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ファミコン探偵倶楽部 笑み男 の感想(ネタバレあり)

8/29に発売された「ファミコン探偵倶楽部 笑み男」をクリアした。

7月に突然「笑み男」の短い映像が公開され、任天堂は何を仕掛けるのかと思っていたら、まさかのファミ探新作。謎の映像のときはあまり興味が無かったが、ファミ探と分かると一気に変化、発売が待ち遠しくなった。(と言っても待ったのは1ヶ月ほどだが…)
実際にプレイし始めると期待通り面白すぎて、なんとたった2日で全てクリアしてしまった。プレイ時間にすると12〜13時間ほど。普通にのんびり遊んでいれば4日〜1週間ぐらいはかかるボリュームかと思うが、自分は夢中で進めてしまった。このハマりようは久しぶりだった。

さて、本作は全て終わってしまえば特にやることは無い。
他のゲームであれば「あー、面白かった」で終わったり、やり残したことやクリア後の要素をゆっくりと楽しむのだけど、本作はそういうものは無い。強いて言えば「あの選択肢でわざと間違ったらどんな反応だったのかな?」ぐらいなもの。そうったものは無くはないが、今のところ面倒なのでやるつもりはない。

なので「クリアしたし、また別の娯楽に…」となるものだけど、どうもお話についていろいろと考えてしまう。Xで後日書くために感想をメモ書きしていたが、内容がどんどん膨らんでいってしまう。クリアした日なんかは寝ようと思っても「あれはこうで、こっちはああで…」と考えてなかなか眠れなかった。

そんなわけで、本作のお話を中心とした感想記事をnoteに書くことした。


■お話のテーマ
ゲームをクリアしていろいろ考えているうちに、本作は家庭環境と教育がテーマかと思った。作り手からすれば違うのだろうけど、自分はそう感じ取った。

まず都築実について。

・家を出ていった母
・自分と妹(笑実子)に暴力を振るう父
・(父にリュックを川に捨てられたことが引き金となった)妹の死

特に妹の死が大きなきっかけだが、29年前のいろんな出来事を経て歪んでしまった都築が、18年前に殺人事件を起こしていく。
ミノル編で入雲村のおばさんが話していた「あのときこうしていれば…」の後悔のように、「もしも…」と考えてしまう箇所がたくさんあるが、根本的には都築の父が暴力を振るわなければ何も起こらなかった話。それ以降は悲しみの連鎖となっている。
しかし、ミノル編で空木も言っていたように、都築に同情して許すわけにはいかない。罪は罪。

こういった小さいころの体験が人を歪ませ、狂わせてしまうというのは現実にもある。実際、凶悪犯罪などの犯人の過去は育った環境が影響を与えていることが多い。
本作は脚本の方(後述するインタビューで話されてるお二人)がそういった事件を見聞きしてきたことも影響しているのではないかと思う。

次に、教師の福山について。

彼は非常に教育熱心で極端な性格をしている。あゆみとの会話などでも「中学生は多感な時期だ」「子どもたちを守ってやらないといけない」という話がたくさん出てくる。
正直なところ、こういう熱血すぎる人間は危うさもあると思うのだが、本作においては何も悪いことは起こしていない。ただ、福山が森本に好かれてしまったことをきっかけとして、最終的に佐々木の自殺が起こってしまう。間接的ではあるが、福山は自殺の原因に含まれるとも考えられる。それについて福山自身「もっと正しく指導していれば…」と責任を感じて後悔する。

現実においても、間接的に「自分の影響があったかも…」と考えてしまうのは事件の関係者や周囲の人にありがちなことなのではと想像する。例えば、いじめられてるのを見て見ぬふりをしてしまったり、アドバイスしたつもりが自殺や殺人のトリガーになってしまったり、など。

そしてこの2人には共通する部分があるように感じた。的外れな意見や考えになるかもしれないが、そう感じてしまったので一応記す。

都築も福山も、「何かしてあげたい」という気持ちがある、という点では同じなのかもしれない。都築は悲しんでる者たちを笑わせようとしたり、誠が自分と同じであると感じたことから何年も世話をしてあげていた。福山は毎日生徒のために登下校や部活帰りを見守ったりと、生徒のことを考えて一般的な教師の働き以上に動き回っている。

ただ、都築は独りよがりで自分のための行動しかしていない。歪んだ精神により「誠は自分(と同じ)」と言っていたことから、真に誠のためではなく自分のために世話をしていたのだろうと思う。そして殺人が悪いことだという思考が全くないし、反省することもない。
一方で、福山は熱血とは言え行き過ぎた指導はしておらず過保護な教師にとどまってる。そして「やりすぎだったか…?」と感じるとこれまた過剰なまでに反省する。この違いは非常に大きい。

と、二人の話はこれぐらいにして、最初に書いた「作り手からすれば違うのだろう」について。

発売前日に公開された開発スタッフのインタビューにて「いつも身近にいてくれる人に対して優しくなれるといいな、と思ってる」ということをおっしゃってる。確かにそちらの方が適切かと思うし、まさしくそんな教訓を得られる作品だったと思う。

※インタビュー3ページ目の一番最後を参照


■犯人について
過去の連続殺人事件は都築実によるものだが、現在の事件は自殺なので犯人はいないことになる。しかし現場を偽装工作、証拠を隠蔽した純子が実質的な犯人と言える。

とは言え、純子が笑み男の紙袋を佐々木くんの遺体に被せていなければ笑み男のことが掘り返されることは無かったし、誠の発見と都築の死亡には繋がらなかったと考えると、純子はお手柄だったとも言えるのではないかと思う。


■全てが判明するまでの自分の推測
誰が犯人なのか最後まで確信が持てなかったが、全てが明らかになるまで自分はどう考えていたのかも書いておく。

佐々木くんの殺害犯が昔の事件にも関わっているなら、当然かなりの年齢だろうと思った。(こんなの誰でも思うやろうけど…)なのでときどき登場人物の年齢を見渡してみることがあった。
しかし同時に、年齢が若くとも都市伝説や昔の事件を知っていれば模倣することは出来るので、若い人物も犯人になり得ると考えた。

その辺りを踏まえて「こいつ怪しいな」と思うキャラはたくさんいたが、どれも早々にネタバレ…「こいつは違う」と決定づけるシーンが出てきてしまったので、個人的容疑者は目まぐるしく変わっていった。

ただ、純子だけはそうならなかったし、最後のシーンで出てきたときは「ああ、これで決まりか」と思った。まあ、その後はプレイした方ならお分かりの通り…。

すぐにバレるような思わせぶり描写が多かったのは、過去作を遊んだ人へのファンサービス的なものなのかもしれない。そういうシーンが出てきて犯人じゃないと分かるたびに、「ああ、このパターン前もあったな」と思ってた。ただ、ちょっと多かったので終盤のボケた老人のくだりなんかはうんざりした…。

ちなみに都築に関しては40代なので犯人になり得るとは思ってたが、終盤に出会う人たちからは「変なやつだが真面目で良いやつ」という話ばっかりだったので「ああ、これは違うな」と判断していた。
まさか連続殺人事件前の都築や別人(誠)の評価がごちゃ混ぜになってるとは思わなかった…。

しかし全てが終わったあと、「轟モータース夫妻は都築のことを知ったらどう思うんだろうか…」という心配が残った。そこは描写されてないのでご想像にお任せということなのだろう。まあ、残念ながら二人は事実を受け止めるしかないとは思う。


■その他
いろいろと考えた、感じたことをバラバラに書いていく。

純子を最初に見たとき、男っぽい顔つきにも見えたので、性別を隠してるのかと思った。「こいつが男で犯人とか? 性別を隠すことでどんでん返しを用意してるんかな?」といきなりめちゃくちゃな想像をしていた。
しかし今の時代、性別を用いた仕掛けは絶対に使われないだろうと思ったので、すぐにその考えは消えた。

こういうゲームではどんどん人が死んでいくお話になりそうなもの。しかし本作では過去にたくさん死んではいるが、現在では自殺者1人のみ。そして殺人を犯した者はいない。
これは、悪者を作りたくなかったという作り手の考えが反映されているのかもしれないと思った。都築は過去に犯しているが、現在では未遂に終わってる。純子は偽装工作と隠蔽にとどまってるし、森本さんのためを思っての行動。また、蘇生を試みるなど人や警察として当然のこともしている。
まあ、連続殺人になってしまうとありきたりで面白くないからというのもありそうではある。

謎が非常に多くて「これはこういうことかな?」「あれとあれが繋がるのかな?」と推理したくなるのは良かった。しかし、途中から「これ収拾つくの…?」と思ったし、実際「笑み男編」のクリア後も謎は残った。
その部分を「ミノル編」として残った謎やスッキリしない部分が明らかになっていくのはちょっと強引というか、「結局収拾つかなかったからこうしました」ように思えてしまって、あまりスマートじゃないなと思った。
佐々木くんは自殺だったという真相についても「え、結局そうなの…?」とちょっと残念な気持ちになった。


老人ホームで介護士の許可が取れなくてゴリ押しするのも「ちょっとそれどうなの?」と思わなくもない。もうちょい上手いやり方でおばあさんと会わせられなかったのか。

神原との車中での会話は量が多すぎてしつこいように感じた。
先ほども書いた終盤のボケた老人もそうだったが、「横道にそれる遊び」のようなシーンが進行上避けられないよう配置されてるのはちょっと嫌だった。
あゆみと福山の会話もまどろっこしいことが多く、ちょっとイライラした。

純子と誠の罪はどうなるのかを考えてみた。
純子は自殺現場の改ざん、証拠物品の隠蔽。誠は過去の連続殺人犯が相手とはいえ殺人を犯してる。
純子は応急救護を行なっているし通報もしてるし情状酌量の余地はありそう。結果的に警察官を辞職してるが、そこまで重くはなさそう。
誠はあの状況だと正当防衛が認められそうなので無罪にはなりそう。

では都築の罪はどうか。
都築は18年前に4人を殺害(男性1人、少女3人)、アパートの放火を行なっている。最終的に死亡しているが、もし生きたまま捕まっていたらどうなっていたか。
まず考えたのは「時効」について。本作の年代は現実世界における1991年ごろと推測する。(推測の理由は後述する携帯電話のところで書く)
当時の時効は15年とされているので、18年前の事件だと時効が成立してしまう。つまり処罰されない。もしも時効が成立していなければ死刑は免れないかと思う。

ちなみに「時効」は2004年と2010年に変わっているらしい。
2004年改正以前→15年
2004年改正以降→25年
2010年改正以降→無し

本作では携帯電話が登場する。

現実だと誰もが1人1台なんてまだ考えられない時代…
前作同様、いたずら電話も出来ます(死刑なのだ)

過去作は原作が80年代末(1988〜1989年)に発売されたこともあり、携帯電話は普及どころかほぼ存在していないと言っていい。時代的にはショルダーホンが出ていた(1985年登場)が、あれは重いし高額でほとんど普及しなかったらしい。

今作は作中では前作から2年後、つまり当時同じく2年後ぐらいに続編が出ていたなら90年代に突入した時期のお話と想像する。
90年代前半なんてまだ誰も使っていなかっただろうと思うし確かにそうなのだけど、調べてみると「1991年に小型のものが登場」「折りたたみタイプもあった」と総務省のページに書いてあった。

なので本作で携帯電話が使われているのは不思議ではない。というか、ページの画像を見るに、これを参考にしたと思われる…。

ちなみに自分の感覚としては、90年代中ごろ〜後半に登場、2000年代に入って急速に普及したという認識。少し前に再放送されていた1997年のドラマを観たことや初期の「名探偵コナン」を思い出してみると、「課長や部長クラスのビジネスマンが持ってる道具」という印象がある。
なので空木が持ってるのは妥当なところだが、主人公やあゆみちゃんにまで貸し与えてるのは違和感しかない。よほどお金持ちで待遇が良い探偵事務所なのでは…。
また、20代前半の教師である福山が携帯を持ってるのも最先端すぎじゃないか? と。警察官が使ってるのはまだ理解出来るか?

システム的な部分の話をすると、カーソル移動の加速がスティック押し込みでしか出来ないままなのは残念だった。確か前作のアンケートでも不満点として指摘したと思うが、考慮されなかったのかな…。

画面の切り替わりや音のタイミングなんかは上手くて、驚くことこそ無かったけど、「ああ、ちゃんと驚かそうとしてるなぁ」と感じられた。


ミノル編でかなり長時間のアニメが挿入されていたのは驚いた。普段アニメのクオリティにうるさい自分だが、これに関しては出来も良くて文句は全く無かった。
ただ、アニメで都築の口を切るシーンを見せられたのは強烈で、「うわぁ、これはさすがに…」「早く終わってくれ…」と思いながら観てた。本作で怖く感じたシーンは特にないが、不快なシーンなら間違いなくここを挙げる。

■キャラ
ようやく登場人物のお話。

ショートで青メガネ!
上目…横目遣い?

序盤でメガネっ子婦警さんが出てきたのは強烈だった。「え、何この人…!?」と、いきなり主要人物や事件のことを押しのけてガツーンときた。
しかも前作にもいたキャラでさらに驚き。ああ、「ゴージャス」、ありましたねえ。
最終的にも一番好きだったキャラはこの人かなぁと思う。

こちらこそありがとう……

あゆみちゃんも途中から何度かメガネをかけてたのは良かった。過去作でもかけてるシーンがあったような気もするが、もうはっきり覚えてない。

メガネの女性は18年前の事件の被害者や似顔絵の警察官もいたけど、ほとんど映らなかったり好みじゃなかったりするので割愛。
ほんと、なぜかメガネキャラが多い作品だった…。

しかし振り返ってみれば、最終的にはほとんどのキャラが良い人だったように思う。主要人物も脇役も、ほとんどが出来た人間で、「こいつだけはマジで嫌い」となるキャラはいなかった…はず。

キャラクターがライブ2D(?)でけっこう動くようになっていたのは良かった。前作も少しは動いていたと思うが、本作は格段にパワーアップしている。
近年のソシャゲでこういったものがどの程度動かせるのかは大体把握してるけど、本作はそれら以上に動いてるように見えて、ここまで表現出来るのかと感心した。

■音楽
まずタイトル画面で流れるメインテーマがファミ探らしい曲で素晴らしかった。
そして主人公とあゆみで聞き込みの曲が違っていて、それぞれ「消えた後継者」「うしろに立つ少女」の調査の曲に寄せたものになってるのも良かった。
具体的には、それぞれドラムのパターンが同じ…でいいのかな? テンポは少し速くなったり遅くなったり調整されているが、同じかと思う。

個人的には「聞き込み:あゆみ」が一番好きだった。クリア後すぐにコレクターズエディション付属のサントラCDを取り込んだが、この曲の再生数はダントツで伸びていった。元々「うしろに立つ少女」の「調査」が好きだったので、そのテイストが感じられるこの曲を気に入るのは自然なことだったのかもしれない。


■終わりに
久しぶりのファミコン探偵倶楽部、久しぶりに長時間夢中で遊んだゲーム、ということで満足度もかなり高いものとなった。そして最初にも言ったように、こんな長文の感想を書くほどになってしまった。

お話は暗くて辛いものではあったが、同時に、都築の過去を教訓としていろいろ考えさせられたのは良かったと思う。こういうのはいつの時代も変わらない普遍的な問題なので、いろんな人にプレイしてもらいたいと思う。

また、さっそく次回作にも期待している。せっかくシリーズが復活出来たのだから、ここで終わらせずに継続させて欲しいところ。

まだまだ語り切れてないし、この記事を大体書き終えたところで他の人の感想を読んでみると全然違う意見に驚いたり、「あーー、なるほどなぁ…」と感心することもあったが、それはさておき、自分の感想はこの辺りにしておく。

最後にイチャイチャシーン貼って終わりとする

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