カリスマシェフのもとで修業した人気パン職人の共演!稀人マルシェ2023
僕は「おいしいものづくり」をしている稀人の取材をすることが多い。なぜって、それはおいしいものが好きだから。取材現場では、よくひとりで悶絶している。
でも、その味や食感を文章で表現するのは簡単じゃない。読者もきっと、あれこれ想像しながら「…食べてみたい!」と思っているはず。それなら実際に食べてもらおう!稀人たちの「おいしいもの」を仕入れて売ろう!という完全なるノリで始めた稀人マルシェも、今年で5回目を迎える。
今年の稀人マルシェは12月21日に開幕!
個人的にサイコーに胸アツなのは、福岡の行列ができるパン屋さん「パンストック」の平山さんと、丹後にある通販メインの人気パン屋さん「ヒヨリブロート」の塚本さんの共演!!!
ふたりは、パン業界では知らぬ人のいないカリスマ、『シニフィアン シニフィエ』の志賀勝栄シェフのもとで修業した同門なのです。修業の時期は異なるけど、志賀イズムを継承するお弟子さんふたりのパンが、恵比寿のギャラリー山小屋に並ぶとは…!
今年6月、平山さんの取材に行った時の記事は雑誌『旅の手帖』に掲載されたので多くの人に読んでもらうのが難しかったし、文字量が限られたから、取材時に聞いた志賀シェフへの思いに触れることができなかったのが、残念だった。
6月のインタビューで印象的だったのは、志賀シェフと、もうひとり平山さんが師事した「ダンディゾン」の浅野正己シェフについて、とても長く語ってくれたこと。志賀シェフについては、次のコメントがすべてを物語っていると思う。
「自分で考えた製法でも、あれ、これって志賀さんがやってなかったっけって思うことがあるんですよ。なんかすごい山の上の方に行ったつもりだったのに、そこには志賀さんの足跡がある、みたいな。それは嬉しくもあり、悔しくもあり」
そして、『旅の手帖』ではこの言葉で締めくくった。
「アスリートと一緒だと思うんですよね。厳しいトレーニングを積んでもなにかが急にできるわけじゃないけど、やり続けたら、いつか限界の『先』が見えるかもしれない。僕は今48歳だから、あと20年頑張ったら、今よりもっとおいしいパンが作れるようになってるかな」
平山さんのパンづくりへの情熱や志賀シェフへの尊敬の念に触れた時、僕は塚本さんのことを思い浮かべていた。過去に2度、塚本さんの取材をさせてもらっていて、そのたびに志賀シェフのもとで働いた時期のエピソードをたくさん聞いていた。
僕が書いた記事
・丹波の山奥にある「5年待ち」のパン屋。職人・塚本久美は旅をして、パンを焼く。(クラシコムジャーナル)
・3年待ちのパン屋「HIYORI BROT」に全国から食材が集まる理由(中川政七商店)
志賀シェフは、新しいパンを作ることに貪欲で、厨房には常にさまざまな食材があったこと。あまりに斬新すぎて、時には日の目を見ずに消えていくパンもあったこと(「わさびを入れたパン」の話には笑った)。
7年間に及ぶ修業の日々を「ほんと実験室みたいでしたね」と振り返る塚本さんは、心底、楽しそうだった。そして今、「旅するパン屋」を掲げる塚本さんは、志賀シェフと同じくさまざまな生産者とコラボして、新しいパンを次々と生み出している。
平山さんと塚本さんに共通しているのは、どん欲さ。「もっとおいしいパンを作りたい」というその一念で、ふたりは今日も厨房に立っている。ということは、ふたりにとって一昨日より昨日、昨日より今日のほうが進化しているということ。
頂きの見えない山を登る平山さん。
未知を求めて旅をする塚本さん。
ふたりのパンが肩を並べる。
その日を想像すると、どうしようもなく胸が高鳴る。
稀人マルシェ
12/21:15時~20時
12/22:15時~20時
12/23:12時~20時