【同性愛】 「失礼ですが、結婚されていますか?」
この前、かかってきた一本の電話。知らない番号。
仕事の電話かも知れないと、思わず出てしまった。すると「失礼ですが、いま結婚されていますか?」という電話越しに男性の声。
お見合いの場を提供している企業からのセールス電話だった。
ハッキリと断って電話を切ってから、思わず苦笑する私。
「いまの日本では結婚できないんですよね、そんな私でも結婚できますか?」そう言ってみたらどうなったのだろう、なんて考える。あなたが当然だと思っている選択肢を辿れない人が、この時代になっても日本にはまだ沢山いる。
マスクと似ているなぁ、 なんて
最近こんなことをふと思った。マスクの着用義務にどこか似ている、なんて。
新型コロナ禍になってから半ば強制的に着用しなければならなくなったマスク。会社でもアルバイトでも学校でも買い物でもランニングですらも。みんな窮屈だなと感じながらも、人のため自分のために着用していた。もちろん、それは重要なこと。でも、時間が経って少しずつ状況も変化してきて、政府からの「マスクの着用」に関して声明が変わった。
政府から発表されたこの声明キッカケに、さらには「5類」への移行日を境に、街でマスクを着用している人がグッと減ったように感じる。
なるほど、やっぱり政府からの声明にはこんなにも効力があるのだと考える。
かくなる私も、マスクの肌荒れでずっと悩まされていたため、特別な場合を除いては屋内外でマスクを着けなくなった。「マスクを着用してください」などの看板や放送は公共交通機関から消え去り、飲食店や公共機関の受付などからはアクリルパネルが一斉に撤収されていた。
アクリルパネル越しに、さらには口元の見えないマスクではオーダーが通らないことも多く、表情も窺い知れないコミュニケーションは無機質だった。スーパーのレジの人も、天井から垂れ下がった簡易のビニール板越しに商品を渡すのに一苦労といった様子で、大変そうだった。
それが「5類」への移行日をキッカケに、少し自由が効くようになった。みんなそれぞれに色んな事情があってマスクを外す人、色んな事情があってマスクを引き続き着ける人、色んな事情で着けなければならない人、色んな事情で着けられない人。色んな人がいたけれど、政府からの発表を境に、少しだけ自由に選べるようになって随分と息がしやすくなった。
そんなしがらみの息苦しさから解放されて、息がしやすく、店に入ればコーヒーの香りがする。そんな当たり前の日常を目の当たりにして、今まではそれらが制限されていたのだと改めて気がつく。今までは我慢しなければならなかった。でも、いまは少しだけ自由になった。
そんな変化を目の当たりにしながら、法律でもしも同性婚が認められたら、こんなふうに自然と多くの人々の共通認識がもっと変わるんだろうなと、ふと思った。政府が認めている、法律で認められている、法的効力がある。ちゃんと「関係」が認められたら、なんて。
残念ながら、いまはまだ、それら全てが無いけれど。
新型コロナ禍、屋外ではマスクを外して良いのか、それとも。公共の場や職場であれば、さらに配慮して気遣いながら恐る恐る様子を伺いながら周囲に合わせる。店ではマスクを着用していないと注意を受けるため、はなから着用していた方が無難なときも。ほとんどの人がマスクをしている状況で一人だけマスクをしていないと、そういった主張をしている人だと決めつけられることも。マスクをつけていないことを嫌う人もいるから、その人のためにマスクを着けることも。公共交通機関では無言で睨んでくる人もいるから、その人の視線に気がついてマスクを着けることも。
まるで、日常の私みたいだ。
この人にならマスクを外して、素の自分を話してみていいだろうか、いや、やっぱり話さない方がいいか、外しかけたマスクをまた着ける。公共の場で大人の女性二人が腕を組んで歩いていたら、鋭い視線を受けることも。そんな視線のために、こちらが包み隠さなければならないのか。そんなことはないはずだ。結婚がしたいと思っても、結婚ができない私はどうしたらいいのだろう。逆に教えて欲しい。そんな考えを抱きながら、私は歩いていた。
法律で認められるようになったら、この息苦しさも、見ず知らずの人から無言で放たれる鋭い視線を受けることもなくなるだろうか。
私は、いつまでマスクを着けなければならないのだろう。いつ外せるようになるのだろう。そんなことを考えながら、私は今日も本当の自分の一部にマスクを着け続ける。でも絶対に、いつか外せる日が必ずくるはず。そう信じている。
いつか、マスクを完全に外して青空の下で「あぁ〜、息苦しかった!! 空気が気持ちいい〜!!」って思いっきり羽を伸ばして背伸びするのが夢です。そのときは今まで雨が降り続いていた分、とびっきり綺麗な虹がかかっているはずだから。
そんな日を夢みて、私は今日も生きている。