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【稀人ハンター仕事考】AIからの逃走
昨秋、クリエイターエクスポに出展した際、某大手企業の方から「導入事例を書ける人を探してる。金額は安いけど、たくさん発注できる。既にお願いしてるライターがいるけど、手が足りない」という話を聞いた。
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僕はその瞬間、工業製品やファストファッション業界を思い浮かべた。日本語の壁に守られているから「賃金の安い海外に発注」とはならなかったけど、「安価で大量生産」を求められる簡易な導入事例の案件は、間もなくAIに取って代わられるだろう。
同じエクスポで、別の大企業の方から「音源から記事を書いてくれるライターを探してる」という話も聞いた。インタビューは社内の人がして、ライティングを外注したいということだろう。これもまたAIを活用する方向に進むはずだ。
一般的に、インタビューをしたライターが原稿を書く。ライティングだけを外注するということは、言い換えれば「誰が書いてもいい」ということで、そのうち人間である必要もなくなるから。
エクスポは依頼する側のニーズがよくわかって、それだけで出展した意味があった。
僕は稀人ハンターとしてAI時代にどう生きるかを、ずっと真剣に考えている。ライター・編集業界の最近の潮流は、「AIを上手く活用して生産性を上げよう」。うんうん、わかる。僕も文字起こしではお世話になっております。
でも、以前に取材したある農業関係者の言葉がよぎる。高齢化、人手不足が深刻な農業も機械化が進む。その人は「でも、機械化した先に求められるのは販売価格の値下げですよね」。確かに、人件費カットして、作業を効率化したら、販売価格は安くなるだろう。でもそれで利益を出せるのって大規模なところじゃない?
生産を人件費の安い海外に移したアパレル業界と同じ構図だ。星の数ほどいるライターがこぞってAIで「生産性向上」を目指した先にどんな未来が待っているのか…アパレルや農業と違う展開が起きるとは思えない。
もちろん、AIと相性が良く、絶え間ない進化を常にキャッチアップして「ライティング工場」を巨大化し、高速回転させる人たちが出てくるだろう(既にいる)。でも、その競争に勝ち残れるのは一部の人で、大半の人は?
ところで、僕は社会人になってからずっと、目の前の競争から逃げ続けてきた。どこにでも優秀な人がいて、こりゃ勝てない…と尻尾を巻く。でも、どうにかして食っていかなきゃと、その逃げた先でニッチを見つけてサバイブしてきた自分をなかなかの逃走者だと思っている。
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AIとどう戦うか、ではなく、AIと戦わずにどう逃げるか、ニッチすぎてAIがカバーしない、AIマスターが手をつけようとしない領域はどこなのか。
今のところ、ひとつは取材をして記事を書くライターとして、もうひとつは日本全国にいる稀人とつながりを持つ稀人ハンターとして、二方面で逃走経路を確保しようと考えている。
それがどういう道なのかは、ここでは明かさない。逃げ道を晒す逃走者はいないだろう。それに、逃げるためには事前の計画も大切だけど、臨機応変に動かなくてはいけないから、すべては流動的だ…とはいえ、日頃の僕の言動を眺めていたら、方向性はバレそうだけど。
なにはともあれ、これからのAI時代、キャリア20年超の逃走者として前向きに全力で逃げ続けたい。