トマス・S・クーン(イアン・ハッキング序説)『科学革命の構造』青木薫訳 みすず書房
パラダイムとか通約不可能性とかよく使われる割に概ね間違われる(というか科学じゃないところに使われる)可哀想なクーン。
とか言いながら、読みながら再認識したのは、ぼくも主に文学に敷衍して、「通常文学」の最先端でパラダイムシフトするような作品が読みたい、と思っているのだなということでした。
そもそも「通常文学」ってなんだ?ということで、ぼくは何十年にもわたって、あちこちでずっとこんなことを言い続けている。
セシリア・ワトソン『セミコロン』の感想
マキューアン『愛の続き』の感想
ペレック『傭兵隊長』の感想
奥泉光『葦と百合』
その他、「瓦解」で検索しただけで、ツイッターで同じようなことを何度も呟いていた。
つまり、手持ちの文学言語では足りないという意思で最初から緻密さを捨てるような奔放な実験的作品ではなく、手持ちの言葉(理論、装置、パラダイム、…)を、誤差を許さないような緻密さで徹底的に突き詰めて、あげくアノマリー(説明できない、表現できない、異常さ)が現れ、その「パラダイム」が瓦解して、だからこそもしかしたら何か別のものが現れるかも知れない、という期待が残る作品が読みたいのです。