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2005年に出した青臭い手紙に返事が来なかった理由が19年後にわかった話
今日は、日本最多10頭のぞうがいる市原ぞうの国の園長、坂本小百合さんの取材だった。
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僕が坂本園長のことを知ったのは2005年。日本で初めてぞう使いになった若者を描いた映画『星になった少年』を観た時だ。悲劇的な最後を迎えたその若者の母親が、坂本さんだった。
当時25歳、動物が好きで、なかでもぞうが大好きな僕は、映画を観て「ライターやめてぞう使いになろう!」と思い立ち、坂本園長に便箋3、4枚の手紙を書いた。残念ながら返事はなく、僕もライターを続けたけど、自分の人生を変えたかもしれないあの映画と手紙のことは忘れたことがない。
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だから、某編集部から坂本園長の取材をしないかとオファーがあった時、1秒の迷いもなくYES!普段、取材の前に緊張することはないけど、ぞうと坂本園長に会えることが楽しみすぎて、前夜からドキドキしていた。
取材前に余計な話をするのもよくないので、取材後に手紙の話をした。坂本園長はすごく驚きながら、「当時はそういう人がたくさんいたのよ」と言った。
それは手紙を書いた当時から僕自身も考えていたことで、返事がないのも仕方ないと自分を納得させていた。でも、真相は違ったようだ。
とてもさっぱりしていて気持ちのいい雰囲気の坂本園長から「あなた、そのときいくつだったの?」と聞かれたから「25ぐらいです」と答えたら、「だからかも!」と笑った。
「25じゃ遅いわ。ぞう使いは遅くとも18ぐらいまでに始めなきゃ。きっとあなたの年齢をみて、これは違うと思ったんでしょうね!」
そうだったのか!
まさか、手紙を出してから19年後に、返事がこなかった理由を知ることになるとは!取材先で「人生っておもしろい!」と思うことは多々あれど、今日は自分の人生の小さな分岐点を知って、生きることの妙を感じた。
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その時、そばで話を聞いていた同行の編集者が、「まだできることあるんじゃないですか?」と言うから、「ぞう使いにはなれなくても、ぞうのそばで仕事ができたらいいですね!」と軽く応じたら、そこから話があれよあれよと予想外の方向に転がって、「広報ならいいわよ」と坂本園長。えええ!!!
その後すぐ合流した広報をしている娘さんに「この人(僕)のノート、見せてもらって。こんなに調べてくる人、珍しいわ。書ける人がいたら助かるのよ」と言ってくれた。自分がなによりもこだわってる下調べに気づいてくれて嬉しかった。「じゃあ、また手紙書きます!」という僕に、「もう書かなくていいわよ!」。
そこで娘さんにも、19年前に出した手紙の話をしたら、「え、まだあるかもしれませんよ」。
えええ!!!市原ぞうの国に届いた手紙は捨てることなく、すべて保管されているという。25歳の僕が書いたあつ苦しい手紙が残っているなんて、とんでもなく恥ずかしい!とアタフタする僕に、ニコリと微笑んだ坂本園長、「じゃ、探しておこうかしら」。
最後は、「履歴書お待ちしてますね!笑」と坂本園長と娘さんに見送られ、取材終了。
その後、隣接する小百合ワールド(何種類もの動物が放し飼いされている!)で撮影。
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それからまたぞうの国に戻ったらショーが終わるタイミングで、ぞうたちがお客さんと触れ合っていた。
そこで僕を見つけた娘さんが「このぞうがランディですよ」と紹介してくれた。映画『星になった少年』に出演したランディ…長い鼻で僕の匂いをかぎまくっていたランディは僕が触れるのを受け入れてくれて、セルフィーまで撮らせてくれた。
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今日はもう感無量。
広報の話はどうなるかわかんないけど、とにかく今日のお礼を伝えよう。
今度はメールで。