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読書ノート『蛇にピアス』

 第27回すばる文学賞
 第130回芥川賞

ーーこんな本

 赤い髪に龍の刺青をいれ、ピアスとスプリットタンが特徴的な束縛気質な恋人アマ。ルイの苦しむ顔や泣いている顔を見ると欲情するサディストの彫り師シバさん。ふたりと関係をもつルイは、痛みに快楽を感じる。
 蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅了されたルイは、身体改造にはまっていく。舌にピアスを打ち、背中には龍と麒麟の入れ墨を入れるけれど、改造が進むにつれ熱意は下がり、どうしてこんなことをしているのかわからなくなる。
 暴力とセックス、酒に溺れ、拒食症になる。それなのにアマが帰って来ない。生きる気力を失ったまま、シバさんの世話になっているとアマが遺体で発見される。
 

ーー当時の流行り?

 2004年に書籍化された作品になっており、もう20年も前になります。同年代の私には、懐かしい感覚を思いだす作品になっていて、高校生の多感な時代の価値観だ! ってなりました。
 流行っていたのかな。耳にピアスをあけるのなんて普通だったし、拡張して耳に大きな穴が空いているのも当たり前だった。痛いのに、意味もないのに、どうしてそんなことやっていたのか、よくわからないけれど、なんかカッコよかった。
 

ーー学び

 小説を読むときは時代背景も併せて読まないとダメだな、と思いましたね。20代の作家の本を読みにくいなと感じることがあるのは、もう時代に追いつけていないのと、情報を積極的に得ていない壮年の自分の老いを、まざまざと突きつけられているみたいな感覚になる。
 かといって読みやすい小説や、わかる本ばかり読んどいてもしかたないなと感じます。でも、いいこともあるんですよ。若いころの感覚を思い出させてくれる本があると、意欲と活力が湧いてくる。これはこれで大切なんです。
 


集英社:2006.6.28
文庫本:128ページ

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