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僕も、あなたも「ウルトラニッチ」になれる。そのヒントを伝えたい。
稀人ハンター。
我ながらこの珍妙な肩書を名刺に入れ、正式に名乗り始めたのは、2017年9月だった。
それまでは「フリーランスライター&エディター」として活動していたから、まったく別の生き物になってようなもんだ。
そうそう、稀人ハンターは「常識に捉われないアイデアと行動力で世界を明るく照らす稀な人」を発掘して取材するのが仕事です。
振り返ってみれば、2006年にバルセロナに移住した頃から稀人ハンター的な仕事をしていて、それがめちゃ楽しかったから、生業にしたいと思ってた。
でも、どうしたらいいのかわからんっていうのが正直なところで、「フリーランスライター&エディター」としていわゆる普通のライターと編集の仕事をしながら、悶々としてたんだ。
もうきっかけは忘れてしまったけど、ある時、ふと「肩書が必要だ」と思った。それで1、2年、あれこれ悩んだ末に捻り出したのが、稀人ハンターだった。
自分でもふざけた肩書だと思ったし、名刺に入れるのもちょっと恥ずかしいなと思ったりしたけど、清水の舞台というより、「ライター」が満載された列車から、思い切って飛び降りて、ひとり荒野に降り立った感じ。大げさかもしれないけど、ほんとそれぐらいの感覚だった。
それから5年。
「フリーランスライター&エディター」時代と比べて、僕の仕事は大きく変わった。どういうところが以前と違うのか、書き出してみよう。
・「誰か面白い人いませんか?」という発掘からスタートする仕事の依頼が増えた。
・自分から稀人企画を提案する時に、すんなり受け入れてくれることが増えた。・「この人を取材しませんか?」というメディアからの依頼も、取材対象者が稀人の率が非常に高い。
・取材先で、稀人を紹介してもらうことが多々ある。
・発掘&提案からスタートする仕事として認めてもらうことで、原稿料が上がった。
・全国の稀人たちと仲良くなり、一緒にイベントをするようになった。
・稀人の取材を続けていたら、出版のオファーがくるようになった。
……などなど、挙げたらキリがない。
「フリーランスライター&エディター」というわかりやすい肩書を捨てて、日本にひとりしかいない「稀人ハンター」になってみたら、いいことしかなった。誰もいない荒野を耕し始めたら、そこが肥沃な大地で作物が豊富に実り、贅沢はできないけど家族で食っていくには困らない気楽で快適な生活が待っていたんだ。
そして、つい最近気づいた。
僕の新著『ウルトラニッチ 小さな発見から始まるモノづくりのヒント』に解説を寄せてくださった著名な経営学者、楠木建先生の言葉を見て、自分が知らないうちに「無競争」「高く売れるものを作る」「人に喜ばれる仕事をする」という「ウルトラニッチ」状態になっていたということに。
『ウルトラニッチ 小さな発見から始まるモノづくりのヒント』では、画期的なコーヒーグラインダーのクラウドファンディングで約4億円を調達した元アップルのエンジニア、日本にひとりのスプーン作家、1800万円の腕時計を作る独立時計師など10人の稀人たちが唯一無二のモノづくりを始める前から今に至る過程を描いた。
この本の最大のポイントは、楠木先生の解説にあるように「無競争」。
シリコンバレーの著名な起業家・投資家であるピーター・ティールも著書『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』で「競争を避け、独占を目指せ」と説いたけど、まさにウルトラニッチ=価格競争も交渉もない無競争の独占的な世界だ。
モノづくりの本だから、モノづくりに携わっている人たちにも手に取ってほしい。
だけど、僕が一番伝えたいのは、モノづくりをしましょう、ではなくて、「誰でもウルトラニッチになれる」ということ。もともと星の数ほどいるライター、編集者のひとりに過ぎなかった僕がその証明だ。モノづくりを通して、10人の生き方としてのウルトラニッチを知ってほしい。
この本には、どういう失敗やトライをして今に至ったのか、さまざまなパターンのウルトラニッチになるためのヒントが詰まっている。ひとり暮らしの女性もいれば、ワーキングプアだったシングルマザーもいるし、学生時代に起業した人もいれば、大企業を早期退職した人、50代で初めてモノづくりを始めた人もいる。
それをビジネス的な視点で見た時にどういう戦略なのか、楠木先生がめちゃくちゃわかりやすく解説してくれているから、誰にとってもヒントになるはずだ。
ウルトラニッチは孤独だし、ニーズをつかむまでの道のりは平たんじゃない。でも、一度、ウルトラニッチとして確立してしまえば、誰かと比較されたり、値下げ交渉を迫られたり、やりたくない仕事をして胃が痛むような日々を送らなくて済む。
顔の見えない誰かと限られた果実を奪い合う競争から距離を置いて、実った果実を大切な人と分け合うような心に余裕がある生き方をすることができる。
名刺の肩書を変えてから僕の人生が激変したように、ウルトラニッチへの道は小さなステップから始まる。誰でもウルトラニッチになって、自分らしい生き方を楽しむことができる。そのヒントを得るための参考書として、この本をぜひ手に取ってほしいです。
『ウルトラニッチ 小さな発見から始まるモノづくりのヒント』、本日発売!