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頑張れニッポン

 北京冬季オリンピックが開催中だ。世界中のアスリートが集結し、スポーツで技能を競い合う。1人の力なんてちっぽけだが、その1人の力が世界を感動させるなんて夢があっていい。

 世界の人口も今や80億人に達しようとしている。でも、これまでの人生で時間を共にした人たちをかき集めても1万人にも及ばないだろう。そんな中で出会える人たちは貴重だし大切にしたい。

 つい先日、ニューヨークの映像学校を卒業した俳優の卵と話をする機会を得た。映画祭を運営する身として、そんな人たちの声を聞くことは大切だ。私は専らソーシャルメディアを使って情報発信をしているが、彼らのローカルの生活やイベント情報の入手先は全部インスタグラムだという。つまり、フェイスブックやツイッターで幾ら情報を流しても、彼らに決して届くことはないのだ。

 さらに突っ込んで、日本映画が学校で、また仲間内でどう評価されているのかも聞いてみた。

 授業で取り上げられるものはハリウッド映画が主流で、日本に限っていうと黒澤明監督の名前くらいしか出てこなかったという。さらに60人ほどの生徒の中に日本人はたった1人。同級生はアニメ以外、日本映画に全く興味を示していないそうだ。

 米国だから自国の映画を主に取り上げるのは当然だが、日本映画はおろかアジア映画も学校ではほとんど取り上げられないという事実、実際に学生間でも話題にならないと話す若者の発言は実に深刻だ。人口ではアジア圏の国だけでも30億人は優に超えるというのに、映画界ではアジア人の市民権はまだ得られていないのだ。

 しかし、そんな状況の中で一矢を報いるのが韓国映画である。「パラサイト」や「MINARI」といった作品が近年アカデミーをにぎわせたおかげで、アジア映画にも少し注目が集まるようになってきたと若者は言う。その点で韓国映画の商業的成功はわれわれ日本人にとっても意味がある。そして日本映画も奮闘している。昨年から濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が世界中で高評価を得ているのだ。この流れが米国の映画界にも新風を送り込むことができるのか。期待が高まるところである。【河野 洋】

羅府新報(Vol.33,859/2022年2月15日号)『磁針』にて掲載

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