【レーエンデ国物語 夜明け前】 - 消えた歴史が、語られる -
「革命の話をしよう」
ついに第4の物語となります。
舞台となるのは帝国の支配にすっかり慣れてしまったレーエンデ。
ついにレーエンデを「国」と表現する場面があり、とても感慨深いです。
3部までに語られなかった謎や、歴史の裏側に触れている今作。運命は激流となって加速します。
「夜明け前」にふさわしい内容となっており、最終巻ではどんなラストを迎えるのか、楽しみです。
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レーエンデの自由のために翻弄し、解放の英雄となる「レオナルド」
御子のためにレーエンデ人を痛めつけ、悪女となる「ルクレツィア」
破滅の未来を避けるため、別々の道を選んだ2人。レーエンデだけに収まらず、世界中へと、影響を広げることになります。
ユリアの残した革命の種火。
テッサが起こした革命の業火。
リーアンが紡いだ革命の灯火。
革命の火はレオナルドが繋いだ。
引き継ぐのは、飛び交う銃弾の中、自由を求めて駆け抜ける若者たち。
「レーエンデに自由を」
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夜明け前がもっとも暗い。
最終巻となる5部への期待が高まる深い内容となっています。
開放的な自由を願いつつも、変化のない不自由に甘んじている状況は、いまの日本人をみているようで、いたたまれない気持ちになります。
絶望して腐ってもしかたないといえる生い立ちのルクレツィアが、レーエンデのために人生を捧げる。2部のルチアーノように、愛する人のために強く成長していく姿が痛ましい。
レオナルドは甘さの残る貴族のお坊っちゃん。理想主義で、熱意だけで進む。母親のサポートもあってなんとかなる。その甘さが人を惹きつけ、活力をみなぎらせ、強い組織へと変わっていく。
「お前はこのままでいいのか!」と問われているような気持ちになる物語になっている。
4巻の発売日に更新されたブログにあるように、最終巻は気長に待つ必要があります。
1巻から読みかえすのもいいですね。
6月3日には「レーエンデの歩きかた」公式ガイドブックも発刊されます。
なにかを待つ楽しみがあるのは、素敵なことです。
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講談社:2024.4.17
単行本:600ページ