「虎に翼」第10週「女の知恵は鼻の先?」

今回のサブタイの意味は、
「女性は、目の前のことだけにとらわれており、多い先を見通す思慮に欠けている」ということ。
また偏見の塊みたいなことわざ…。


1.癖つよメンツ


民法改正に携わることになった寅子。
同僚となるのは、「発芽玄米」のような髪型の(笑)小橋と、桂場の友人である久藤頼安。
この久藤さん、自分の名前「頼安」を音読みすると「ライアン」となることから自分のことを「ライアン」と呼ばせて、周りの人にも英語名をつけるアメリカかぶれ。

寅子は「佐田」という名字から「サディー」と呼ばれることになりました。ちなみに小橋は「ハーシー」。寅子が「ハーシー」と呼ぼうとすると、「小橋でいい」とむすっと言い返した場面がちょっとかわいかった。

2.どこかで聞いたような話

民法改正に伴い、戸主・家長の制度は廃止する方向に進んでいましたが、強敵が現れます。
それは桂場の恩師でもある神保教授

登場して開口一番、
「敗戦で乱れたこの国から、家族同士助け合うという古き良き美徳が消えたらどうなる?この国を滅ぼすつもりかね?」
とゴリゴリの保守発言。
あれ?それ最近も話題になってませんでしたっけ。
夫婦別姓とか同性婚とか。
80年近く経つのに、本質は変わっていませんね。

その話を聞いた女性代議士のみなさんが
「古き良き、と言っても明治になってからじゃない」
と言い放つのがまことに良い。
そうなんですよね。江戸時代も男女不平等ではありましたが、大奥の存在があったので女性に全く発言権・政治的権力がなかったかと言われればそれは違います。

江戸幕府が終わり大奥が解体された時、
「女性の権力が消えた。痛快極まりない」
というけしからんぶっちゃけた発言をした人がいるとかいないとか。

・明治の世に確立された家長制度
・良妻賢母教育
・夫婦の苗字の統一(婿養子以外は夫の姓に)
で、女性は太陽から月となってしまったわけです。

苗字の統一という点を補足すると、まず江戸時代までは、人口の大半を占める農民たちに苗字はありませんでした。ですので農民には「改姓」という概念がありません。
また、苗字を持つ武家の女性は結婚しても実家の苗字を名乗っていたとか(諸説あり)。

さらに遡り、鎌倉時代や平安時代までいくと分かりやすいでしょうか。
「北条政子」とは言っても「源政子」とは呼びませんよね。
また、大河ドラマ「光る君へ」に出てくる藤原道長の妻、源倫子と源明子の2人とも、結婚しても「源」のまま。
藤原道隆の妻・高階貴子も「高階」のままです。

つまり夫婦同姓はそこまで歴史が長いものではない。
他にも、私たちが「伝統」と思っているものが実は明治以降に生まれたもの、という例は少なからず存在します。


かなり突っ込んだ話になりますが、皇位継承を男系の「男子」に限定したのも明治からです。
これは日本史上に10代8方の女性天皇(推古天皇に始まり、後桜町天皇まで)がいることからも明らかですね。

ただ、「女性」天皇は存在しても「女系」天皇(母方が天皇の血筋を引く場合)の例はありません。
女性天皇は「男子が育つまでの中継ぎ」のような面もあったので結婚が許されていなかったのです。

これがなかなか難しいところです。
浅学を晒すのもアレですので、これくらいに。

3.寅子復活

結婚・子どもの誕生によって一度弁護士から撤退した寅子。
しばらく家庭にいたからか、「はて?」も封印中。
先ほど述べた神保教授にも強く反論できません。
さらに恩師である穂高からも、
「私が法の道へと導いたせいで不幸にしてしまった」と的外れな謝罪をされ、別の仕事を紹介されます。

「私が不幸?はて?」
「はて?」復活のゴングがなりました。
「確かに仕事をしているのは、家族を養うためでもある。でも私は、好きでここにいます」
と言い放つ寅子。
まさに、
「人が宣う地獄の先にこそ私は春を見る」
寅子は覚醒しました。

民法改正の議論で、手を挙げて発言の許しを得ます。
「確かに、私は家族制度や美徳のようなものに守られていたのでしょう」
と、神保教授の意見も一理あるとしながらも、

「しかし、あけすけに申せば、無能力者として守られても『大きなお世話』と申しましょうか」
言ってやった…!!
こうして、ライアンたちの意見が通ったのでした。
このドラマ、家にテレビがある人はみんな見てほしい。

損はしません。食わず嫌い(見ず嫌い)するのはもったいなさすぎる。
フェミニズムだけじゃない、人間の在り方、家族の在り方、色々な要素があって毎週考えさせられます。

4.花岡さん、嘘でしょう…

時系列が前後しますが、寅子の前に懐かしい人が現れます。
かつて寅子に思いを寄せていた同級生の花岡悟でした。
花岡は東京に戻り、裁判官として食糧管理法に関連する事件を扱っていました。

闇市で手に入れた食料を口にするのをためらっている様子で、弁当箱の中身も麦でかさ増ししたくずれ米のおにぎりのようなものとさつまいも一欠片だけ。
おそらくまだ30代だろうに白髪もまじり、やつれています。

かつて梅子がかけてくれた言葉、「本当の自分と思えるものがあるのなら、それを大切にしなさい」というのが心に残っているようでした。
しかし、闇市で手に入れた米を口にする寅子を咎めることは決してしない。

しかし、かつての上司であった桂場に、「人としての正しさと司法としての正しさが、ここまで乖離するとは」と葛藤もこぼします。
すでにこの辺りで筆者は不穏な香りを嗅ぎ取っていました。

彼は「自分も闇市で食料を手に入れながら、闇市を使う人を裁く」というのが許せなかったのではないでしょうか。

ある日、寅子が事務所に戻ると皆が沈痛な面持ちをしており、部屋の電気も消えています。
何かあったのか?と訊く寅子に、小橋が答えます。
「花岡が死んだ」

これで「つづく」って人の心…。
予告も見ました。
やはり花岡は、食糧管理法で人を裁く者として、闇市の食料を一切口にせず餓死してしまったのでした。
ある意味、法に殉じたともいえます。

そして予告に復員したの姿も。
轟が生きていたことはとっっっても喜ばしいのですが、うん…おそらく予告で手にしていた新聞は花岡の訃報を知らせるものだったのでしょう。
これで土日待たせるって…待ちきれないってばよ。








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