趣味が仕事に!?Marching Schoolトークイベントvol.5「究極の副業サラリーマン」【後編】
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新しい事業を作る工程が楽しい
(画像引用:燕珈琲・WEBショップ)
丸毛:副業って、自分がやりたいから始めていくじゃないですか。でも、岸本さんはそれをどんどん周りの人に渡していっていますよね。つまり「やっているけど、やっていない」みたいな状態になってきていると感じたんですが、岸本さん的には「どのへんが面白かったのか」とか、そういう感覚的な部分をお聞きしても良いですか?
岸本:はい。「燕珈琲」としてスタッフさんを雇ったんですけども、それって僕じゃなくてもできるし、なんなら僕より上手な人がたくさんいるし。単純に「渡したほうが楽」というがあるかな。そこをパスしていくことで、こっちも時間が空くじゃないですか。そうすると次のことができるし、という感覚です。
ゲストハウスに関しても同じ感覚で、僕がしなくてもその人がやってくれたら、僕は体が空くし、別のこともできるし、というだけですね。もちろんバイト代も発生するんですが、それで雇用も生まれると思うので、「自分がコーヒーを淹れたい」というよりかは、コーヒーショップやゲストハウスのような新しい事業を作る工程が楽しいのかもしれません。
でも、イベント出店もライブ感があって、初見の方とやりとりするのが面白かったりするんですよね。
やっぱり「システムをつくる」のが好き
(画像引用:燕珈琲・公式サイト)
Q.現段階で「これだけは人に任せたくない」というものはありますか?
岸本:なんだろうな……無いかもしれないです。チョコレート作りも誰かにお願いしたくて、実はコーヒーの焙煎も任せたいぐらいなんですよね。本気でやってくれる方がおられるなら任せたいと思っていて、最終的には「燕珈琲」というブランドをまるっと売りたい、とも考えています。
Q.もしも今のお仕事を全部他の人に任せられるようになったら、次は何に挑戦してみたいですか?
岸本:最近登山にハマっているので、ずっと山に登っているかもしれないです。趣味というか「山を登り始めるのも何かの事業にならないかな」みたいに、次のマネタイズを考えながら登山をすると思います。「不労所得へのモチベーション」というより「そういうことじゃないとやっぱり面白くないかな」と思っていて、別に大金持ちにならなくても毎月食べる分と遊ぶ分の収入がずっと定期的に入ってくるなら良い、という考えなので、そういう意味でも任せるし、バイト代が賄えるようなシステムづくりができたら良いかなと思います。
システムを作ってしまえば、時間だけじゃなく自分の身も自由になるような気がしているんです。なので、将来的には「毎月自動的にお金が入ってくるシステムをつくる」というのが目指すところかな、と思います。具体的には、ゲストハウスやコーヒーショップの売り上げがそれにあたるのかな。
Q.本業と副業それぞれの対人関係について、切り分けや考え方を教えていただきたいです。
岸本:そうですね。同じ人付き合いでも、「お客様」と「仲間」では意味合いが少し違うと思っていて、僕の中で「人と会わない」というのは「会社の仲間」という部分で、同僚や上司と常に合わなくていいところが利点だと考えています。なので「お客様」と会うのは全然苦ではないですね。
Q.これだけ行動力のある方なので、いろいろやりたいことがあったと思うんですが、コーヒーショップをやる前にはどういうことをされていたんでしょうか。
岸本:10年以上前になりますが、サッカーが好きだったので社会人チームに入ったり、フットサルのチームにも入っていました。当時、用瀬には野球チームしかなくて、ちょうど子どもが小学生になるタイミングでもあったので、選択肢を増やしたいと思って、サッカーチームを立ち上げてコーチをしていたこともあります。あとは、ラジコンが好きなので河原のコースでやっているレースに毎週のように出たり、音楽が好きなので楽器を弾いたりもしていました。
「やれること」と「生活」を繋げる
岸本:なので、今でも「趣味で何かをしよう」というのはずっと模索しています。1個好きになったらそれを極めるというか、本気で遊びます。複数を同時進行するのではなくひとつに絞って、納得してキリが良ければそこで終わるし、ゴールが見えたら次のことを手がける、というような感じです。
サッカーやラジコンをやっていた時は、ちょうど子どもが小さい時期だったので「一緒に遊べるコンテンツだからやっていた」というのもあります。「自分のやれること」と「生活」を繋げて、その中で「やれることをやる」という感じですね。
最近ハマってる登山も、遠くに行くわけじゃなくて、目の前に「用瀬アルプス」という絶好の場所があるので、自宅から徒歩で行って、山を6kmぐらい歩いて帰ってくる、みたいな。「健康にもつながるし、いいじゃんコレ」と思って始めました。
用瀬アルプスは、地域の方が長年一人で整備されていたコースのことなんですが、歩いてみたらたしかに景色もいいんですよ。新聞などでも取り上げられるようになって、最近脚光を浴び始めているので、これをきっかけに用瀬のいろんな魅力を掘り起こして発信できたら、また次の取り組みが生まれるのかな、と思っています。
「登山×カフェ」の実践も!(画像引用:燕珈琲Facebook)
「話題性」と「エンタメ性で」どれだけ楽しませることができるか
まずは楽しもう!(画像キャプション:燕珈琲Instagram)
Q.岸本さんが人に任せる時に意識していることなどがあればお聞きしたいです。
岸本:任せるって難しいですよね。自分と同じ人って絶対にいないですから、ある程度のミスは許容して、完璧は求めないですね。あとはいくつかやってみてもらって、得意そうなことがあれば、それと任せたところを「合体させる」というか。その人の得意分野が、僕が任せた仕事の一部で活かせるなら、それだけでいいかな、ぐらいの感覚です。
任せる相手の得意分野と自分がやろうとしていることに合わせて、ある程度のクオリティが保障されるのであれば任せてしまおう、という感じなので、まずはその人の「特性」みたいなものは見ますね。
Q.実店舗におられるスタッフの方は、ある程度「特性」を見られてから雇用されたんですか?
岸本:いいえ、後からです。スタッフは二人いて、どちらも女性の方なので、僕よりも柔らかい接客ができると思ったんです。
あとは、盛り付けなどの「所作」も僕よりは確実に丁寧にできるだろう、というイメージがありました。そこから「これができるなら、次はこれをお願いしようかな」という感じで、特性を見ながら進めることができるし、もちろん僕よりも料理が得意だし、「だったらそっちで行けばいいんじゃない?」みたいな単純な発想ですね。
焙煎に関して任せるのであれば、多分何回か来てもらって、横について全部教えます。焙煎は職人仕事のようなイメージがあると思うんですが、結構簡単なんですよ。すべてデータをとっているので、その通りにやれば大体できるんです。マシンはアナログなんですけど、データ通りにやれば大きなブレもなく収まる。それに比べたら、干物や日本酒の発酵なんかのほうが圧倒的に難しいと思います。
なんでも「楽しさ」から入ってほしい
カカオニブから作るチョコキット(画像引用:燕珈琲・WEBショップ)
岸本:「新しいもの好き」というのもありますが、僕の中では「やってみないとわからない」という気持ちが強くあって、とりあえず手をつけてみて、行けそうならやりますし、ダメだったら辞めるし……という感覚です。
次は「店の前に自動販売機を置いてみようかな」と考えています。自店の商品を展開できるスタイルの自動販売機があると知って、それがめちゃくちゃおもしろそうだと思ったので、やってみたいです。
ただ、管理も自分でしないとダメだから、忙しくなるとは思うんですけど「自分の製品を売れる」というところに大きなメリットがあるので、「どうせなら管理の部分も一緒に任せてしまえばいいじゃん」って思いますね。
「話題性とエンタメ性でどれだけ楽しませることができるかな」というのは最近ずっと考えていて、中に一個だけ高級な豆を入れて「当たり付きコーヒー」を販売するとか、ピザ生地を「あとはお湯を混ぜるだけ」という粉の状態で用意しておいて「家庭用ピザセット」という形で販売する、というような「体験を一緒に売るシステム」がつくれたらいいな、と思います。
中部地区では「あかまる牛肉店」さんが「お肉の自動販売機」を始めていたり、道の駅に「琴浦星人ガチャ」が設置されていたりと、鳥取県内でも様々な販売方法が普及し始めているようです。
まずは自分が面白がる!
岸本:これは音楽をやっている時に気付いたんですが、見る側だけじゃなくてやる側も楽しんでるバンドって、演奏が下手でも基本的にライブが楽しいんですよね。
当時、僕が二十歳ぐらいの若造だった頃、七十歳ぐらいの先輩ドラマーから「君はあんまり上手じゃないけど、楽しそうにやってるからいいね」と言われたんです。たしかに「音楽」は「音を楽しむ」と書くから、楽しまないとダメだなって思って。こっちが楽しんで演奏していたら、それを聴いている人にも伝わる、というのがあって。
出店をするのも同じで、使命ではないけど「お客さんをどれだけ楽しませるか」という部分が面白いと思っていて、売上よりも「どれだけ笑わせられるか」というのは結構考えていますね。サッカーのコーチをやっている時も、相手は小学生だし「サッカーって楽しいんだ」と思ってもらえた方が次に繋がるので、勝ち負けじゃなくて「楽しいサッカー」にフォーカスして教えていました。
個人的には、鳥取には若手のプレイヤーが少ない気がするので、マーチングビルさんがされているように、もっと面白い人が出てくればいいな、と思っています。
鳥取には若手のプレイヤーが少ない?
中川:まず「若手があんまりいない」というのもあると思うんですが、動き的にはどうしても学生に着目してしまいますね。企業で働いている若手も、最初の何年間は時間があるけど、どういうことをすればいいのか相談したり、思いついたことを賛同してもらえるような仲間の輪がない(共有できるコミュニティがない)みたいなところがあるな、と思って、このマーチングスクールという企画をおこなっています。
社会人の若手は子育て世代でもあるので、家庭の事情などもあり「プレイヤーを続けていくのが難しい」という状況が一面ではあるのかな、と思っています。
斉藤:岸本さんは「楽しい」ということを重視されていますが、世間的な風潮で「楽しむことは悪いこと」という雰囲気が、若手の中にもあるような気がしています。
自分だけ楽しみを追求していると反感を買うというか、「僕は楽しみのために生きています」と言うと「僕らは我慢しているのに」みたいな、そういうマインドになるじゃないですか。だから今日お話を聞いていて、岸本さんのような人はすごく新鮮だと思いました。
岸本:ああいう空気って、どうやったら壊せるんでしょうね。もしかしたら、先に行く人が背中を見せたりするのが一番手っ取り早いのかもしれません。言葉で言ってもわからないですから「今まさに、やっている人たちが楽しむ」というのがひとつの手段というか、「次に繋がる何か」なんだと思います。
若手側の意見は……
参加者①:自分の中では、30歳以上は次の世代にパスしていく年代だという感覚があります。周囲では、この1,2年で、20代でカフェを始めたりするような人が少しずつ増えてきたな、という印象がありますが、その一方で、自分と同じように20代30代で会社を経営して組織を作って……という人は少ないので、そういう経営者目線で会話できるような方が増えたら嬉しいですね。
参加者②:僕の場合は周りのサポートが大きくて、いろんな人から助けてもらいながらやってきたというところもあるので、「楽しむことは悪いこと」というような空気はあまり感じていなかったです。直接「何してんねん」みたいなことを言われることはありませんでしたが、遠くのところで「何か言われているな」というのはあって、でもそれは悪目立ちしたからだろうな、と思ったりするので、そこまで気にしていませんでした。
鳥取県は関係人口が多い
<チャットより>
鳥取県は、取り組みとして「行政」「金融機関」「NPO」で良いタッグを組めているのではないかと思うので、関係人口が増えている印象があります。
中川:どこの取り組みについて印象を持たれているのか気になるところではありますが、現状、県の施策では比較的「関係人口増やそう」という趣旨のものが多く、鳥取は面積も小さく人口も少ないので「動く人同士がつながりやすい」というのはありますね。「地域おこし協力隊」の方々みたいに、県外から入ってきた方が「何か新しい動きを起こす」だとか「そういう人たちを応援しよう」という地域の方々が一定数いたりする流れはあるのかな、と思います。
りょうかん:熱海の事例で言うと、現在の熱海はあまり関係人口を推してる感じではないんですが、昔から別荘を持つような「二拠点生活」をされている方が多かったので、そもそも関係人口で成り立ってる町なんじゃないかと思っています。
最近だと、都内で働いている2,30代ぐらいの友達が、熱海の企業に「副業人材」として採用される事例がすごく増えていて、外部から若手の血が入ってくることで、それに触発された熱海出身の人が戻ってきて、いろんな活動を始めたりしています。
個人的にはそういう「働くベース」で県外の方と関わりが増えてくるといいなと思って、今日は鳥取県外からここに参加しています。
今後の展望
岸本:55歳ぐらいでセミリタイアを目標としていますが、遅くとも60歳くらいまでにはしたいですね。そこから120歳ぐらいまで生きる予定なので、60年は遊んで暮らしたいです。無理かな?(笑)
中川:これまでの定年制と違って、今は「人生100年時代」と言われていますが、それでも残り40年ありますからね。誰しもがそれなりに、いろんな収入の方法をうまく作っていかないと……という感じですね。
岸本:鳥取は畑も田んぼもあるから、最低限のお金さえ有れば生活していけるかなと思います。結局「一次産業」が一番強いですからね。「魚の養殖」なんかも、稚魚から干物になるまでの過程を観察することで、「プロセスエコノミー」という形で打ち出すことが出来ると思うので、次に来るシステムなんじゃないかと思っています。
感想共有
「人に事業を任せて、さらに事業を増やしていく」というところにとても共感しました。僕もセミリタイアを目指して頑張ります。
岸本さんが新しいことにどんどん挑戦していく姿を見聞きしていると、個人的にすごく刺激になるので、僕も色々やっていきたいなと思いました。今日みたいに県外からでもオンラインで繋がれる場所があれば、今後も参加していきたいと思っています。
岸本さんのお話を聞いて、今いろいろとやりたいことがあるので、とにかくやってみようと思います。まだ自分も若手みたいなので頑張ります。
「おもしろがる」とか「楽しいことを重要視する」という部分で、私もそっちだ!と思って嬉しかったです。私はバイキングが好きなので「全部いっぱい食べたい」みたいなところで、すごくわかるなって思いました。
僕は「楽しみを追求する」だとか「自分の楽しいって何だろう」というところからつまずいてしまうんですが、一つ一つ突き詰めて、形にして、「周囲の人に渡していく」ということに圧倒されたというか、非常に刺激的でした。
参加条件の対象外でしたが、参加させてもらいました。個人的には「若手は年齢でなく気持ち」だと思っています。ありがとうございました。
中川:「みんなが楽しく生き抜く何かを見つけていける」というのは面白いことだと思ったので、(それを)こういう場を使って一緒に考えていけたら、僕は僕で楽しいんだろうな、と思いました。事例がいくつも出てくると、多分子供達にいろんな大人がいることを見せる機会も必然的に増えると思うので、そういうことは続けていけたら良いな、と思いました。
斉藤:個人的には「楽しみを追求する」ということに苦手意識を持っていて、岸本さんがすごく羨ましいです。趣味を含めて、楽しいことに次々トライしていくところが羨ましいな、と思いましたし、世代感というか、幼少期から「楽しむこと」を心の底から楽しめないみたいな感じを受けてきているんですが、それを「なるべく楽しそうにしよう」と意識はしながら、本当に心の底から楽しんで次々トライしていく人生が非常に良いな、と思ったので、もっと自分自身を見つめ直して「素直に生きたいな」と思えるきっかけになりました。
丸毛:最近見た動画で、ちょうど「好きを仕事にする」というテーマの配信がありまして、その中で印象的だったのが「大きな理想より小さなモチベーションを大事にする」という部分でした。また、「好きな事は1個に絞らず、たくさんあって良い」「モチベーションを多く持つことで維持することができる」という話もあって、岸本さんはそれを体現してるな、と思いました。今日はありがとうございました。
岸本:今日は貴重なお時間いただきましてありがとうございました。僕もこういう場所で話すのは初めてだし、何を話せば良いかわからなかったんですが、「楽しむ」ところがひとつのキーワードになったのかな、と思います。
僕も昔はそんなに楽しめるタイプじゃなかったんですけど、結局人間は死んだら土になるだけだし、お金もあの世に持っていけないし、ということが腑に落ちた時に「だったらもう死ぬまでに楽しんだもの勝ちだな」と切り替わったタイミングがあったんです。
多分、いろんなことをどんどんやり始めたきっかけはそこからで、小さなモチベーションをもちろん大事なんですが、それに輪をかけて大きなビジョンがあると、そこで多分「一気に行くんじゃないかな」という気はしています。
楽しみながら目の前のワクワクをちょっとずつ拾っていくと、次の何かに繋がったりとか、鳥取版ファイアになれば良いんじゃないかと思います。
改めて、今日は貴重なお時間頂きありがとうございました。
まとめ
「面白い!」と思ったら、どんどん基盤を作っていく岸本さん。すでに次の計画も進行しているそうで、「岸本さんの年表がほしい!」という声もあがるなど、興味関心の幅広さや、フットワークの軽さに驚愕しっぱなしの2時間でした。
最後はみんなで「はい、チーズ!」
参考URL
自家焙煎 燕珈琲|珈琲豆とクラフトチョコレート
https://www.tsubameroaster.jp/
クラフトチョコレート製造体験会 - Airbnb
https://www.airbnb.jp/experiences/2322898?_set_bev_on_new_domain=1637283253_YWM0ODA2ZDRhZmM1
中尾さんInstagram
https://www.instagram.com/chiffonese_h/
あかまる牛肉店
https://akamaru-shop.com/
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