登板すると、緩急自在のピッチングで相手打者に狙いを絞らせず、65球の球数制限がある中で試合終了まで投げ切った。

沖縄県に生まれた宮城の幼少期は、父親が事故に遭い失業したために非常に厳しい経済環境だった。グローブは数百円のビニール製のものを手に入れるのが精一杯で、ユニフォームはツギハギだらけだったという。中学生からU15日本代表に選ばれるなど頭角を表し、高校は地元の興南高校で甲子園に2度出場。卒業を控えた2019年のドラフト会議では「外れの外れ」ながらオリックス・バファローズから1位指名を受け、プロ入りを果たす。1年目から2軍で最多勝を獲得すると、翌2021年は開幕から1軍の先発ローテーションに名を連ね、10代でのファン投票によるオールスター出場・10代での12球団最速2桁勝利達成・高卒2年目での新人王獲得と記録づくめの1年になり、一気にスターダムへと駆け上がった。

髪型に頓着がなく、ブレイクした2年目シーズンでは「負けるまで髪を切らない」と途中までゲンを担いで髪を伸ばしていたが、シーズン途中に突如丸刈りに。鈴木誠也のキャッチフレーズをもじって「髪ってる」と言われたり、イメチェンをネタにしたグッズが大売れしたりしたので、まあ結果オーライでしょう。また謙虚な性格でチームメイトからは愛されキャラとして親しまれ、代表チームでも山本や大谷から度々いじられている。

47 髙橋宏斗

  • 生年月日:2002/8/9(20歳)

  • 身長/体重:186cm/86kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:中京大附属中京高校(2018~2020)ー中日ドラゴンズ(2021~)

山本の次の日本No.1投手は髙橋」ともしばしば評されるゴールデンボーイ。今回の代表選手の中では最年少だが、まだ華奢な肉体に秘めたポテンシャルは佐々木朗希にも引けを取らない。テイクバック(腕の振り)の小さいフォームから、糸のようにまっすぐに伸びる平均150km/hオーバーの直球、打者の手元で鋭く落ちるスプリット、チェーンソーのような切れ味で曲がるカットボールを投げ分ける。このフォームは実際以上にボールを速く見せるため、打席に立った打者からすればたまったものではない。

愛知県に生まれ、高校は同県の強豪、中京大附属中京高校に進学する。3年生の時にはコロナウイルスの流行で夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)出場こそ果たせなかったものの、神宮大会優勝・夏の愛知県大会優勝・甲子園交流大会優勝を勝ち取り、高校生活最後のシーズンを公式戦無敗で締め括った
卒業後は慶應義塾大学への進学を予定していたが、不合格になったためプロ入りを目指すことに。そのまま地元球団の中日ドラゴンズから単独1位指名を受けプロ入り。2020年シーズン限りで引退したかつてのエース、吉見一起が背負っていた背番号19を受け継ぐなど大きな期待を受けたが、1年目は2軍ですら1勝もできず。
2年目の昨シーズンは開幕から1軍出場を果たすと、同年8月には松坂大輔や田中将大らレジェンドの記録を上回るシーズン14試合でのシーズン100奪三振を達成。打線の援護が得られなかったこともあり勝利数こそ6勝に留まるものの、116と2/3回を投げて134奪三振、防御率2.47の好成績を残す。特にシーズン後半の防御率は1.73とリーグトップクラスだった。

アメリカで迎える準決勝以降の試合でも登板が見込まれており、対戦相手のレベルからしても”シビれる場面”で登場する可能性も十分にある。
彼の投球がメジャーリーガーにも通用すれば、その存在が一気に海外にも知れ渡るだろう。山本や佐々木に次いで本大会で名を上げることができるのか、見ものである。

63 山﨑颯一郎

  • 生年月日:1998/6/15(24歳)

  • 身長/体重:190cm/92kg

  • 投球・打席:右投右打

  • 経歴:敦賀気比高校(2014~2016)ーオリックス・バファローズ(2017~)

栗林良吏の離脱というピンチに颯爽と駆けつけやってきた大型リリーバー。190cmの長身から投げ下ろされるストレートは最速160km/hを記録し、昨シーズンの後半から同じく代表メンバーの宇田川と共に盤石のリリーフ陣を形成、オリックスのリーグ優勝と日本一の立役者になった。

中学時代にはすでに身長が180cmを超えており、福井県の敦賀気比高校時代には地元メディアから「北陸のダルビッシュ」と称された。高校卒業後にプロ入り、2年目にはU23日本代表として国際大会で準優勝に貢献するものの、その後は肘の手術を受け1年以上投げられなくなるなどもあり、一時は育成選手としての契約になっていた。2021年に復活し先発として1軍の試合にも出場したが、コントロールに難があったためなかなか主力として定着することはできずにいた。
しかし2022年、転機は訪れた。肩のコンディション不良で3ヶ月ほど戦列を離れていた期間にウエイトトレーニングに打ち込み、球速が大幅にアップ。9月以降は中継ぎとして相手打者を豪速球でねじ伏せ、ソフトバンクとの歴史的接戦を制したチームに大きく貢献した。

山﨑を語る上で外せないのが「吹田の主婦」。2020年のファン感謝イベントにおいて、山﨑は三角巾に裸エプロンという強烈なインパクトの出立ちで現れる。この時点で山﨑は1軍登板経験のない若手だったが、同イベントに登場した主力選手の山本由伸や杉本裕太郎を食ってしまうほどのインパクトを残し、「吹田の主婦」は球団の名物キャラクターとなった。
なお、当の本人は石川県出身で、大阪の吹田には行ったこともなければ場所も知らなかった模様。今年1月に球団と吹田市とのコラボで初訪問が実現、吹田市長直々に「吹田の主婦を続けてほしい」と激励をもらった。

あとがき

2022年W杯、日本代表のフットボール史に残る大番狂わせは各位の記憶にも新しいだろう。
いわゆる「にわかサッカーファン」だった僕は、日本戦の観戦の際にRK-3さんが作成した代表選手紹介記事に大いにお世話になった。

W杯が終わる頃には、来たるWBC開催時には自分も同じようなコンテンツを作ろう。そう意気込んで作成しました。

が。これを書き終えた現在(2023/3/21)、すでに大会は準決勝まで進んでおり、全日程も残すところあと2試合のみ。
今日ほど己の遅筆を呪ったことはない。

残り少ない時間とはなってしまいましたが、観戦の際には本ガイドをご参照の上、日本代表の投手陣についての理解を深めていただければ幸いです。




野手編は…やると思います。早ければ3年後に。

あなたのちょっとのやさしさが、わたしの大きな力になります。 ご厚意いただけましたら、より佳い文章にて報いらせていただきます。