読書ノート『むらさきのスカートの女』
第161回芥川龍之介賞 受賞作
――こんな話
「むらさきのスカートの女」と呼ばれる彼女が気になって仕方のない「黄色いカーディガンの女」わたしは、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。
ホテルの清掃係として働くようになった彼女は、同僚から認められ、しだいに健康的になっていき、性格も明るくなる。職場に馴染んだ彼女は所長と不倫をするようになり、同僚から嫌がらせをうける。
そんな中、ホテルの備品がフリマに出品され問題となる。
――感想
普通に狂ったひとたちの日常。現実に存在するような人間関係。不倫・窃盗・倫理観の壊れた村社会にぞっとしない。アメリカのサスペンス映画のように、じわじわと染み込むような怖さと後味の悪さがある。
はじめはストーカーかと思ったけれど、もしかしたら解離性同一性障害なのではないか? と思う展開であったり、よくわからないけど……そのため何度も読み返した。仮説をたてて読み返したところで、ハッキリと言い切れるほどには、結局わからなかった。
なんとも気持ちの悪い小説だけれど、クセになる。気持ちの悪さがちょうどいいのだと思う。灰汁を抜かないタケノコのような丁度良さというのだろうか、灰汁があるからこそのタケノコみたいな。この気持ち悪さあってこそ、今村夏子さんの小説といえるのだろうと生意気にも感じています。
朝日新聞出版:2022.6.7
文庫本:216ページ